EVパートナーの⾦⼦剛⼠氏(左)とZVC代表取締役社⻑ パートナーの堀新⼀郎氏(右)
EVパートナーの⾦⼦剛⼠氏(左)とZ Venture Capital代表取締役社⻑ パートナーの堀新⼀郎氏(右)

スタートアップ支援のプログラムは数あれど、本当に創業期の起業家が求めているのは「資金は出すがもの言う支援者」ではなく、今後の資金調達の選択肢を狭めない提案をする「もの言わぬ支援者」ではないか──そう考えたベンチャーキャピタル2社が、新しい試みを開始する。

Zホールディングス傘下のベンチャーキャピタル(VC)・Z Venture Capital(ZVC)と独立系VCのEast Ventures(EV)は12月20日、両社が共同で運営してきたアクセラレータープログラム「Code Republic」を刷新。新規の支援スタートアップの募集を開始する。

Code Republicはもともと2016年にスタートした、アクセラレータープログラムだ。ZVC(当時の名称はYJ Capital)とEVが、米アクセラレーターの名門・Y Combinator(YC)の日本版となるものを目指して始まったこのプログラムは、これまで39社のシード期スタートアップを採択。貿易業務向けSaaSのShippioや企業情報データベースのBaseconnectなどをはじめ、採択企業のシリーズA以降の累計調達額は約120億円になるという。

そんな実績を着実に積んでいたCode Republicだが、前後して日本でも数々のアクセラレータープログラムが立ち上がり、その差別化に苦戦。さらにプログラム担当者の退職などもあり、今春の第10期プログラムの実施以降、一時休止状態になっていた。

今回、ZVC代表取締役社⻑でパートナーの堀新⼀郎氏と、EVパートナーの⾦⼦剛⼠氏が担当するかたちでプログラムを刷新。新たに実施するに至ったという。

プログラム採択企業には、1000万円の資金のほか、オフィススペースなどが提供される。

資金提供に関しては、刷新前のCode Republicではポストバリュー(資金調達後の評価額)1億円での700万円の提供(株式7%の第三者割当増資)だったが、刷新したCode Republicでは、1000万円は有償新株予約権による投資契約となる。株式への転換価格は時期により最大30%のディスカウントがなされるが、スタートアップからすれば、プログラム参加時点でバリュエーションを決めなくていいことから、以後の資本施策の自由度が高くなる。

また、採択時点でのバリュエーションの制限がなくなるため、スタートアップはステージを問わずに応募できるようになった。そのほか、従業員向けのストックオプションプールの上限を20%に設定(通常VCは10〜15%を指定することが多い)。創業者株式については、直近のバリュエーションでの買い取りにも応じる。

「起業家にとっての摩擦係数を限りなくゼロに近づけました。恩着せがましくVCが定期報告を求めたり、メンタリングを実施するようなプログラムではなく、(ベンチャー投資の)原点に返って、起業家のためになるものを実施しようと考えています」(堀氏)

「とにかくリニューアルにあたって意識したことは、『本当の意味で起業家に寄り添う』ということです。バリュエーション(の自由度)、ストックオプションの上限、ハンズオフということをすべて起業家に寄せた。一方で起業家に寄せているとはいえ、ここから急成長する会社が出てくれば、ファイナンシャルリターンは得られると思っています」(金子氏)

メンタリングやプロダクトお披露目の場である「デモデイ」などを行っていた刷新前とは異なり、ハンズオフ──つまり放任支援をうたうプログラムになっているのも特徴だ。メンタリングやデモデイは実施せず、自由参加型の勉強会や採用イベントなどを用意する。またZVCやEVのキャピタリスト、投資先企業、ZVCの親会社であるZホールディングスへのコンタクトについては相談ベースで随時対応する予定だ。さらにプログラムへの採択タイミングも「バッチ」などと呼ばれる特定のタイミングを設定するのではなく、通年に変更する。