
- 5G版も後日発売
- 画面サイズの拡大が大きな進化
- カメラはAIをフル活用
- おサイフケータイやeSIMも搭載
Googleが8月20日に発売した新スマートフォン「Pixel 4a」。Google独自の技術を詰め込んだPixelシリーズの“お買い得”モデルだ。4万2900円(税込)とSIMフリースマホとしては割安な価格帯ながら、上位モデルに準じた機能を備えている。
前世代モデルのPixel 3aと比べると、同じサイズ感ながら画面の大きさが拡大している。カメラは、トレンドの多眼カメラではないものの、夜景や風景撮影機能ではフラッグシップモデルゆずりの性能を誇っている。
一方で、4G LTE版のカラーバリエーションはブラック1色のみ。3色展開だった前世代モデルのと比べても展開がしぼられている。色数を制限することでコスト削減する意図もあるだろうが、狙いは別にありそうだ。
5G版も後日発売
実は、Pixel 4aには4G LTE版だけでなく、5G対応モデルも用意される。Pixel 4a発表と同時に5G対応の「Pixel 5」「Pixel 4a」の投入も予告されているのだ。
Pixel 4aでカラーバリエーションを絞ったのは、5G対応モデルを主力として販売していきたいという狙いからだろう。Pixel 4aの5G版の価格もすでに公表されており、6万500円(税込)となっている。
画面サイズの拡大が大きな進化
4G LTE対応版のPixel 4aは、ツヤ消し調の落ち着いたブラックを採用している。電源ボタンのアイボリーがアクセントカラーになっている以外のを除けば、全体を黒色でシンプルにまとめている。
前世代モデルのPixel 3aと比べると、画面サイズは大きく拡大(5.6インチ→5.81インチ)。上位モデルのPixel 4と同じく、上下左右の画面枠を切り詰めた狭額縁デザインとなっている。

Androidの最新OSでは、「ホームボタン」や「戻るボタン」の機能をジェスチャー操作に置き換えていることから、それに適した画面デザインになったといえるだろう。
同じ4万円台で買えるiPhone SEと比較すると、画面サイズの大きさはPixel 4aの大きなアドバンテージとなっている。
カメラはAIをフル活用

Pixel 4aのメインカメラは1220万画素のシングルカメラだ。上位モデルPixel 4のデュアルカメラから望遠カメラを抜いたものだ。前世代モデルから解像度が向上し、光学手ブレ補正に対応しているが、ハードウェアとしては特に珍しいものではない。
一方で、PixelシリーズのカメラはGoogle謹製らしく、「AI」の力を存分に活用して“より良い写真”に仕上げている点に特長がある。ソフトウェアや計算アルゴリズムを作りこむことで、性能に制約があるスマホのカメラでの写りを改善している。

たとえば、ポートレート写真ではAIで被写体との距離を認識して、自然なぼかしを作り出している。昨今のスマホでは複数のカメラを活用するが、Pixelでは、単眼のカメラの右側と左側の写りの差を検出して、ボカシを適用している。
また、Pixel 4aでは7倍のデジタルズームに対応する。単なるデジタルズームではなく、AIによってディテールを「それらしい形状」で補完する超解像ズーム機能も備えている。
夜景モードは「星まで撮影できる」というのが売りだ。スマホを固定してボタンを押せば、自動で露光時間を調整して、ほとんど真っ暗な中でも撮影が可能だ。
Googleらしいアプローチを加えたことで、4万円台で買えるスマホとしては良好な写真を“作り出せる”のがPixel 4aの強みと言えるだろう。
おサイフケータイやeSIMも搭載
低価格帯のモデルとは言え、Googleが開発したスマートフォンだけに、スマホに求められる機能はひと通り網羅している。PixelシリーズではGoogleが開発した新要素がいち早く採り入れられるのも特長となっており、Pixel 4aではPixel 4と同じくAndroid 10の新機能が先行投入されている。

たとえば、音声レコーダーアプリで録音した内容を自動で文字起こしする機能を搭載している。端末上で処理されるため、通信も使わず、外部にデータが送られることもない。この機能は現在英語のみ対応だが、日本語にも今後対応予定となっている。
音声で応答する「Google アシスタント」は端末に統合され、画面下からスワイプ(指をスライドさせる動作)で素早く起動できる。

また、日本版のPixel 4aではキャッシュレス決済では日本のスタンダードになっている、Suicaを初めとしたおサイフケータイにも対応。さらに、指紋認証による画面のロック解除にも対応している。マスクを着用する機会が増えた昨今では、顔認証よりも快適に使えるだろう。

くわえて、Pixel 4aでは「eSIM」もサポートしている。これは物理的なSIMカードを挿入せずに携帯電話契約の情報を書き込む仕組みで、Pixel 4aではSIMカードスロットとは別の回線を登録して、デュアルSIMとして利用できる。日本でeSIM対応サービスを提供している携帯事業者は少ないが、IIJや楽天モバイルのサービスが利用できる。
なお、ワンセグ・フルセグ、ラジオ機能などには対応していない。防水仕様については公表されていないが、生活防水相当とみられる。水に漬けるのは避けた方が良いだろう。
チップセットはクアルコム製のSnapdragon 730Gで、メモリは6GB。フラッグシップ機は下回るが、2020年に販売されるスマートフォンとしては十分な処理能力を備えている。ストレージ(保存領域)は128GBで、microSDカードは利用できない。
写真撮影の処理では、複雑なソフトウェアが稼動しているため、写真を保存後に表示するまでの処理は多少の負荷がかかる。処理時間は1枚あたり数秒程度と長くはないもので、処理中もシャッターを切ったり他の操作をしたりできるが、Pixel 4よりは時間がかかる。逆にいえば、それ以外の用途では、負荷のかかる3Dゲームの動作も含めて、このスマホの性能で不足を感じることはないだろう。
Pixel 4aの主な弱点は、カラーバリエーションが限られていることと、防水性能が保証されていないことだ。それが気にならなければ、選ぶ価値のある1台と言える。
先述したとおり、Pixel 4aには5G対応版も用意される。2020年後半に次世代モデルPixel 5とともに発表される見込みだ。ただしPixel 4a 5G版の価格は税込6万500円と価格差が2万円近くある。5Gのエリア拡大が本格化するのは2021年になるとみられており、今から購入するなら4G LTE版を選んでも問題はないだろう。