
- 負荷が大きい集金業務、テック活用で一連の作業をゼロに
- 4億円調達で事業拡大、業務支援SaaSとのアライアンスなど強化へ
「現金や口座振替で行われる集金業務は業務負担がとても大きい一方で、テクノロジーと知恵を使えばその負担をゼロにできる可能性があるのではと考えました」
そう話すのは集金業務支援サービス「enpay(エンペイ)」を開発するエンペイ代表取締役CEOの森脇潤一氏だ。
現在エンペイでは学童や学習塾、保育園、幼稚園、習い事教室など教育施設に特化して集金支援のサービスを展開。2020年11月の正式リリースから徐々に顧客を増やし、数百施設で導入されている状況だという。
enpayの特徴は集金業務から現金や紙をなくすことで、施設側の業務負荷を大幅に軽減できる点にある。

担当者はサービス上で請求費目を選択し、請求金額を入力るだけで請求情報を作成することが可能。入力した費目・金額は明細書としてそのまま保護者のLINEに届くので、わざわざ別で請求書や明細書を作る必要がない。
エクセルの一括インポートにも対応しているため、大人数への集金でも全員分の入力が一瞬で終わる。
入力が完了した後に「一括請求ボタン」を押すと、請求メッセージが全ての保護者のLINEに届く。保護者はクレジットカード、コンビニ、LINE payの中から好きな決済手段を選んで支払う。LINEを使っていない保護者に対しては紙の請求書を発行でき、その場合も選べる決済方法は変わらない。
それぞれの支払い状況は管理画面でリアルタイムに表示されるため、「支払い済の人、未払いの人」を把握する(消し込み作業)のも簡単だ。支払いデータを基に月次の会計管理レポートが自動で作成されるので、月末締めの会計業務に追われることもなくなる。
負荷が大きい集金業務、テック活用で一連の作業をゼロに
森脇氏によると、特に教育の現場では未だに現金での集金業務が残っていることも多いそう。現金での決済は施設側の業務負荷が大きく、紛失リスクなども伴う。
請求書や明細書を作成し、集金袋を配布して現金を回収するのにも時間がかかるが、大変なのはそこからの確認作業だ。
まずは目視で1件ずつ金額を確認しながら過不足がないかを調べる。金額が足りない場合には再度保護者に連絡し、反対に金額が多い際にはお釣りを用意して渡す。
集金後の集計業務や消し込み作業も手動でやるのは大変だ。これらがようやく終わった後、銀行へ入金して月次の会計管理を済ませる。担当者は一連の業務を毎月のようにこなしていかなければならない。
「何十人分も同じ作業をするのは手間暇がかかりますし、その分だけミスも発生しやすくなる。集金業務は基本的に1人で完結しないのでコミュニケーションコストも高く、大量の現金を扱うため心理的な負担も大きいです。課題や悩みはたくさんあるものの、これまではそこに対応したソリューションがなかったのでどうすることもできませんでした」(森脇氏)
現金ではなく「口座振替」を用いる施設もあるが、口座登録の事務手続きが必要になるほか、請求書の作成や消し込み作業などはどちらにせよ発生する。
また口座振替ならではの問題としてスケジュールが明確に決まっていることから請求の柔軟性に欠ける点や、引き落としができなかった場合に別途現金で集金しなければならない点なども挙げられる。
enpayの場合には、一連の作業がゼロになるのが最大のメリットだ。
管理画面を見る人が1人いれば集金業務をまかなえるので、空いたリソースを他の業務に使える。保護者にとっても決済手段が増えるので利便性が向上するほか、子どもに現金を持たせずにも済む。

4億円調達で事業拡大、業務支援SaaSとのアライアンスなど強化へ
エンペイ創業者の森脇氏は博報堂を経て、前職のリクルートに入社。同社では新規事業開発を担当し、保育園向けサービス「キッズリー」の事業責任者も務めた。
当時から“子ども”や“教育”に関する課題の解決に関心があったというが、エンペイにおいてもアプローチこそ異なれど、目指している方向性は変わらない。
「お金の流れを円滑にすることで、いろいろな面でゆとりが生まれると考えています。業務負荷が軽減されれば、空いた時間を子どもたちに向き合うために使ってもらうこともできる。またenpayを通じて得られたデータやネットワークを使って、いずれは小口の融資やマイクロファイナンスなど、本当にお金を必要としている人たちにお金を届けるようなチャレンジもしていきたいんです」(森脇氏)
エンペイでは4月1日付で、DNX Venturesとちゅうぎんインフィニティファンドを引受先とする第三社割当増資により総額4億円を調達したことを明かしている。今後はこの資金を活用して組織体制を強化し、さらなる事業拡大を目指していく計画だ。
具体的には「給食費の集金」など学校現場への導入を進めていくほか、教育業界に限らず他の領域においても集金業務のデジタル化に取り組む。また業務支援SaaSを展開するプレイヤーとのアライアンスにも力を入れ、集金業務から会計業務までをワンストップでできる環境をさまざまなシーンに広げていきたいという。