
- すでに1000社が導入、派遣業界特化の研修サービスで拡大
- Web面接サービスはローンチ9カ月間で1100社以上が利用
- 入社前〜入社後までの「人事の問題」を解決できるサービスへ
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ここ半年ほどで「採用のオンライン化」が加速している。中でもわかりやすいのが“面接”だ。IT企業に限らず、Web面接サービスやZoomなどのビデオチャットを用いたオンライン面接を取り入れる企業が一気に増えた。
オンライン採用・教育領域で複数のサービスを展開するmanebiもこのニーズに応える形で事業を拡大させた1社だ。2019年11月から展開するWeb面接サービス「playse. web 面接(プレイス)」はリリース9カ月間で1100社以上に導入されている。
同社では今後面接だけでなく、採用から入社に至るまでのプロセスをオンライン化する上で必要なサービスを順次公開する計画。それに向けた組織体制の強化などを目的として、総額4.8億円の資金を調達した。
今回調達した資金にはグローバル・ブレインおよびSBIインベストメントを引受先とした第三者割当増資に加えて、複数の金融機関からの融資も含まれる。manebiでは昨年10月にもMTパートナーズ、谷家衛氏、小泉文明氏から資金調達を実施している。

すでに1000社が導入、派遣業界特化の研修サービスで拡大
manebiは2013年の創業。これまでオンライン教育を軸に複数の事業にチャレンジしてきた。当初はUdemyの日本版と言えるようなC2Cの教材売買サービスも手がけていたが苦戦。方向性を変えて、法人向けのeラーニングサービス「plyase.e ラーニング」を始めた。

今でこそ1000社以上に使われる研修サービスへと成長しているが、最初から上手くいったわけではない。サービス拡大の要因が「特定の業界に特化したこと」だと考えて立ち上げたのが、現在大きな収益源になっている「派遣のミカタ」だ。
派遣のミカタは派遣業界に特化したeラーニングサービスとして3000種類以上の研修コンテンツを扱うほか、派遣企業が労働局に提出する学習カリキュラム作りもサポート。厚生労働省へ報告する必要のある派遣社員の学習記録を細かく管理し、自動で報告書を作成できる機能も搭載する。
2015年9月の派遣法改正によりキャリア形成支援制度が義務化されたことに伴い、それに対応したツールとして引き合いが増加。現在は1000社以上が活用する。
実は冒頭で触れたplayse. web 面接を開発したのも、派遣のミカタの導入企業から「オンラインで面接や説明会を実施したい」という声が増えたのが1つのきっかけだ。派遣業界に特化する形では市場が限定されてしまうため、playse. シリーズの新サービスとして業界を問わない形でローンチ。コロナ禍で需要が急増したこともあり、一気に導入企業が広がった。
なおmanebi代表取締役の田島智也氏によると1100社の顧客のうち、約3分の1は派遣業界、残りの3分の2は他業界の企業だという。

Web面接サービスはローンチ9カ月間で1100社以上が利用
playse. web 面接はブラウザ上からURLにアクセスするだけでWeb面接が実施できる機能のほか、求職者が前もって録画した自己紹介動画を用いた動画選考やヒアリングシート、応募者管理など標準的な機能を網羅する。

ユーザー数1人、応募者人数100人、面接時間100時間までの範囲であれば月額1万4800円(税別)から利用が可能。それ以上の場合は人数や面接時間に応じて料金が追加される従量課金型を採っている。
Web面接サービスに関してはインタビューメーカーやHARUTAKAなど日本発のものに加えて、HireVueのような海外のプレイヤーも日本でサービスを展開している。顧客の視点では複数の選択肢が存在する中で、playse. web 面接のウリを田島氏に聞いたところ「Web面接の機能単体では大きな違いはないが、オンライン採用のバリューチェーン全体を見た時に役立つ機能が搭載されていることが特徴」だという。
一例をあげると、プレイスにはコーディングなしで会社説明会用のページを作れるCMSのような機能がある。作成したページには動画やスライドなどを簡単に挿入でき、応募用の同線としてエントリーフォームの埋め込みも可能だ。

この機能は追加料金なしで使い放題のため、エンジニア向け、ビジネス向け、新卒向け、中途向けといった形でターゲットごとに複数のページを作成する顧客が多い。こういったWeb面接に付随する機能も含めて重宝され、評価に繋がっているそうだ。
入社前〜入社後までの「人事の問題」を解決できるサービスへ

今後manebiでは面接途中や内定後、入社直後など採用にまつわる各プロセスにおいて企業と求職者双方を支援するサービスを加えていく計画。まずは9月にも「playse.エンゲージメント」と「playse.オンボーディング」の2つをローンチする予定だ。
playse.エンゲージメントは面接途中や内定後の離脱(辞退)を減らすために、双方間のコミュニケーションをサポートすることを目的としたサービス。従来は求職者の不安を解消するべく人事担当者がメールやSNS、電話などでフォローしていたところを、動画コンテンツを配信することで補う。

ある建設会社で試験導入をしたところ、現場で働く20代社員のプチドキュメンタリー動画を配信することで、若い候補者の面接辞退率が前年度に比べ50%改善された。manabiではplayse.e ラーニングで培ってきたコンテンツ作りのノウハウを活かして動画作りのサポートをするほか、「どのユーザーがどの動画を見た結果、どんな変化があったのか」をデータとして蓄積・分析する基盤を通じて、「個々にあった面接後・内定後フォロー」ができる仕組みを提供する。
もう1つのplayse.オンボーディングは入社直後の社員がいち早く職場に慣れるための支援をするサービス。社内報やEラーニングコンテンツを蓄積できるプラットフォームを含め、リモート環境でオンボーディングを成功させるためのシステムとmanabiが自社で実践してきたノウハウ、そして人的なカスタマーサポートをパッケージ化して提供するかたちだ。
「(直近ではWeb面接サービスが大きく伸びているが)Web面接のplayse.ではなく『オンライン採用のplayse.』として、採⽤⼯程に必要となる様々なツールを提供していく計画です。幸せに働けるかどうかにおいては、採用の入り口はもちろんのこと、(入社後の)初期設定も重要。playse.としては入社前から入社後に至るまで、企業と個人がお互いのことをしっかりとすり合わせられるようなプラットフォームを作ることによって、双方の幸福度が上がる仕組みの実現を目指していきます」(田島氏)