代理店の案件進捗や営業の行動を可視化しデータベースし、管理業務を効率化できる「PartnerSuccess」
代理店の案件進捗や営業の行動を可視化しデータベースし、管理業務を効率化できる「PartnerSuccess」 すべての画像提供 : パートナーサクセス
  • さまざまな代理店制度を設計する中で感じた「現場が疲弊する原因」
  • 代理店情報を可視化し、効果的な戦略立案のサポートへ

リアルな物を売るメーカーから無形のサービスを手掛けるITベンチャーまで、自社の製品をより多くの顧客へ届ける手段として「代理店」とタッグを組む企業は多い。GoogleやAmazonといった世界的な企業も、Zoomのように急成長を遂げた新興企業も、代理店とパートナーシップを組むことによってグローバルで事業を広げてきた。

うまく連携できれば代理店は自社の事業を拡大する強力なチャネルになりうるが、そのためには代理店とのコミュニケーションや事務作業の効率化が不可欠だ。

2019年設立のスタートアップ、パートナーサクセスではSaaSを通じて多くの企業が課題を抱える「代理店の管理業務」をデジタル化し、戦略的なパートナープログラムを推進するためのサポートをしている。

さまざまな代理店制度を設計する中で感じた「現場が疲弊する原因」

パートナーサクセスで代表取締役を務める永田雅裕氏は、代理店に関する経験が豊富な起業家だ。

NTT関連企業の営業コンサルティングや個人事業主として5年ほどの代理店営業を経験したのち、2014年に1度目の起業でLIFE STYLEを創業。同社の主力事業の1つである「Googleストリートビュー(屋内版)」の制作事業では2年間で300社の代理店を展開し、3年目には代理店売上のみで約10億円の事業にまで拡大させた。

LIFE STYLEではリコーと業務提携を結び、クラウドサービスを全国展開するための代理店制度の設計もサポート。スモールビジネスの代理店構築の支援なども手掛けてきた。

多くの代理店と関わる中で永田氏が感じたのが「メーカーと代理店との間のコミュニケーションがめちゃくちゃアナログ」なため、生産性の低下や現場が疲弊する原因になってしまっていることだ。その課題を解決するべく、新たに会社を立ち上げ、代理店営業管理クラウド「PartnerSuccess」を開発したのだという。

企業と代理店との間で発生するコミュニケーションを集約し、管理業務を効率化できるのが特徴
企業と代理店との間で発生するコミュニケーションを集約し、管理業務を効率化できるのが特徴

「代理店は2社間で多くのステークホルダーが関わることになるので、コミュニケーションが複雑になってしまいやすいです。しかも日々のコミュニケーションが属人的で担当者によってバラバラなツールを使っているため、現場が混乱してしまっている上にナレッジが残らない。そのやりとりをクラウドで一元化・効率化することで、現場の負担を軽減し、より効果的な代理店戦略を実現していくことを目指しています」(永田氏)

PartnerSuccessの特徴は代理店の案件進捗や営業の状況などを1カ所に集約し、データベースとして整理できること。各販売代理店との受発注の申請・承認作業や月末月初の請求データ作成などもシステム上でスムーズに進められるため、余計なコミュニケーションコストや手間を省ける。

営業活動の自動レポート機能なども含め、代理店本部の担当者やアシスタントが行っている面倒な事務作業や情報共有の大部分を自動化している点もポイントだ。

代理店のデータベースを作り、細かい設定が可能。属人化も防げる
代理店のデータベースを作り、細かい設定が可能。属人化も防げる
受発注作業の効率化やレポートの自動化など、担当者の負担を削減する機能も搭載
受発注作業の効率化やレポートの自動化など、担当者の負担を削減する機能も搭載

永田氏によると、これまで代理店管理システムとしては既存のCRMやSFAをカスタマイズして使うケースが多かった。永田氏自身も以前はそのやり方を採っていたそうだが、そこでネックになるのがカスタマイズのための開発や保守にかかるコストと時間だ。

実際に周囲の企業から代理店管理システムについて聞かれることが多々あり、その度に既存のCRMを用いた手法を紹介してきたが「(開発コストの関係で)最終的にはほとんどの企業で使われず、結果的にエクセルやアナログな手法に戻ってしまっていた」という。

そこでPartnerSuccessではカスタマイズ不要で、従来の10分の1程度の価格で導入できる仕組みを作った。月額の利用料金は1万円の基本料金と代理店IDごとの3000円。メンバーや商品の数は追加料金なしで無制限に登録できる。

1月のサービスローンチ以降すでに複数社が同サービスを活用して管理コストを削減することに成功しているそう。ある企業では管理業務を効率化することで1人あたりが担当できる代理店の数が増え、短期間で販売代理店数を1.5倍に増加させることに繋がった。

代理店情報を可視化し、効果的な戦略立案のサポートへ

パートナーサクセスではさらなる機能拡充と事業拡大に向けて、12月15日にはCoral CapitalとALL STAR SAAS FUNDを引受先とした総額1億円の資金調達を実施した。

パートナーサクセスのメンバー。最前列の1番左が代表取締役の永田雅裕氏
パートナーサクセスのメンバー。最前列の1番左が代表取締役の永田雅裕氏

永田氏いわく「今までブラックボックスになりやすかった代理店情報を一元化し、可視化すること」がPartnerSuccessの1番のウリ。今後は管理の工数を減らす機能だけでなく、個々の代理店の状況を見える化し、効果的な代理店戦略を立案するための機能を磨き込んでいく計画だ。

登録するメンバーの数に限らず代理店IDごとの固定料金制にしているのもそのため。各営業担当者の情報が蓄積されていけば、代理店単位ではなく“担当者単位”で「誰が自社製品の販売に貢献してくれているか」を把握できるようになる。

「今後は代理店ごとのアクティブ率を反映した“スコア”という要素を加えていく予定です。それを見ることで『どの代理店の、どの担当者のフォローアップに特に力をいれるべきか』がわかり、より効果的な代理店戦略を作れるようになります」(永田氏)

「代理店とはリモート営業部のようなもの」という永田氏は、代理店管理の課題について次のように語っている。

「外部のパートナーと営業活動を進めていく中で、代理店や担当者ごとの状況を正しく理解している会社はしっかりと成果につながっています。ただ多くの企業ではそれができておらず、手放しになっているのが現状です。なぜそのような状況になっているかというと、日々の管理業務に時間を取られて他のことにまで手が回らないから。まずはその管理業務にかかる時間を削減し、売上につながる販売代理店の開拓やパートナーのサポートに専念できる仕組みを広げていきます」(永田氏)