“話せるネタ”をきっかけに、企業の中の人(面談者)と直接繋がれるカジュアル面談プラットフォーム「Meety」  すべての画像提供 : Meety
“話せるネタ”をきっかけに、企業の中の人(面談者)と直接繋がれるカジュアル面談プラットフォーム「Meety」 すべての画像提供 : Meety
  • “カジュアル面談がカジュアルではない”問題を解決へ
  • コロナ禍でサービスストップ、ピボットを余儀なくされる
  • 企業と候補者双方にとって最適なカジュアル面談の形を実現へ

コロナ禍においてニーズが拡大し、それに応えるような形で事業を伸ばしたスタートアップがいる一方で、旅行や飲食を中心に苦しい状況を強いられたスタートアップもいる。

今回紹介するMeetyは後者に該当するチームだ。昨年11月に企業が小規模の採用関連イベント(ミートアップ)を掲載できるプラットフォームをローンチ。2月までは計画通りに登録企業を獲得していたものの、2月後半からコロナによるイベント自粛が進み、ミートアップの掲載数が激減した。

新規の問い合わせや登録もストップし、いつまでこの状況が続くのか先も読めない状態。Meety代表取締役の中村拓哉氏は2月後半から新たな事業案の検討を始め、4月には既存サービスの提供停止を決断した。

そこからいくつかの事業案を模索した中で中村氏が目をつけたのが「カジュアル面談」だ。

“カジュアル面談がカジュアルではない”問題を解決へ

Meetyでは面談者が自分の話せるトークテーマを登録しているのが特徴
Meetyでは面談者が自分の話せるトークテーマを登録しているのが特徴

Meetyが10月12日にスタートした「Meety」は“話せるネタ”をきっかけに、企業の中の人(面談者)と直接繋がれるカジュアル面談プラットフォームだ。

同サービスでは「自社の事業グロースノウハウ」「商社からスタートアップに飛び込んだ理由」「急拡大した組織の裏側」など、面談者が自分の話せるトークテーマを登録している。ユーザーはその中から気になったものを探して「気になる」ボタンを送信。面談者側も承認すればマッチングが成立し、日程調整などを進める。

Meetyの4つの話せるネタ
Meetyの4つの話せるネタ

中村氏の話では従来のカジュアル面談のように“求人”に対して申し込むのではなく、話せるネタに対してアクションをするためハードルが低いのが1つの特徴とのこと。マッチングアプリのような画面設計で、気軽に気になるボタンを押せるという観点から「採用版の『yenta』のようなイメージ」とも話していた。

「カジュアル面談に関して企業と候補者の間で期待値のミスマッチが頻繁に起きていて、結果的に双方にとって機会損失が発生している状況です」

中村氏はカジュアル面談に着目した理由をそう話す。実際にTwitter上などでもポジティブな声がある反面、「カジュアル面談と呼ばれて行ったら面接だった」「カジュアル面談にも関わらずお祈り(不採用通知)された」といった候補者側の声が話題になることもある。

「こうしたことが続くと、どれだけ企業側から『気軽に話を聞きに来てください』と伝えたところで候補者からは信用されなくなってしまいます。上手く機能すれば双方に利点のある仕組みですが、現状のカジュアル面談は本当にカジュアルな気持ちでは申し込めない状況で、それを解決したいと考えました」(中村氏)

Meetyではあらかじめ「誰と」「どんなテーマで」話すかがわかっている状態でマッチングする
Meetyではあらかじめ「誰と」「どんなテーマで」話すかがわかっている状態でマッチングする

Meetyでは上述した仕組みによって、あらかじめ「誰と」「どんなテーマで」話をするのかが明確になった状態で候補者がカジュアル面談を依頼できる。そのため「採用担当者からカジュアル面談のスカウトがきたものの、実際には誰と会うのかがわからない」といった問題も起きない。

加えてカジュアル面談を実施する際の「ガイドライン」を用意することで、本当の意味でカジュアルな場が作れるように双方に呼びかけを行うという。

「あくまで候補者のためのカジュアル面談という考え方なので、企業側にはいくつか制約を設けさせていただいています。例えば『志望動機を聞くことはNG』『基本的には面談者側が質問する場ではなく、参加者の質問に答える場』といったようなガイドラインを共有し、候補者がラフな気持ちで参加できるようにしています」(中村氏)

コロナ禍でサービスストップ、ピボットを余儀なくされる

冒頭でも触れた通り、Meetyではもともと最初のプロダクトとして採用ミートアップのプラットフォームを展開していた。昨年11月のローンチから4ケ月で登録企業数は120社を突破。ノンプロモーションながら毎月20〜30社がコンスタントに増えている状況で、順調な滑り出しだったという。

ところがコロナの影響が出始めた2月の後半からは徐々にミートアップの自粛が進み、サイト上のイベント掲載数も激減。同時に新規の問い合わせや登録もピタリと止まった。

オフラインのミートアッププラットフォームだったため、コロナの打撃を受けた
オフラインのミートアッププラットフォームだったため、コロナの打撃を受けた

ミートアップをオンライン上で開催することを検討する企業もいたため、その方向に舵を切ることも考えた。ただ複数人が参加するオンラインミートアップの場合は採用担当者が1人の候補者と個別で話すことが難しく、参加者の転職意欲について質問しづらいため採用には向かない。採用を一時的に停止する企業や採用枠を絞る企業も出てくる中で、ミートアップの軸で事業を拡大することは困難だと考え、中村氏はピボットを決意したという。

次のアイデアとしてビジネスSNSのようなものなど、いくつも案を検討したが、最終的にはピボット前と同じく「採用」に関わるプロダクトに戻ってきた。

「時代の変化に伴って、それに適した採用のやり方もどんどん変わってきています。もともと前回のサービスも今の時代に合った採用の最適解を作りたいと思って始めたもの。今回も少し形は変わっていますが、根本の考えは共通しています」(中村氏)

Meety代表取締役の中村拓哉氏
Meety代表取締役の中村拓哉氏

企業と候補者双方にとって最適なカジュアル面談の形を実現へ

50人以上にヒアリングをしてみると、実際に「カジュアル面談という体で行ってみると選考をされた」という声も複数人から挙がったそう。どういうUIであれば面談者と候補者双方が使いやすいかを数カ月間テストしていく中で、今回ようやくローンチに漕ぎ着けた。

「特にエンジニアの人からは、採用担当者ではなく現場のエンジニアと話をしたいという要望が多かったです。プロトタイプの反応を聞いても、当日誰が出てくるのかが事前にわかっている点がいいねと言われることがほとんどでした」

「一方でイベントプラットフォームで『カジュアル面談』と検索すると、採用担当者向けのカジュアル面談の勉強会が出てくるほど、企業側もカジュアル面談のやり方に悩んでいることがわかりました。候補者側だけでなく、企業の課題もうまく解決していきたいと考えています」(中村氏)

目下の課題は、どれだけコンテンツ(面談の募集)を集められるか。まずは企業内などでもリファラル採用に協力的な人材を中心に、面談者としてコンテンツを掲載してくれる人材の獲得を目指していく計画だ。

まずはCtoC型の無料のカジュアル面談サービスとしてスタートするが、ゆくゆくは面談者(中の人)と企業を紐づける形で企業アカウントを用意する方針。スカウトに近い有料の招待機能や企業向けの採用CRMを通じてマネタイズすることを目指すという。