保険代理店向けのクラウド型顧客・契約管理システム「hokan」
保険代理店向けのクラウド型顧客・契約管理システム「hokan」 すべての画像提供 : hokan
  • 大量の紙をデジタル化、保険代理店のDXを後押し
  • 保険業界のアップデート目指しSansanともタッグ

保険会社と消費者の間に立ち、複数の保険商品の中から各消費者に対して最適な保険を提案する“保険代理店”は保険市場において重要な役割を担ってきた。

近年は業界にテクノロジーを持ち込むInsurTech(保険テック)スタートアップも登場し、モバイルアプリから簡単に保険に加入できるようなサービスも生まれ始めている。ただ情報の非対称性の高いこの領域では、いまだに保険代理店の存在は大きい。

現在保険業界には約18万店の代理店があり、200万人を超える保険募集人が消費者に保険商品を届けている。この保険代理店のデジタル活用を後押しすることで約50兆円の保険市場をアップデートしていこうというのが、2017年創業のhokanの考えだ。

同社では2019年より保険代理店向けのクラウド型顧客・契約管理システム「hokan」の販売をスタート。現在31都道府県127拠点にサービスを提供している。

これまで週1回以上のアップデートを続けながらプロダクトを作り込んできたが、今後は業務のデジタル化に加えてデータを基に営業活動を支援する機能なども加えていく計画。そのための資金として、12月14日にはArchetype Ventures、Sony Innovation Fund、Sansan、BEENEXTを引受先とする第三者割当増資により総額で2.5億円を調達した。

hokanはこれまでにも複数の投資家から資金調達を実施済み。Sansan以外の投資家3社はすべて既存株主であり、そのほかにも過去にCoral Capitalやセゾン・ベンチャーズなどから出資を受けている。

大量の紙をデジタル化、保険代理店のDXを後押し

hokanは顧客情報や契約情報をクラウド上で一元管理できる保険代理店向けのSaaSだ。

同サービスでは個人・法人問わずすべての顧客情報を集約し、あらゆる条件に応じて情報を取り出すことが可能。顧客の家族情報などを紐付けて関係性を把握したり、顧客へのアクションやメモのログを時系列で蓄積したりといったように、最適な保険商品を提案する上では欠かせない機能を盛り込む。

契約情報の管理画面
契約情報の管理画面
顧客ごとにアクションや行動の変化をタイムライン形式で記録できる
顧客ごとにアクションや行動の変化をタイムライン形式で記録できる

特に2016年に改正保険業法が施行され、保険代理店はこれまで以上に正確に情報を記録することが求められるようになった。顧客の契約に対する意向を適切に記録する「意向把握義務」と、顧客の希望条件に該当する保険商品をすべて提案しなければならない「情報提供義務」が定められ、この義務がきちんと果たされているか、本部では各拠点の動向をチェックする必要もある。

hokan代表取締役の尾花政篤氏によると、多くの代理店では今までこれらの意向把握を“大量の紙”で管理してきたそう。商談の度に紙が発生し、それを長期間に渡って保管し続けるために倉庫を借りて余計なコストがかかる。そんなケースも決して珍しくはないという。

代理店の業務を支援するシステム自体は存在するものの、十数年前に立ち上げられたものが中心で、使い勝手の面で改善の余地が大きいそう。結果的にシステムを取り入れているにも関わらず、紙と併用している企業もいる。

またSalesforceが展開する保険事業者向けのCRMソリューションなど品質の高いシステムもあるが、価格面などがネックになってすべての企業が気軽に導入できるわけではない。

その点hokanは、10名前後の中小規模の代理店でも取り入れやすいように、従業員(1ID)あたり数千円で使えるSaaS型のサービスとして提供する。

「機能面は充実しているが高価格なシステムと、安価ではあるものの機能面で改善の余地が残るシステムのどちらかしか存在しないような状態でした。hokanでは中小規模の代理店でも導入しやすい料金体系で、使い勝手が良く、当たり前のように日々アップデートされるプロダクトを提供していくことを目指しています」(hokan事業責任者の松元勇人氏)

意向把握義務に対応した機能も特徴
意向把握義務に対応した機能も特徴

保険業界のアップデート目指しSansanともタッグ

これまでは保険代理店内でアクティブに使ってもらえるサービスを目指し、基本的な業務をクラウド上で効率的に進めるための機能開発を優先的に進めてきた。今後はhokan上に蓄積したデータを活用し、顧客とのコミュニケーションや営業活動を後押しするための機能も拡充させる。

「顧客の意向の推移や、それを踏まえた提案の記録などは本来貴重なデータになりうるものです。ただその情報が紙でバラバラに管理されているがゆえに、十分に活用できていない現場も多かった。大量の紙をデジタル化することで業務負担を軽減できるのもhokanの1つの価値ではありますが、それだけでなく、データを活かして顧客に最適な提案ができる仕組みも作っていきたいと考えています」(尾花氏)

hokanのメンバーと投資家陣営
hokanのメンバーと投資家陣営

今回調達した資金はさらなるプロダクト改善と事業拡大に向けて、人材採用の強化やセキュリティ、データ活用技術への投資に用いる方針。新たに株主として加わったSansanとは業務提携も締結しており、事業面での連携も見据えている。

両社では2月より「Eight 企業向けプレミアム」とhokanにおいてサービス間の連携を実施済み。hokanとしてはSansanとのタッグを通じて、営業活動でのIT活用や紙書類のデジタル化などを推進し、保険業界全体のアップデートを加速させていく計画だ。