オンラインフィットネスサービス「SOELU」
オンラインフィットネスサービス「SOELU」 すべての画像提供 : SOELU

ヨガやピラティス、トレーニングなどのライブレッスンを軸としたオンラインフィットネスサービス「SOELU」が着々と事業を拡大させている。

250人以上のインストラクターとタッグを組み、早朝5時から深夜24時まで1日約130本のプログラムをライブ形式で配信。レッスンは少人数のビデオ通話のような形式で実施するが、独自の配信システムを採用することで、ユーザーそれぞれの姿は、インストラクター以外から見られない仕組みを作った。

その利便性の高さからワーキングマザーを中心に支持を集めてきたが、新型コロナウイルスの影響によるオンラインフィットネス需要の高まりを受け、ユーザー数・ユーザー層ともに大きな成長を遂げている。

2020年1月末からの約10カ月で有料会員数は5倍に増加。レッスンの累計受講回数も同様の伸び率を記録し、11月には累計受講回数100万回を突破した。

2020年1月末からの約10カ月で有料会員数は5倍に増加。レッスンの累計受講回数も11月には累計受講回数100万回を超えた

サービスを提供するスタートアップ・SOELU代表取締役CEOの蒋詩豪氏によると、以前は少なかった50代以上のユーザーが大幅に増えたという。コロナ禍で一時休業したジムやヨガスタジオが再開して以降も、リアル店舗へ通うことに対して不安を感じる人は一定数存在し、「自宅で運動を続けられるソリューションが欲しい」という要望は根強い。そんな自宅運動ニーズを上手くカバーし、継続して事業を伸ばしている状況だ。

またSOELUではオンラインヨガサービスから総合型のフィットネスサービスへの進化を目指し、プログラムのラインナップを大幅に強化してきた。従来8〜9割を占めていてヨガの割合は現時点で6割ほど。その一方でダンササイズや筋トレ、エアロビ、ラジオ体操などのレッスンを拡充したことが、年齢層の拡大だけでなく、男性会員の増加にも繋がったという。

SOELUによると、以前は少なかった50歳以上のユーザーが増えているという
SOELUによると、以前は少なかった50歳以上のユーザーが増えているという
もともとは女性用のサービスとしてスタート。徐々に男性が参加できるプログラムも拡充し、男性会員の割合も増加傾向にある
もともとは女性用のサービスとしてスタート。徐々に男性が参加できるプログラムも拡充し、男性会員の割合も増加傾向にある

新型コロナウイルスはフィットネス業界に大きな影響を与えた。オフラインのスタジオやジムに通いづらい状況が生まれたのと並行して、オンラインフィットネスサービスが台頭。オンライン専業の事業者だけでなく、リアル店舗を保有する企業がオンラインにも取り組むパターンも含めて新規参入が相次ぎ“レッドオーシャン”になりつつある。

思うようにユーザーを獲得できず苦戦するプレーヤーもいる中で、SOELUが成長できた要因はどこにあるのか。蒋氏は自社の強みとして「豊富なライブレッスンの選択肢」「品質を担保するノウハウ」「自社開発の配信システム」を挙げる。

わかりやすいのが受講できるレッスンの数だ。冒頭で触れた通りSOELUでは1日あたり130本ほどのライブレッスンを毎日配信している。蒋氏によると他社サービスでは有力なところでも1日20〜30レッスンほどのところが多く、そこに大きな違いがあるという。

「レッスンのボリュームが多ければ、必然的にユーザーの選択肢は増えます。自分が希望する時間帯に、すぐに入れるレッスンがきちんと用意されていること。その環境がSOELUを選んでもらえる大きな要因になっています。月4000本に及ぶレッスンの品質を担保するため、(2017年のローンチ以降)3年間に渡って研修体制やモニタリング体制などの改善を重ねてきました。そこで培ってきたノウハウも強みです」(蒋氏)

レッスンの選択肢の多さはSOELUの大きな特徴。早朝や深夜のプログラムは定員に達してしまうものも多いという
レッスンの選択肢の多さはSOELUの大きな特徴。早朝や深夜のプログラムは定員に達してしまうものも多いという

SEOLUでは当初から「自宅で運動を継続してもらうこと」を重要視し、あえて録画配信ではなく、一定の「強制力」が伴うライブレッスンにこだわってきた。

早朝から深夜まで、通常のジムやスタジオが開いていないような時間帯でもリアルタイムのレッスンが取り揃えられているのは同サービスの最大のウリだ(SOELUでは録画レッスンも配信しているが、メインはあくまでライブレッスン)。

今春からは各レッスンごとに、双方向で繋がってインストラクターの指導を受けられる「ポーズチェック枠(12人)」と、ライブビューイングのように視聴専用の「ギャラリー枠(約80人)」を用意。「どうしても受けたいレッスンだけどすぐに枠が埋まってしまう」という声に対しても、少し制約を設ける形にはなるが対応できるようにアップデートしている。

また冒頭にあるように、Zoomなど既存のビデオ配信サービスを使うのではなく、自社で独自のシステムを開発。自分の様子は他の参加者の画面に映し出されず、あくまでインストラクターにだけ見られる設計にすることで、プライバシーが気になるユーザーでも参加しやすい仕組みを作った。

現在は月額980円(税別)で月2回レッスンを受講できるスタータープランを始め3つのプランを展開。内訳は非公開ながら、最上位プランとなる月額5980円〜のプレミアムプラン(1日2回を上限にレッスン受け放題)の利用者も多い。

全体のアクティブ率も高めで、1ケ月あたりのレッスン受講回数の平均は1人あたり10回ほど。非常事態宣言が出ていた際に比べると落ち着いてきてはいるが(当時は平均で約20回だったそう)、今年の1〜2月に比べると1.4倍ほどに増えているそうだ。

そういった傾向を踏まえても、フィットネスサービスのオンライン化の流れは決して一時的なものではないというのが蒋氏やSOELU取締役の越塚麻未氏の見解。ユーザーインタビューをする中でも「仮にコロナが落ち着いてもオンラインで便利なものは使い続けたい」との声が多く、「フィットネス領域においてもオンラインラインフィットネスという選択肢がかなり定着してきた印象があり、今後さらに大きな市場になると考えています」(越塚氏)としている。

2020年7月以降はジムやスタジオの営業が再開され、SOELUの利用背景も以前と同様に運動需要が中心。オンラインフィットネスが浸透し始めたことでユーザー数は伸び続けているという
2020年7月以降はジムやスタジオの営業が再開され、SOELUの利用背景も以前と同様に運動需要が中心。オンラインフィットネスが浸透し始めたことでユーザー数は伸び続けているという