
サイバーエージェントの関連会社でプログラミング教室を展開するCA Tech Kidsは、2018年より小学生プログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix」を毎年開催している。開催の目的はIT業界の未来を担う人材の発掘だ。
今年は12月6日に東京都・渋谷区で決勝大会が開催され、10人の若き猛者たちが各々の作品を発表した。見事に優勝を果たしたのは、愛知県から駆けつけた川口明莉さん。10歳の小学校4年生だ。
優勝作品はAIを活用したSDGs学習用アプリ
川口さんが発表した作品のタイトルは「マークみっけ! for SDGs」。ベルマークやマタニティマークなど、SDGs(持続可能な開発目標)に関連するマークをカメラで読み取って集めるゲームアプリだ。
アプリを開始すると、画面には12人の子供たちが表示される。子供たちはそれぞれ悩みを抱えていて、泣いている。例えば、赤い眼鏡をかけた子供は「教育はお金持ちの子供だけのものかな?」との疑問を抱いている。そこでベルマークを探してカメラで読み取ると、その子供は「貧しい子にも教育できる先生になってみせるわ」と話し、笑顔になる。
マークは全部で45種類あり、集めたマークは図鑑に表示される。図鑑では各マークの詳細について学ぶこともできる。
このアプリを開発した理由について、川口さんはプレゼンテーションで「学校でSDGsを学んだり、マークを集めるゲームをしたことがきっかけです。身近にあるマークがSDGsに関係があることを知り、組み合わせることでSDGsを考えるきっかけになればと思いました」と話す。
「この作品を通して、それぞれのマークに関わるSDGsを意識する人が増えれば良いなと思いました。10年後の2030年には、みんな笑顔の持続可能な社会になっていると良いですね」(川口さん)
開発で最も苦労したのはAIによる画像認識。川口さんはTeachable Machine(Googleが提供しているAIの機械学習ツール)で学習モデルを作り、Scratch(子供向けのプログラミング言語)に取り込んだが、 最初はうまく認識しなかったそうだ。「原因は、学習された画像が似たようなものばかりだったから。なので、同じエコマークでも、いろいろな色や大きさ角度のものを取り込みました。すると高い確率で認識してくれるようになりました」と説明する。
決勝大会で審査員を務めた、LINEみらい財団企画室の福岡俊弘氏は「機械学習を使った作品が出てくるとは想像もしていなかった」とコメント。同じく審査員を務めたCygames CTO室の永谷真澄氏は「使った人にとって本当に役に立つソフトになっていると思います」と述べた。
コロナ禍で“社会的意義”のある作品が増加
Tech Kids Grand Prixは今年で3度目の開催。今年は7月よりエントリー受付を開始し、9月末までに2189件の応募を受け付けたという。
今年からは東京都・渋谷区、千葉県・松戶市、⻑崎県・島原市を含む12の地域と連携し、地方コンテストも共同開催した。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年は正しい手洗いについて学べるアプリや、ソーシャルディスタンスを確認できるARアプリなど、社会的意義のある作品が目立った。その他にも、人類が地球を脱出する宇宙ゲームや、お気に入りの犬のぬいぐるみを3Dモデリングした可愛らしいゲームなど、個性的な作品が揃っていた。
審査員の永谷氏は「持続可能性のような社会的なテーマを扱ったり、コロナ禍での不自由に対して工夫をしたり、好きなゲームやアートを作り込んでみたり。いろいろなテーマの作品が揃っていましたが、どの作品からも皆さんのこだわりが伝わってきました」と総評した。
