
「Clubhouseで主催しているクラブで音楽を演奏していたら、一通のメールが届きました。メールの件名は『Clubhouse Icon』。『なんてこった』と思いましたし、大騒ぎしたかった。すぐにでもメールを見たかったのですが、演奏に集中しなければならなかった。1時間後くらいにメールを見たらその内容は『Clubhouseのアイコンにならないか』というものでした」
こう語るのは自身の顔写真が招待制・音声SNSアプリ「Clubhouse」の新たな“顔”となったAxel Mansoor氏だ。同氏はロサンゼルスを拠点に活動しているミュージシャン。日本でも直近提供の始まった「クラブ(あらかじめメンバーを登録したルームを開設できる機能)」を活用し、2020年10月から「Lullaby Club」というクラブを開設。晩、音楽を演奏したり、ほかのユーザーたちとの雑談を楽しんでいる。
Clubhouseの魅力や配信者として気をつけているポイントについて、両親の出身地だというモーリシャス島で楽曲を製作中のMansoor氏に話を聞いた。
──Clubhouseはいつ頃から使っていますか。使い始めたきっかけは。
使い始めたのは2020年の9月です。友人から「このアプリ良い感じだぞ」と勧められたのがきっかけです。当時はClubhouseで音楽を演奏している人は全然いませんでした。
唯一音楽活動をしていたのはBomani Xさん(前回のClubhouseアイコンの人)でした。彼は「Cotton Club」というクラブを運営していたので、一緒に演奏をしたりしました。
友人に「他にほとんど誰もやっていないし、Clubhouseで音楽を演奏してみようと思う」と伝えると、「あまり良いアイデアじゃない気がする」と言われました。でも僕は新しいチャレンジが好きなので、どんどんとClubhouseにのめり込んで行くようになりました。
Lullaby Clubを立ち上げたのは2020年の10月でしたが、活動を本格化したのは今年の1月のことです。当時は30〜40人ほどのユーザーが参加していましたが、今では少なくとも500人は参加しています。多くの有名人も参加しています。
僕はただ単に楽しいからやっていたので、ここまで大きなクラブになったことは驚きです。Lullaby Clubでは何を売っているわけでもありませんし、僕は参加してくれる皆さんのために音楽を演奏しているだけです。結果、多くのユーザーからの強い共感を得られて、彼らは他のユーザーにもLullaby Clubへの参加を勧めてくれました。ミュージシャンにとっては夢のような展開です。
──Clubhouseのアイコンになるまでの経緯を教えてください。
Lullaby Clubが大きくなるにつれて、アプリを開発したPaul DavisonさんやRohan Sethさんも、忙しいのにも関わらず参加してくれるようになりました。そうしたら、Clubhouseでコミュニティを担当するStephanie Simonさんからメールが来て、「アイコンにならないか」と誘われたのです。
写真やプロフィールを送ったのですが、あくまでも「検討」とのことだったので、Clubhouseにアイコンになる可能性があることは誰にも伝えていませんでした。
メールを送ってから数週間後、もう1通のメールが届きました。そのメールには僕の写真を使ったClubhouseのアイコンが添付されていました。Lullaby Clubで演奏中だったので、まずは冷静に演奏を終えて、マネージャーにアイコンになったことを伝えてから、大騒ぎしました(笑)
ClubhouseはLullaby Clubでの活動だけでなく僕自身についても評価してくれて、アイコンに採用してくれたようです。コラボレーション、コミュニティ、クリエイティビティといった面での精神がClubhouseと合致したと伝えられました。
Clubhouseのアイコンになるなんて信じられないですよ。僕が1番尊敬するミュージシャンはJohn Mayerなのですが、彼はClubhouseユーザーです。という事は、John MayerのiPhoneには僕の顔が表示されてるって事ですよね。信じられないですよ(笑)
──Lullaby Clubの魅力は。
僕は「ロサンゼルスでは人と人とが尊敬し合う集まりを作ることは難しいだろう」と考え、コミュニティ作りには消極的でした。でも、コロナ禍で多くの人が自宅で寂しくしている中、Clubhouseが登場しました。僕はここまで大きなコミュニティを作る気はなかったのですが、心から愛している音楽活動を行っていたからこそ、成功したのだと思います。
そして僕は全てのユーザーに対して尊敬の念を持って接しています。Clubhouseでは間違ったルームに入ってしまうと孤独感を感じたり、逆に不必要なまでに注目を浴びてしまいます。触れたくない情報に不本意に触れてしまうこともあると思います。
僕が運営するLullaby Clubでは全てのユーザーを尊重しています。出身地、人種、性別、宗教、信仰などに関わらず、誰にとっても平和な場所を提供しています。音楽の素晴らしさは、誰もを繋げる力を持つところにあります。英語が喋れなくても、日本語が喋れなくても、音楽は誰もが楽しめる芸術です。
Lullaby Clubではあらゆるジャンルの音楽を演奏しますが、目的はユーザーを癒すことです。コロナ禍で人々は苦しんでいます。みんな辛いんです。東京でも、仕事帰りにレストランに寄りたくても営業していませんよね。なので、Lullaby Clubでは音楽を演奏したり、冗談を言い合ったり、お互いを癒し合うための場を提供しています。
──演奏している音楽について教えてください。
僕は自分の音楽を「Self Love(自己愛)Pop」と呼んでいます。僕の音楽は、僕が自分自身を愛せるようになるまでの道のりをテーマにしています。新曲の「kids can be so stupid」やリリース予定のEP「I Hadn't Ever Loved Myself」は、ようやく自分自身を愛せるようになった僕の経験についてです。
僕は長いこと、自分自身を愛せていませんでした。「未熟だ」、「成功するわけがない」、「諦めろ」、「駄目人間」といった声が頭の中でずっと響いていました。努力を重ねることで、そのような声を排除することは不可能なものの、上手く付き合えるようにはなりました。
──Clubhouseは音楽活動をする上でどのように役立っていますか。
僕はFacebook、Twitter、Instagramなど、これまでのSNSはあまり積極的に使ってきませんでした。それらのSNSに投稿されるコンテンツは、ユーザーの人生のほんの一部を編集することで強調しているような物に見えるからです。投稿したコンテンツだけではその人の本当の姿を知ることは不可能です。
Clubhouseは音声での生配信なので編集できません。あなたが何者なのか、はっきりとわかるプラットフォームです。他のSNSと違って他人を演じることは難しいと思います。
Clubhouseで僕のことを知っていただくと、気に入ってもらえることが多いです。多くのユーザーが僕をサポートしてくれるのは、僕も彼らをサポートしているから。ClubhouseはAxel Mansoorというミュージシャンが何者なのかを本当の意味で理解できる唯一のプラットフォームです。
──日本のClubhouseユーザーにメッセージはありますか。
日本向けに「Lullaby Club Japan」を立ち上げたいと思っていて、日本に住んでいる友人にも連絡しています。日本人のミュージシャンと是非、一緒に演奏がしたいです。
日本にも多くのClubhouseユーザーがいますし、僕は日本が大好きです。アニメや漫画、神話など、日本の文化にはとても惹かれます。
Lullaby Clubのコミュニティを日本にも広めたいと思っているので、協力してくれる方からの連絡を待っています。