Nstock代表取締役CEO 宮田昇始氏
Nstock代表取締役CEO 宮田昇始氏

日本のストックオプション(SO)制度の課題は、スタートアップ人材の課題、ひいては日本の人材活用や投資活動など広く社会・経済活動全般にも関わる問題だ。法制度、慣習など、スタートアップに人が来ない、急成長スタートアップから起業する人が少ないという課題はなぜ生まれるのか。

昨年11月、日本におけるSO契約書のひな形「KIQS(キックス)」を公開したNstock代表取締役CEOの宮田昇始氏が、この課題について政府や社会への提言と、スタートアップにとっての実践的な解決法の両面から、前後編に渡って論ずる。後編となる本編では、制度上の問題の他に横たわるスタートアップの慣習や、スタートアップエコシステムを活性化するにあたってあるべき株式報酬の姿について解説する。

スタートアップに優秀な人材が来づらいわけ

──前編で説明していただいた法的な問題のほかに、スタートアップの慣習上の問題もあるということでした。

たとえば退職するとSOが失効してしまうというのは、スタートアップ側の慣習によるものです。

また、ベスティング、つまり一定期間の経過によって段階的に権利が確定する契約条件があるのですが、日本の場合はIPO後にベスティングがスタートすることが一般的です。ところが実際には、ベスティングは入社日起算で「入社から4年後までに全て権利確定する」というふうにも決められるのです。米国では入社日起算で何年間かにわたって段階的に確定する、というのが一般的です。