
- 上位機に迫るパフォーマンスを獲得した「iPad Air」はデザインを一新
- 在宅学習ツールとして人気の「iPad」も高機能化、価格は据え置き
- フィットネス機能とバッテリー効率が進化した「Apple Watch Series 6」
- スタンダードモデルの「Apple Watch SE」も追加
- サブスクサービスをパッケージにした「Apple One」が始まる
米Appleが現地時間9月15日にオンライン形式のカンファレンスを開催し、デザインを一新した第4世代のiPad Airと、基本パフォーマンスを向上させたスタンダードモデルの「iPad」、並びにApple Watchの新シリーズなど注目製品を発表した。年初から続くCOVID-19感染症の影響を考慮して、同社が完全オンライン形式で開催したイベントは6月の世界開発者会議「WWDC 20」に続き、今年2回目となった。

米Appleのティム・クックCEOは、オンラインカンファレンスの動画で、最新のデバイスとサービスにより、今後もユーザーの健康的でクリエイティブな生活を支えたいと意気込みを語った。
なお今回のカンファレンスでiPhoneの新しいフラグシップモデルに関するアナウンスはなかった。代わりに今秋の正式リリースを予告していた基幹ソフトウェアのiOS 14、iPadOS 14、watchOS 7、tvOS 14が提供されることが明らかにされた。日本時間の9月17日より、無料のソフトウェアアップデートが可能になっている。
上位機に迫るパフォーマンスを獲得した「iPad Air」はデザインを一新
iPad Airは10.9インチの液晶Liquid Retinaディスプレイを搭載。上位のiPad Proと同じく、フロントフェイスの画面占有率を高めたオールスクリーンデザインに一新した。さらにカラーバリエーションをシルバー/スペースグレイ/ローズゴールド/スカイブルー/グリーンの5色展開に広げている。価格は64GBのWi-Fiモデルが6万2800円(税別)から。発売は10月を予定する。
既存モデルのiPad Proはフロント側に顔認証対応のTrueDepthセンサーを組み込んだカメラを搭載する。iPhone 11シリーズと同じFace IDによる顔認証技術による画面ロック解除・決済処理などが行える仕様だが、新しいiPad Airは本体側面に配置した電源ボタンに指紋認証センサーを組み込んだ。指紋を登録した指で触れると画面のロック解除などが行える。iPadに比べると屋外で、マスクを装着しながら操作する機会がはるかに多いiPhoneの次期モデルにも同様の技術が採用されることになるのだろうか。また新たに注目したい技術が誕生した。


SoC(システムオンチップ)にはアップル独自開発による最新の「A14 Bionic」チップが搭載された。最先端の5nmプロセスルールを使って製造するチップには6コア構成のCPU、4コア構成のGPUが統合されており、第3世代のiPad Airに比べてタスクの処理性能を40%向上、グラフィックスの処理も3倍高速化した。16コア構成のNeural EngineはAI機械学習の処理、およびiPadに搭載する様々なセンサーの情報を高度に制御する役割を担う。音声コマンドの処理やARコンテンツの描画などの精度が高まりそうだ。
メインカメラはLiDARスキャナを持たない通常のシングルレンズユニットとしたほか、ディスプレイのスペックなどにおいては今年の3月に発売されたiPad Proが勝るものの、最新A14 Bionicチップのパフォーマンスがどの程度上位機を追い上げるレベルなのか、実機による体感が気になるところだ。
本体の厚みは6.1mmのスリムサイズ。春にiPad Proのアクセサリーとして発売された打鍵感のスムーズなMagic Keyboardや、iPadにマグネットで装着・充電ができる第2世代のApple Pencilにも対応したカラフルなiPad Airは男女を問わずビジネスパーソンの購買意欲を刺激するハイパフォーマンスなデジタルツールになりそうだ。

在宅学習ツールとして人気の「iPad」も高機能化、価格は据え置き
iPadのスタンダードモデルは第8世代の新製品が9月18日に発売される。価格は32GBのWi-Fiモデルが3万4800円(税別)からと、第7世代のiPadから据え置かれた。

外観はTouch IDを内蔵するホームボタンをフロント側に残し、10.2インチのRetina Displayも引き継ぐ。カラーバリエーションも第7世代のシルバー/スペースグレイ/ゴールドの3色と同じ。
本機の注目はその中身。第3世代のiPad Airと同じA12 Bionicチップを搭載したほか、スタンダードクラスのiPadに初めてAI処理に画像解析など複雑なタスクを担う第2世代のNeural Engineが搭載されたことで、クリエイティブワークがよりスムーズに行えるようになる。
世界的なパンデミック環境下において、第7世代のiPadが学生の在宅学習用のツールとして強い引き合いを得たことから、アップルは今後も就学児童向けのデジタルツールとしてパフォーマンスが向上したiPadをプッシュするようだ。
フィットネス機能とバッテリー効率が進化した「Apple Watch Series 6」
Apple Watchは新たに血中酸素濃度が計測できる機能を搭載する上位モデルの「Series 6」と、Series 4以降に拡大した視認性の高いRetinaディスプレイのデザインをそのまま引き継ぐスタンダードモデルの「SE」がラインナップに加わった。
どちらのApple Watchも9月18日発売される。GPS+Cellularモデルの価格はSeries 6が5万3800円(税別)、SEが3万4800円(税別)。

上位のSeries 6は本体の裏蓋に赤く発光する4つのLEDクラスターと4つのフォトダイオードで構成される新しいセンサーを組み込んだ。血中酸素ウェルネスアプリと連携して、体にどれだけ酸素が取り込まれて体内に供給されているかを、ウォッチの画面とペアリングしたiPhoneのヘルスケアアプリの表示によりモニタリングできる。
血中酸素濃度はユーザーが知りたいタイミングでオンデマンドに計測ができるほか、睡眠時など1日を通してバックグラウンドで計測を続けることもできる。Series 6には常時計測の高度計やコンパスも内蔵されているので、山登りやスキー・スノーボードなど高度の高い場所でスポーツを楽しむ際に、血中酸素濃度を計測して自身の体が環境にどれほど順応できているかを調べる用途などに活用できそうだ。
2019年秋に発売されたApple Watch Series 5にも搭載されている心拍測定や転倒検出、GPSに緊急SOS通話の機能なども引き継いだ。50mの耐水性能を持たせた水泳時にも使えるスマートウォッチだ。
ディスプレイは常時画面を点灯させたまま、内蔵バッテリーで約18時間の連続駆動に対応する。アップル独自開発のシステムICチップ「S6」の駆動効率がアップしたことで、ユーザーがウォッチを身に着けて手首が下向きに返している状態でも明るい画面表示をキープする。内蔵バッテリーの充電時間も改善され、残量0%の状態から1.5時間で100%までチャージできる。Series 5では2.5時間かかった。
ケースのサイズは44mmと40mmの2種類。素材はアルミニウムとステンレススチール、チタニウムの3種類。アルミニウムのモデルにはブルーとレッドが初めて加わった。ステンレススチールのグラファイトも新色だ。
スタンダードモデルの「Apple Watch SE」も追加
Apple Watch SEはSeries 6と同じワイドな表示のRetinaディスプレイを搭載。ケースのサイズは44mmと40mmのアルミニウムとし、シルバー/スペースグレイ/ゴールドの3色が揃う。

血中酸素濃度測定アプリは搭載していないが、心拍センサーやフィットネス・アクティビティに睡眠などApple Watchの人気機能が幅広く楽しめるスタンダードモデルとして人気を集めそうだ。内蔵するシステムICチップはSeries 5と同じ「S6」。各センサーの情報を迅速に処理できる。
なおSeries 6にはアップルが独自に開発した空間認識のための超広帯域無線チップ「U1」が搭載されている。iPhone 11シリーズに初めて搭載されたU1チップが今後アップルのさまざまなデバイスに内蔵されることによって、ワイヤレスでのデータ通信、ファイル共有などがより速く正確に行えるようになりそうだ。
サブスクサービスをパッケージにした「Apple One」が始まる
Apple Watchのユーザーをさらに拡大するために、アップルは新しいwatchOS 7をインストールしたApple Watch Series 4以降の機種が対応する「ファミリー共有設定」の機能を追加した。家族のiPhoneに対してCellular対応のApple Watchを複数ペアリングして使える機能だ。
この機能を利用するためには個別のデバイス単位で携帯通信キャリアとの契約が必要になるが、例えば子どもや高齢の親にApple Watchを身に着けてもらうことによって、見守り用のデバイスとしてApple Watchの各機能が活用できるようになる。
また2020年末に向けてApple Watch専用の新しいサブスクリプション形式のサービス「Apple Fitness+」が始まることもアナウンスされた。月額9.99ドル(約1000円)を払うと、プロのトレーニングコーチによる動画付きのフィットネスプログラムをiPhoneやiPadで視聴しながら、ユーザーのiCloudアカウントにひも付くApple Watchでトレーニングの記録をリアルタイムにモニタリングしたり、フィットネスアプリに履歴を保存できる。

米国やイギリスなど英語圏の6カ国から始まるサービスは順次世界展開が計画されている。
またこのApple Fitness+を含めて、iCloudの共有ストレージやApple Music、動画配信のApple TV+、ゲーム配信のApple Arcadeなどをまとめてパッケージにしたサブスクリプションサービス「Apple One」も秋に登場する。日本ではFitness+とNewsを除いた4種類のサービスをパッケージにして、月額1100円の個人版、最大5人の家族が使える1850円のファミリー版からスタートする。
