
- 「ahamoショック」で動きだした料金競争
- LINEかけ放題+スタンプも
- LINEユーザーの体験重視で開発
- 通話定額を外して月2480円に値下げ
- eSIMにも対応
- LINE上でサポート対応
- Yahoo! JAPAN特典は“当初は”無し
ソフトバンクは新ブランド「LINEMO(ラインモ)」を3月17日より提供すると発表した。オンライン専用の新プランで、月20GBのデータ容量で基本料金は2480円(税別、以下同)。
LINEMOは、2020年末に「SoftBank on LINEをコンセプトとした新ブランド」として発表があったサービスだ。今回、そのブランド名やサービス開始日をはじめとした詳細が案内された。
「ahamoショック」で動きだした料金競争
2020年11月にNTTドコモが「ahamo」を発表して以来、携帯各社は新料金を巡って競争をくり広げている。

ahamoは月2980円で20GB、さらに1回5分までの通話定額も料金に含まれるという内容だった。KDDIが追随した「povo(ポヴォ)」は通話定額を外して月2480円を基本料金とし、24時間使い放題などの“トッピング”メニューを用意している。
3社の新プランはオンライン申込専用で、月20GBという中容量に照準を合わせた内容。いずれも3月中に提供開始予定だ。
3社はまた、より大容量のユーザー向けに、従来ブランドの大容量・無制限プランを値下げも発表している。auとソフトバンクは小容量ユーザー向けにサブブランドの「UQモバイル」「Y!mobile」でもプランを改定して対応している。
新規参入の楽天モバイルもこの動きに対応し、4月から適用の新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」では利用データ容量に応じて月額0円~2980円の段階制プランへと改定している。

ソフトバンクのLINEMOでは、サービス開始前に先行エントリーキャンペーンを開催している。常務執行役員の寺尾洋幸氏によると「先行エントリーでは大きな目標を設定していたが、それを上回る勢いで申し込みされている」という。
先行エントリーの実数については明らかにしていないが、「これまでSoftBankやY!mobileでオンライン手続きを利用した経験があるユーザーが多かった」(寺尾氏)という。
ここからは、2月18日の発表会で明らかになったLINEMOのサービス内容を詳しく見ていこう。
LINEかけ放題+スタンプも
LINEMOはソフトバンクの子会社だったLINEモバイルをリニューアルし、ソフトバンクが提供するオンライン専用プランに仕立てたものだ。LINEをより使いやすくするサービス内容を特徴としている。

「LINEギガフリー」は2020年12月のコンセプト時点から、特徴の1つとされていた。ギガフリー、つまりデータ容量を消費せず使える範囲について、LINEトーク(メッセージ)と通話、ビデオ通話が含まれると発表された。これらの通信にかかわるデータは月20GBの容量制限を気にせずに利用できる。
新要素として「LINEスタンプの使い放題」がLINEMOで追加料金なしで提供されることも明らかになった。
LINEアプリでは「LINEスタンプ プレミアム」として提供中の、LINEのクリエイターズスタンプが使い放題となるサブスクリプションサービスだ。通常は月額200円相当だが、LINEMOユーザー向けには無料で提供される。2021年夏をめどに開始予定だ。

LINEユーザーの体験重視で開発
LINEMOのキーワードは「タノシイオドロキ。」。LINEの“楽しさ”と、ソフトバンクの“予想外の驚き”という、両ブランドのイメージを組み合わせたものだ。

LINEMOのLINE関連の特典は、大きくは「LINEギガフリー」と「LINEスタンプ使い放題が無料」という2点にとどまっている。
だがLINEはLINE PayやLINEマンガ、出前館などの多数の関連サービスを擁している。トーク・通話機能やスタンプ以外にも、もっと踏み込んだ連携の可能性も考えられる。

当初の連携要素をなぜ限っているのかは、LINE取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏が語った内容がヒントになるだろう。「LINEのユーザー、デジタルネイティブなユーザーが操作、手続きの面からも一番使いやすいものであってほしいとソフトバンクにお願いした」(舛田氏)という。
LINE上で契約手続きなどを行う仕組みは、すでにLINEモバイルのサポート体制として提供されており、LINEMOでも踏襲されるものと思われる。
一方で、ソフトバンクの寺尾氏は「LINEの中でのクロージング(契約手続き)機能については、簡単で使いやすいものができるよう開発を進めている。一朝一夕で構築できるとは思っていない。提供初日から改善を続け、毎日アップデートをかけていく」と述べている。
当初はLINEMOのオンラインサポートなどの基本的な機能を磨き上げ、LINEサービスとの連携強化はその後に順次進めていくものと思われる。
通話定額を外して月2480円に値下げ
LINEMOでは当初、ahamoに倣い、5分間の通話かけ放題が月額料金に含まれていた。これは今回の発表ではオプション扱いとなり、基本料金は2480円とされた。NTTドコモとソフトバンクの後に発表したKDDIの「povo」にあわせて値下げした格好だ。

5分間かけ放題は月額500円で利用可能。完全通話定額も月額1500円のオプションとして用意される。ソフトバンクの寺尾氏は「ソフトバンク on LINEの発表後、SNSで『通話はLINEで十分』や『スマホの通話定額はいらないから安い方がいい』といった声をいただいた」と仕様変更の背景を説明している。

既存プランとの違いとして、キャリアメール(softbank.ne.jpなど)は提供されない。通話関連では、留守番電話や転送電話といったサービスも用意されない。
なお、SoftBank/Y!mobileブランドでは、「Yahoo!プレミアム会員が無料」という特典が用意されているが、LINEMOについては対象外となる。
eSIMにも対応
モバイル通信は1つのプランで4G LTEと5Gの両方に対応する。SIMは従来型の物理SIMのほか、「eSIM」形式でも提供される。
eSIMはSIMカードと同様の内容をスマホ上の専用チップに記録する仕組みで、iPhone XS以降のiPhoneやGoogleのスマホPixelシリーズなどが対応している。
eSIMの場合はオンラインの申込から最短1日で発行し、すぐ使い始めることができるというメリットがある。eSIMの発行を円滑にするため、オンライン上での本人確認手続き(eKYC)も導入される。

物理SIMカードは標準SIM、microSIM、nanoSIMの3サイズに対応するマルチSIMとなる見通し。1枚のSIMカードでiPhoneとAndoridの両方に対応する。
LINEMOではSIMカードの再発行や交換には、手数料がかからない。そのほか、契約事務手数料、MNP転出手数料、契約解除料がいずれも無料となる。

サービス面では、テザリングや国際ローミングへの対応も明らかにされた。スマホのデータ通信をパソコンなどで使うテザリング機能は基本機能として追加料金なしで提供される。
国際ローミングもソフトバンク網と同様に世界各国で利用できるが、通話やデータ通信料金は従量課金制となる。
LINE上でサポート対応
LINEMOは低価格な代わりに、ユーザーサポートもLINEアプリやWeb上で提供される。電話でのサポート窓口も当初は提供されない。
LINEアプリでのサポートは、契約内容やデータ容量をLINE上で確認できたり、公式アカウントへのチャットを通じて問い合わせできるといった内容。
ソフトバンクの実店舗でもサポートは行わないが、寺尾氏によると「Softbank on LINE」のコンセプトを発表した直後からソフトバンクショップに問い合わせが入るようになったため、サービスの簡単な案内のみ行うようにしているという。
Yahoo! JAPAN特典は“当初は”無し
新ブランドLINEMOではLINEとの連携を図る代わりに、Yahoo!プレミアム特典やPayPayユーザーの特典は省かれている。
ソフトバンクはグループにYahoo! JAPANを擁するZホールディングスを抱え、Softbank/Y!mobileのユーザー向けにYahoo!プレミアムの特典を無料提供するなどの連携を図ってきた。スマホ決済アプリのPayPayも両社の共同事業だ。
ただし、LINEMOでのYahoo! JAPAN連携について寺尾氏は「サービス開始時点では提供しないが、お客様の声を聞きながら、サービス改善の課題の1つとして取り組みたい」と含みを持たせた説明をしている。
なお、LINEは現在、Zホールディングスとの経営統合の手続きを進めており、2月末にも完了が見込まれている。統合完了後、3月中に新生Zホールディングスの経営戦略説明会が開かれる見通しだ。