家具のサブスクリプションサービス「subsclife」 すべての画像提供  : subsclife
家具のサブスクリプションサービス「subsclife」 すべての画像提供 : subsclife
  • 月額500円から家具を利用、ウリは定価を超えない課金モデル
  • 大手企業への導入も加速、取扱高は1年で20倍に成長
  • 自社家具のサブスクで失敗、パートナー路線に切り替え好転
  • 30億円調達で認知拡大目指す、投資家とは事業連携も

車から洋服、家電、家具に至るまで、さまざまな領域で“モノのサブスク”サービスが誕生することによって、少しずつ人々とモノの接し方が変わり始めている。

家具はその代表例と言えるだろう。日本でも複数のプレイヤーが家具のサブスク領域で事業を立ち上げ、家具の利用方法をアップデートしようと試みている。これは何もスタートアップに限った話ではない。直近では良品計画が自社で家具・インテリア用品のサブスクサービスをスタート。スタートアップと提携する形でサブスクモデルに挑戦する家具ブランドも増えてきている。

現在400以上のブランドとタッグを組み約10万点のアイテムを扱う「subsclife(サブスクライフ)」を展開するsubsclifeはこの分野を牽引する1社だ。豊富なラインナップと独自の料金モデルを強みにユーザーを増やし、実数は非公開ながら2020年8月の取扱高は昨年同月比で20倍に成長している。

そのsubsclifeはさらなる事業拡大に向けて、以下の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資を合わせて総額約30億円の資金調達を実施した。

  • YJキャピタル
  • エニグモ
  • ユナイテッド
  • KDDI
  • ダブルシャープ・パートナーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • セゾン・ベンチャーズ
  • 三菱UFJキャピタル
  • XTech Ventures(既存投資家)
  • サイバーエージェント・キャピタル(既存投資家)

月額500円から家具を利用、ウリは定価を超えない課金モデル

subsclifeは新品のデザイン家具や家電製品を必要な時に必要な分だけ利用できる月額制のサービスだ。

subsclifeでは400ブランド、10万点のインテリア商品を扱う
subsclifeでは400ブランド、10万点のインテリア商品を扱う

サブスクモデルにすることで初期費用を大幅に抑え、ユーザーの負担を軽減。人気のブランド家具を月額500円〜数千円程度の価格で気軽に使える仕組みを作った。冒頭でも触れた通りsubsclifeでは400以上のブランドと連携することで、10万種類を超える製品に対応。扱う家具はすべて新品で個人、法人を問わず利用できる。

同サービスの大きな特徴は「使い続けても商品価格(定価)を超えない独自の料金設計」であり、まさにこの部分が家具のレンタルサービスとは決定的に異なるポイントだ。

subsclifeのサブスクモデルとレンタルやリースとの違い
subsclifeのサブスクモデルとレンタルやリースとの違い

レンタルの場合は通常使い続けるほど料金が加算されるため、長期間利用すればどこかのタイミングで累計の支払額が商品価格を超える。一方でsubsclifeの場合はどれだけ使っても商品価格を超えないように設計されている。

「レンタルはレンタカーや高額カメラなど、短期間の利用にはとても向いているモデルです。ただ、家具のように長期間使うものだと商品価格を超えて却って高くなってしまう。自分たちとしては長く継続して使ってもらいたいという思いがあるので、商品価格を超えないサービス設計を選びました」(subsclife代表取締役の町野健氏)

ユーザーは3ケ月〜24ケ月の間で使用期間を自由に設定し、期間満了後は「継続」「購入」「返却」の3つの選択肢から好きなものを選ぶ。継続する場合も商品価格に達すればそれ以上は課金されないため、長期間に渡って使い続け最終的に自分のものにするユーザーも多い。

近しい仕組みとしてはリースもあるが、リースの場合は事前審査が厳しく手続きが大変な上に、金利が発生する点がネックになりやすい。subsclifeではこれらのハードルが低く、納品後のサポートや家具の回収などにも対応する。この料金モデルとサポート体制、そして豊富な製品ラインナップがユーザーからの評判を呼び、選ばれるきっかけになっているそうだ。

大手企業への導入も加速、取扱高は1年で20倍に成長

町野氏によるとこの1年で個人・法人ともにユーザー数が拡大しているが、特に法人の伸びが大きいとのこと。ここ数カ月に関しては新型コロナウイルスの影響に伴い先行きが不透明な状況に陥る企業も増える中で、リスクマネジメントやキャッシュフローを改善する目的で家具のサブスクに関心を持つ企業が増えているという。

特にオフィスの場合は、家具一式を揃えるとなると負担が大きい。以前はキャッシュフローに敏感な中小企業やスタートアップの利用が中心だったが、直近では大手企業の導入も加速。2020年3月の法人問合わせ件数は1月と比較して1.7倍に、大企業に限定するとこの数字は2.6倍にまで増加した。

直近では大企業の利用も進んでいる
直近では大企業の利用も進んでいる

「コロナの影響でオフィスのあり方も変わってくる中で、移転やレイアウト変更の際に利用いただくことが増えてきています。一括でオフィス家具を揃えるとなると、最初に数百万円規模の費用がかかってくる。その費用を減らせて、定価を超えないなら使わない理由がないと言っていただくことも多いです。法人向けには無料のコーディネート提案からメンテナンスや処分までをまるっとサポートしているので、それも含めて評価いただけています」(町野氏)

個人については結婚や引越しなどライフスタイルの転換点で利用されるケースが中心。初期費用が安い上に定価を超えないという安心感があるため、気になっていたブランド家具をまずはサブスクで試してみて、気にいったらそのまま買うという使い方をするユーザーも一定数存在する。その観点では「返却可能な分割払い」という捉え方もできるかもしれない。

ブランド家具を実際に試してみてから購入できる手段としても家具サブスクは有効だ
ブランド家具を実際に試してみてから購入できる手段としても家具サブスクは有効だ

自社家具のサブスクで失敗、パートナー路線に切り替え好転

subsclifeは2016年11月に家具スタートアップ・KAMARQ HOLDINGSの子会社として設立(当時の社名はカマルクジャパン)。18年3月に家具のサブスクサービスのベータ版をローンチしている。

きっかけは町野氏が家具好きで、引越しをする際に目黒通りにある家具屋を約30店舗回ったこと。各店舗には質の高い家具が並んでいたが、店長に話を聞くと「なかなか儲からない」という話を聞き、家具の売り方に悩んでいることを知る。

もともと町野氏は2017年にアメリカのスタートアップイベントに登壇した際、現地でサブスクという概念が普及し始めていることを体感し、リアルなモノと組み合わせれば面白いビジネスになると感じていたそう。この2つの体験が重なり「サブスクと家具を組み合わせれば、質のいい家具を多くの人が手に取りやすい形で提供する仕組みを作れるかもしれない」というアイデアが生まれた。

subsclife代表取締役の町野健氏
subsclife代表取締役の町野健氏

ただ、初めから思った通りにはならなかった。ベータ版では自社家具を中心にサービスを提供するも一向にユーザーが増えない。そこで事業モデルを変更し、自社で家具を作るのではなく家具ブランドと組むことを決断。サービス名を現在のsubsclifeに変更し、2018年9月に正式にローンチした。

この意思決定がsubsclifeにとって大きな転換点となる。パートナーが増えて商品ラインナップが拡充したことに伴い、ユーザー数が増加し事業が軌道に乗り始めた。

大きかったのは、新品の家具のみを扱う形でサービスを設計していたことだ。通常のレンタルモデルだと、基本的に同じ家具を修理しながら何回も使ってもらうことで利益を積み上げる形になる。その場合、家具ブランドと競合しかねない。

subsclifeでは返却された家具は二次流通業者に販売し、自分たちはあくまで新品の家具のみを提供するため家具ブランドと対立することがない。だからこそ、初期から家具メーカーと連携が進み、現在400以上のブランドと連携することができているという。

「家具ブランドもサブスクには興味があって、挑戦したいという気持ちはある一方で自社でやるのは難しい。サブスクのファンクションを自分たちが担うことで、お互いにとってメリットのある形を作れています」(町野氏)

30億円調達で認知拡大目指す、投資家とは事業連携も

新型コロナウイルスの影響で特に法人のニーズが増加。サブスクモデルはwithコロナ時代に合った課金体系だと町野氏は話す
新型コロナウイルスの影響で特に法人のニーズが増加。サブスクモデルはwithコロナ時代に合った課金体系だと町野氏は話す

今回subsclifeでは約30億円の資金を集めたが、投資家からは特にどのような点を期待されているのか。町野氏に尋ねてみたところ、2つのポイントがあるという。

1つはwithコロナ時代にあったサービスであること。ここ数年で社会的にもサブスクが徐々に浸透し始めていることに加え、特に法人では今まで以上にキャッシュフローを気にする傾向が強くなることも考えられる。

「過去の歴史を振り返っても、経済的に不安定な状態の時にはリース型のビジネスが伸びてきた」(町野氏)という時代背景もあり、実際に直近でsubsclifeの実績も伸びてきていることが投資家から評価されたそうだ。

そしてもう1つが家具マーケット自体が兆単位の規模を誇り、subsclifeの課金モデルがこの市場で一定のシェアを獲得できる可能性があること。この点については投資家によっても考えが二極化していて、今だに「このモデルでは絶対に難しいと思う」と言われることもあるという。

「ゆくゆくは個人も法人も部屋の中にあるものはsubsclife経由で利用している状態を作るのが理想です。チャレンジングではありますが、そこまでいけばユニコーンクラスの規模も見えてくる。(今回の投資家には)そこに大きく期待していただいているので、まずは家具における『ZOZOTOWN』のような形でしっかりと認知を広げ、インテリア領域に拡大していきたいと考えています」(町野氏)

今回新たに加わった投資家陣は事業会社やCVCが中心。各社とはシェア拡大に向けた事業提携も見据えているという
今回新たに加わった投資家陣は事業会社やCVCが中心。各社とはシェア拡大に向けた事業提携も見据えているという

今回調達した資金はシェア拡大に向けたマーケティングへの投資などに用いる計画。町野氏はsubsclifeの勝ち筋は「どれだけ認知を拡大できるか」にあると述べ、今回のラウンドでは事業連携も見据えて戦略的に事業会社やCVCから資金を調達したという。

具体的な取り組みについては今後発表する予定とのことだが、各投資家ともタッグを組みながら、家具を軸とした“インテリアのサブスク”をさらに普及させていくことを目指す。