
- メディアの広告収益最大化をテクノロジーでサポート
- 機能拡張で「サイト運営に必要なツール」を一括提供するサービスへ
- ノーコード型のウェブサイト作成ツールを新たに開発
2019年のサービス開始以来、「広告収益の最大化」機能を軸にさまざまなメディアのビジネスを後押ししてきたFLUX。中小規模の媒体を中心にスタートし、今では東洋経済新報社をはじめ大手のビジネス媒体やテレビ局、ブログプラットフォームなどさまざまなメディアを顧客に抱える。リリース2年で契約件数は400件を超え、現在も成長中だ。
その同社がシリーズAラウンドの資金調達を実施し、さらなる事業拡大を目指す。今回FLUXに出資したのは共に既存投資家であるDNX VenturesとArchetype Ventures。金融機関からの融資も含めて調達総額は10億円となる。
メディアの広告収益最大化をテクノロジーでサポート
FLUXは2018年5月に代表取締役CEOの永井元治氏やCPOの平田慎乃輔氏らが立ち上げたスタートアップだ。
2人に共通していたのはメディアビジネスに携わっていたこと。平田氏はカカクコムの出身で「食べログ」や「価格.com」などメディア事業のマネタイズを担当。永井氏も戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーで働きながら、知人のメディアを手伝っていた。
当時感じていた課題感の1つが大手メディアと中小メディアの間にあるギャップだ。大手メディアには豊富なナレッジと資金があり、海外の先端ツールを積極的に試しやすい。一方で中小規模のメディアは知見やリソースが足りていないことが多い。
それならば規模やリソースを問わず、さまざまなメディアの収益化をサポートできる仕組みが作れないか。それが2人がこの領域で事業を立ち上げるきっかけになった。
FLUXの主力サービスである「AutoStream」はメディアを支援するためのSaaSとして複数の機能を持っているが、もともとはヘッダービディングと呼ばれる“広告入札最適化ツール”の領域から始まっている。

大雑把に説明するとヘッダービディングとは「さまざまな広告事業者を同時に競売にかけることで、メディアにとって最も入札価格の高い広告を配信する仕組み」のこと。自力で複数の媒体と繋ぎこむのは大変だが、FLUXが裏側であらゆる媒体を束ねておくことにより、メディア側は機会損失を減らしながら広告収益を高められる。
アドテクノロジー領域で先行する米国などでは大手メディアを中心にヘッダービディングが普及しているが、日本ではまだ広く浸透するには至っておらず、サービスを提供するプレイヤーの数も少なかった。
そこに創業メンバーのメディアの知見や技術力、日本語でのカスタマーサポートなどを武器としたFLUXが参入し、一気に顧客を獲得していったわけだ。
機能拡張で「サイト運営に必要なツール」を一括提供するサービスへ
現在のAutoStreamでもヘッダービディング機能が軸となっていることに変わりはないが、直近1年だけでも同サービスの幅はかなり広がった。


具体的にはユーザーの行動を可視化する「アナリティクスツール」をはじめ、サイトにそぐわない広告やコンテンツが表示されないようにする「ブランドセーフティーツール」、不正な広告(アドフラウド)に対応するための「広告作業防止ツール」などを次々と実装。
ウェブサイトを運営する際に必要となる機能を“1つのプラットフォーム上で”提供することを目指してきた。
各機能に目を向けると競合するようなサービスも国内外に存在するが、「それをできる限り1つにまとめて、簡単に使えるようにすること」で顧客の負担を軽減。AutoStreamであれば別々のサービスを導入する手間や費用もなく、カスタマーサポートの窓口も1カ所に集約できる。
直近ではプロダクトが充実してきたことに加え、目に見える結果が事例として溜まってきたことで顧客の数や規模感も広がってきた。
広告宣伝費はかけていないが口コミを中心にサービスが広がり、ローンチ2年間で約400媒体に導入。その一方で継続率は99%と高い数字を維持している。
AutoStreamは月額3万円から利用でき、PVやimpression数に応じて細かい料金が変わるモデルで展開。すでに黒字化も達成しており事業基盤も徐々に安定してきてはいるが、今後はプロモーションに力を入れるほか、機能拡張にも取り組むことでさらなる拡大を目指すという。
ノーコード型のウェブサイト作成ツールを新たに開発
そしてAutoStreamと並行してFLUXが水面下で準備を進めてきたのが、新サービスの「siteflow」だ。

同サービスはいわゆる“ノーコード型”のウェブサイトビルダー。メディアや中小企業がコーディングなしでサイトを構築できる仕組みを提供する。
この領域では「Wix」や「ペライチ」など複数の選択肢が存在するが、FLUXとしてはどちらかというと「これまで地場の制作会社に依頼してサイトを作ってもらっていたような企業」に訴求していきたい考え。
サイトを開設する際だけでなく、その後のメンテナンスもノーコードでできるようにすることで、エンジニアがいない企業でもわざわざ外部に依頼せずに済むようにしたいという。
siteflowについてはメディア向け(for Publisher)と中小企業向け(for SMB)を用意する方針で、現在は複数のメディア事業者に先行して提供している状況だ。
今後メディア向けにはAutoStreamとの連携により収益化をサポートする仕組みを整えていく方針。SMB向けにはSEO対策やデータ活用に必要な機能を提供し、単にサイト作成を簡単にするだけでなく、デジタルマーケティングの対策も支援できるツールを目指す。
設立から3年弱、社員数が数十人規模のスタートアップが機能の多いAutoStreamに加えて従来と異なるターゲット向けに新サービスを手がけていくのは、なかなかチャレンジングなことにも思える。
その点について永井氏は「IPO後にも変わらず成長を続けていく上では、主力事業に次ぐ柱となるようなプロダクトを生み出せるケイパビリティを若い段階から作っていくことが重要だと考えている」そう。今回シリーズAで10億円規模の資金調達を実施したのも、そのために攻めの投資を行っていくことが大きな目的だ。
FLUXでは今後1年で約100人ほどメンバーを増やす計画。組織体制を強化しながら、複数のプロダクトを通じて「さらなるマーケティングプロセスの効率化」を進めていきたいという。