「Bizpa」のサイトイメージ すべての画像提供:ビズパ
「Bizpa」のサイトイメージ すべての画像提供:ビズパ
  • 約3万点のオフライン広告から自分にあった商品を発掘
  • 掲載までウェブ上で完結、電話やメールの手間もなし
  • 自らオフライン広告の課題を痛感、市場のアップデート目指す

街中の看板やデジタルサイネージから地域のフリーペーパー、施設内のポスター、さらには漫画喫茶のブースまで——。8月4日に正式版をローンチした「Bizpa(ビズパ)」は様々な場所に存在する“オフライン広告商品”をウェブ上に集約したプラットフォームだ。

細かくターゲティングができて少額からでも簡単に広告を掲載できるネット広告に比べると、オフライン広告はアナログな部分が多く改善できる余地の大きい領域と言えるだろう。

Bizpaを手がけるビズパが狙っているのは、そんなオフライン広告をアップデートすることだ。

同社では全国に散らばるオフライン広告商品を1つのサイト上に集め、広告を掲載したい企業が簡単に最適な広告商品を探せる場所を作った。

2019年11月にベータ版をローンチしてから約9カ月。Bizpa上に掲載されている広告商品は800媒体、3万点近くにまで拡大している。

約3万点のオフライン広告から自分にあった商品を発掘

「Bizpa」の広告媒体検索画面
「Bizpa」の広告媒体検索画面

自分の会社で高額な商品を扱っているため、富裕層向けに広告を出したいと思ったとする。そんな時にBizpaで「富裕層」と検索すれば、高級タワーマンションのサイネージやタクシー広告、ゴルフ関連のフリーペーパーなど関連性の高い広告が一覧で表示される。

商品は「紙媒体」「屋外広告」といったように広告の種類で絞り込んだり、広告を出したい「駅やエリア名」を軸に検索したりも可能。性別や年齢層などターゲットの属性をもとに相性の良い商品を探すことができる。

自社に合った広告商品を自力で見つけてくるのは難しいため、広告代理店などに依頼する企業も多い。その場合はスタッフのサポートを受けられるメリットがある一方で、マンパワーがかかることから「利益率の高い高価格の広告媒体や注文金額が大きい大企業」がメインのターゲットになりやすいというのが難点だ。結果として単価が安い広告商品などは埋もれてしまう可能性もある。

Bizpaではその状況を変えるべく「従来は埋もれてしまっていたものも含めて様々なオフライン広告の選択肢を集め、その中から自身のニーズにあったものを発掘できる場所」を作ろうとしているわけだ。

実際に同サービスを通じてユニークなマッチング事例が生まれている。たとえば「トラックドライバーの集客や求人を手がける会社」と「ドライバーの利用者が多いサービスエリアのシャワーブース広告」の例がそうだ。

サービスエリアのシャワーブースに広告を出したいという発想はなかなか生まれないかもしれないが、どんな人がその場所に訪れているのかがデータでわかれば、「存在を知らなかったけれど実は自分にとって魅力的な広告商品」が掘り起こされるかもしれない。

Bizpaでは地図からオフライン広告を探すこともできる
Bizpaでは地図からオフライン広告を探すこともできる

観葉植物のレンタル事業を展開する企業や、渋谷でのデビューイベントを控えていたインディーズバンドの場合でも同じような効果が生まれた。

前者は富裕層向けに訴求したいと考えポスティングを検討していたが、タワーマンションの仕様上それが難しいことが発覚。Bizpaを通じて「マンション内のサイネージ」という別の手段を見つけた。後者はイベントに合わせて渋谷のサイネージを1週間分購入。まず先にBizpaを知り、そこからサービスを使う中で最適な広告商品と出会って購入に至った。

「『自分では見つけられなかったものが見つかった』という声をいただくことは多いです。最近では地方の企業の利用も増えてきました。新しく東京で事業を展開したいと思った際に、『どのエリアにどんな人が多いのか』など東京の細かい情報がわからないことも多い。東京の代理店とも繋がりがない中で、Bizpaを使って情報を集めながらニーズに合った広告商品を探してもらえています」(ビズパ代表取締役CEO・石井俊之氏)

掲載までウェブ上で完結、電話やメールの手間もなし

正式版を公開するにあたってはマッチングの精度や商品の選びやすさをさらに向上させるべく、広告商品ごとの情報拡充を進めてきた。

個別のページでは商品の説明に加えて「性別」「年齢層」「職業」などの属性データをグラフ化して掲載。それぞれの特徴が一目でわかるようにした。商品情報はすべてウェブから確認でき、見本誌などもダウンロード可能なため、従来のように電話やメールで媒体資料を取り寄せる必要もない。

広告媒体ごとに性別や年齢層、職業などの属性データを掲載する
広告媒体ごとに性別や年齢層、職業などの属性データを掲載する (拡大画像)


商品数の多さとマッチングの仕組みがBizpaのわかりやすい特徴だが、目ぼしい商品を見つけた後の工程にも広告主の課題を解決する仕組みがある。

その1つが少額から気軽に試せること。Bizpaに掲載されている商品の約80%は10万円以下であるため、実験的にオフライン広告を試してみることもできるし、限られた予算の中でも複数パターンをテストすることもできる。

また商品の検討から見積依頼、発注、入稿までの全工程が全てBizpa上で完結するのもポイント。管理画面のメッセージツールによって各媒体とのやりとりも一元管理されているため、電話やメールのやりとりも発生せず負担も少ない。

メッセージ機能を活用した取引画面のイメージ
メッセージツールを活用した取引画面のイメージ

自らオフライン広告の課題を痛感、市場のアップデート目指す

Bizpaは石井氏が前職のラクーンホールディングス時代に感じた“オフライン広告の課題”を解決すべく立ち上げたプロダクトだ。

石井氏は2000年に同社の創業メンバーとして入社。取締役副社長として執行部門を統括したほか、B2Bマーケットプレイス「スーパーデリバリー」やB2B決済サービス「Paid」などの立ち上げにも携わった。

担当していた事業ではオフライン広告に取り組む準備を進めていたものの、自社に合った広告媒体を探す難しさや出稿に至るまでの作業の煩雑さ、代理店に頼んだ際の価格設定などがネックになり、結果的に出稿しないことを決断。その体験から「もっと簡単にオフライン広告を出稿できる環境を作れないか」と考えて、2018年12月にビズパを創業している。

広告主側の課題から生まれたサービスではあるが、媒体側にとってもBizpaを使うメリットは大きい。低単価の商品などは代理店が積極的に販売してくれないケースもあるため、結局自ら集客チャネルを開拓しなければならない。媒体にとってBizpaは相性の良い広告主との接点を作ってくれる、新しい集客チャネルになるわけだ。

2020年4月にはCoral Capitalとラクーンホールディングス代表取締役社長の小方功氏からシードラウンドで5000万円を調達し、プロダクトの磨き込みを進めてきたビズパ。今後は機能拡張も進めながら、さらに使い勝手の良いプラットフォームを目指していく。

「今後進めていきたいのは『クリエイティブ』への対応です。現時点では広告のデザインや制作のサポートはできておらず、(広告主側のユーザーに)自分たちで作ってもらっている状況です。でも中小企業など、すべての企業が自社でデザイン力を持っている訳ではありません。それを補完するような機能を整えていく計画です」

「オフライン広告と言うと『ネット広告に押されている、縮小市場だ』と思われるかもしれませんが、実は全体で約3兆円の規模がある市場です。確かにネット広告のように拡大している訳ではないものの、ここ5年ほどはずっと一定で変わらず需要があります。その一方でアナログな部分が多い世界で、最適なマッチングが起きていない状況であることは間違いありません。パワフルで根強いオフライン広告市場にインターネットの力をうまく繋げることができれば、市場を活性化できるのではないか。ビズパとしてはその一翼を担えるような企業になりたいと思っています」(石井氏)