
- 処分品や余剰在庫を「必要とする企業」へ直接販売
- 家具のシェアリングが加速する時代、メーカーが損をしない仕組みへ
約400の家具ブランドとタッグを組み、家具のサブスクサービス「subsclife(サブスクライフ)」を展開してきたsubsclife。同社は新たな取り組みとして、法人同士でアウトレット家具やリユース家具を売買できる「subsclife SHARE」を1月20日よりスタートした。
同サービスでは家具メーカーが余剰在庫として抱える家具を定価よりも安い価格でユーザー企業に販売できるほか、“法人版の家具フリマ”のような形式で一般企業同士が中古品を売買する用途でも使える。
1つの特徴として、subsclife SHAREに参画している家具メーカーの商品が売買された場合、直接取引に関わっていなくても(一般企業同士で売買された際にでも)収益の一部がメーカーへ分配される仕組みを取り入れた。
処分品や余剰在庫を「必要とする企業」へ直接販売
subsclifeでは2018年3月に家具のサブスクサービスをベータ版としてローンチした。当初こそ自社製の家具を中心に扱っていたが、家具ブランドと組む形へと事業モデルを転換し、同年9月より正式版の運営を始めた。
一般的なレンタルサービスなどとは異なり、subsclifeが扱うのはあくまで新品の家具のみ。そのため家具メーカーと対立することなく連携がスムーズに進んだといい、現在は約400ブランド・10万種類の家具をカバーする。

同サービスは個人・法人問わず利用できるが、2020年に関しては特に法人向けの事業が一気に拡大した。コロナ禍において今まで以上にキャッシュフローを気にする企業が増えた結果、多額のコストをかけて家具一式を購入するのではなく、サブスクを利用する事例が増えた。
subsclifeではそんなコロナ禍でのニーズにもしっかりと応えるべく、2020年9月には約30億円の資金調達を実施。組織基盤を強化するとともに、株主として参画した事業会社と連携した取り組みを進めながら事業を広げてきた。
subsclife代表取締役の町野健氏によると、サービスの成長に伴いメーカー側と企業側双方の悩みを聞く機会が増えていったことがきっかけとなり、今回の新サービス立ち上げに至ったという。
「企業がいらなくなった家具を処分しようと思った際、一般的にはそれなりの費用を支払って引き取ってもらうことになります。その一方で、品質の高い家具を少しでも安く購入したいという企業の中には『中古品でも十分』というところも一定数存在する。両者を上手くマッチングできれば、家具を処分したい企業はお金を払うどころかキャッシュインできます。そのようなマーケットがあれば便利だなと思ったのが1つの理由です」
「またメーカー側からは、大量の在庫を抱えることは事業上のリスクも大きく、泣く泣く処分しているという話をよく伺っていました。その中にはショールームで展示していた商品やほんの少しの傷が原因で返品された商品など、状態が良いものも多くあります。今後SDGsの流れを受けて家具の二次流通マーケット自体はニーズが増えると思っていましたし、何よりメーカーが本当に困っていたので。(余剰在庫を)直接販売できるような仕組みを自分たち自身が率先して作るべきだと考えました」(町野氏)
家具のシェアリングが加速する時代、メーカーが損をしない仕組みへ
subsclife SHAREの構造はシンプルだ。法人に限定した家具のマーケットプレイスで、商品の質を担保するべく、出品者に関しては事前に審査を実施する。出品者のタイプは大きく2種類。自社で家具を取り扱う家具メーカーと、不要になった家具を他の企業へ売りたい法人だ。
家具を保有するメーカーや法人にとって、本来は処分・廃棄していた家具を“それを必要とする誰か”へと販売できるのがメリット。一方で「しっかりとした家具を少しでも安く買いたい」という企業は、通常よりも安価な価格で家具を揃えることができる。
製造元の家具メーカーがsubsclife SHAREに参画していれば、同社が直接取引に関わらない場合であっても収益の一部がレベニューシェアされる点が特徴。同じ商品がユーザー間で何度も売買されれば、その都度メーカーにも一定の収益が分配されることになる。
サービス名のsubsclife SHAREには、家具のシェアリングに加えて“収益のシェア”の意味も込められているそうだ。
「これからますますシェアリングの時代になる中で家具の再利用が活性化すると、メーカーは良い物を作れば作るほど損する構造になってしまいます。メーカーはそこへの葛藤を抱えながらも、思い入れがあるので良い物を作る努力をしてくれている。(二次流通市場で)高く何度も売れるということはメーカーの力にほかならないなので、その際の収益の一部はメーカー側へシェアをしていくという考え方です」(町野氏)
町野氏の話では、すでに数十の家具メーカーがサービスへの参画を決めている状況。具体的な収益の分配率については非公開だが「二桁%になる」とのことで、メーカーからの反応も良いという。
subsclifeとしては従来のサブスクサービスと今回の新サービスの両輪で、今後さらに事業を広げていく計画だ。