会員制通販サイト「Pantrii(パントリー)」を展開するParchie
会員制通販サイト「Pantrii(パントリー)」を展開するParchie
  • ギフトEC「TANP」出身者が立ち上げた会員制EC
  • コスメ以外のカテゴリーの拡大や物流の強化にも着手

“会員制の小売チェーン”として、日本でも高い知名度を誇る「コストコホールセール(コストコ)」。1999年に日本一号店をオープンしてから、2022年6月時点で31店舗を展開しており、会員数も2019年時点で600万人規模にまで増えていると言われている。

日本でも人気を博しているコストコと同じように、会員制という仕組みを活用し、オンラインの会員制通販サイトを展開しているのが、2019年設立のParchie(パルチエ)だ。

会員制通販サイト「Pantrii(パントリー)」
会員制通販サイト「Pantrii(パントリー)」

同社が展開する会員制通販サイト「Pantrii(パントリー)」は月額350円(税込)の会員費を支払えば、仕入れ価格のまま安く人気コスメを購入できる、というもの。2021年12月にサービスを開始以降、20代女性を中心にユーザーを増やしており、有料会員数の実数は非公表ながら、リリース後から34倍に成長しているとのこと。

Parchie代表取締役の神﨑陸氏によれば、「管理基準を通過した新品・本物だけを取り扱っている安心感に加え、使用・未使用を問わず返品・返金が可能であること、タイムセールや季節のイベントなどで“さらに安く”購入できる点が支持され、大きな広告宣伝を行わずSNSでユーザーを獲得することができている」という。

ギフトEC「TANP」出身者が立ち上げた会員制EC

会員制のECサイトは、中国でも盛り上がりを見せている領域のひとつ。会員制ECサイトの代表格として知られているのが、2017年8月にリリースされた「海豚家(Dolphin Home)」だ。海豚家は会員制を軸に、良い商品を安く購入できる価値を提供することでユーザーから支持され、2018年時点で会員数5000万人を突破、GMV(流通取引総額)は3000億円を突破。2019年にはシリーズCラウンドで100億円の資金調達を実施している。

また、同様のサービスを展開する「雲集(Yunji)」は2019年5月に米ナスダック市場に上場するなど、会員制ECサイトを展開するプレーヤーの数も増えつつある。

そうした中国での会員制ECサイトの盛り上がりを知り、神﨑氏は「日本でも同じように会員制のECサイトを展開したら面白いのではないか」と考えたという。神﨑氏はギフトEC「TANP」を展開するGraciaで働いていた経験があり、ECサービスに関する知見があったことから、日本で会員制ECサイトを展開することを決めた。

人気のコスメを安く購入できる場所としては、日本ではeBayが展開する「Qoo10」がよく知られている。Qoo10が日本でも普及していることから、会員に対して商品を卸値で販売することへの理解もあると思い、まずはコスメの展開から始めたという。

Parchie代表取締役の神﨑陸氏
Parchie代表取締役の神﨑陸氏

「コスメブランドにとっては、20代女性が多く集まるプラットフォームに商品を展開できる点が大きな魅力です。またQoo10との違いとしては、私たちはブランドから出店費用や売上手数料を取らないため、出品しやすい仕組みとなっています」(神﨑氏)

また、大多数の人に商品を安く販売してしまうとブランドイメージの毀損(きそん)につながりかねないが、あくまで“月額費を支払っている会員のみ”にすることで、ブランド側としては商品を安い価格で提供できる“言い訳”がつくれているとのこと。

サービスリリース以降、取り扱いブランド数は約400ブランドに増えたほか、商品数は約9000SKU(Stock Keeping Unit:在庫の最小管理単位)規模にまで伸びているという。

コスメ以外のカテゴリーの拡大や物流の強化にも着手

なぜ、20代女性に「会員制」というモデルが受け入れられているのか。その背景にあるのが、「特別な購買体験の提供」にあると神﨑氏は言う。

「今の時代、Amazonで欲しいものはほとんど購入できるようになり、すごく便利になった一方で購買体験自体は無機質なものになってしまったと思うんです。だからこそ、他では味わえないような特別な体験にはお金を出す、という価値観の人が増えています」(神﨑氏)

例えば、Pantriiでは人気コスメが最大90%オフで購入できる「新春セール」など季節ごとのイベントのほか、定期的にタイムセールなどを開催するなど、会員が常に楽しめるような仕掛けをつくっているという。「こういうイベントの開催が顧客の獲得にもつながっているので、今後も注力する施策のひとつとして取り組んでいきたい」と神﨑氏は語る。

現状、Pantriiはコスメしか取り扱っていないため、欲しかったコスメを何点か購入したユーザーは1カ月で解約してしまうユーザーも一定数いるとのこと。神﨑氏によれば、実数こそ明かせないものの、解約率もそれなりの数字となっているという。

今後、ユーザーの解約率を低くし、アクティブ率をより高めていくほか、女性以外のユーザーを獲得するために、コスメ以外の商品の展開も始める予定だという。そのための資金として、運営元のParchieはCyberAgent Capitalをリード投資家とし、Gazelle Capital、F Venturesおよび個人投資家から総額約1.2億円を調達した。今後はマーケティングや採用にも力を入れていくほか、カテゴリーの拡大や物流の強化にも取り組んでいくという。