ドリーム・トレイン・インターネットは「トーンモバイル」の新スマホと新サービスを発表した
ドリーム・トレイン・インターネットは「トーンモバイル」の新スマホと新サービスを発表した
  • 家族のスマホからアプリ許可、位置情報まで設定
  • 家族に特化したメッセンジャー
  • iPhoneとやり取りできる「AirDrop」風機能
  • 箱を空けた時から名前を知っている新スマホ「TONE e21」
  • 大手値下げに5G浸透で「目的型MVNO」へのシフト強める

ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)は3月31日、MVNOサービス「トーンモバイル(TONE)」の新スマホと新サービスを発表した。あわせて、DTI代表取締役会長兼CEOで同社の親会社フリービットの代表取締役社長の石田宏樹氏より、2024年までの5G移行期間に向けた戦略が示された。

トーンモバイルはNTTドコモ網を借り受けて通信サービスを提供するMVNO。いわゆる「格安SIM」の事業者だ。2013年にサービスを開始した、MVNO業界の中でも古株の一社で、料金だけの勝負に走らず独自の機能性を追求してきた。

トーンモバイルのサービスでは、通信回線とスマホの両方を作り込むことで、独自の機能性を持たせている点に特徴がある。

サービス内容は子どもやシニア層の「見守り」に特化している。料金プランは月額1000円(税抜)で低速、データ容量無制限の1種類のみ。見守り機能は専用のスマホ「TONE」シリーズと組み合わせて実現している。

見守り機能は専用のスマホ「TONE」シリーズと組み合わせて実現している。トーンモバイルとしては、他社との機能面での横並びを避け、安心できる家のような存在を目指しているという。

家族のスマホからアプリ許可、位置情報まで設定

見守り機能は、保護者のスマホから徹底した遠隔管理ができる仕組みとなっている。

見守り機能は、保護者のスマホから徹底した遠隔管理ができる仕組みとなっている。
子どもが使いたいアプリを「リクエスト」する仕組みを搭載

例えば、子どものスマホで使えるアプリを指定して、遠隔で有効・無効を切り替えられる。ウェブサイトをフィルタリングしたり、子どもが学校など特定の場所に来たら通知したりといったことも可能だ。子どもがどのようにスマホを利用しているのかは、親に統計データの形で送付する機能も備えている。

さらに、カメラアプリでは「裸の自画撮り」を防ぐ機能も備えている。オンデバイスAIで裸の画像と認識すると、シャッターが無効になる。

シニア向けには、健康管理に役立つ機能を搭載。毎日の歩数を可視化し、健康維持に役立つアドバイスを表示できる。

スマホに不慣れな人の設定をアシストする機能もある。例えば「置くだけサポート」として、本体の設定に困ったとき、パッケージの上に置くと「機内モードのオフ」などのスマホ初心者にありがちな設定を自動で見直す機能がある。

細かい機能の積み重ねで、見守りに最適化したスマホを作り上げてきたのがTONEシリーズのこだわりだ。

TONEが提供するサポート体制
TONEが提供するサポート体制
パッケージにスマホを置くと設定を自動で見直す機能

家族に特化したメッセンジャー

TONEの新たな機能として、メッセージングアプリ「One Messenger」が発表された。これは、家族や親しい人のためのチャットアプリだ。

TONEユーザー1人に対し、最大10人までスマホユーザーを登録可能。登録する先の管理は保護者が行う仕組みとなっている。自画撮りのような写真はAIが検知して送付を防ぐ機能も備えている。

石田氏は「LINEのようなメッセージングアプリは多機能化が進み、保護者が把握できていない問題まで引き起こしてしまう可能性がある」と指摘。家族や信頼できる人としかやり取りできない専用アプリを用意した意義を説明した。

さらに、One Messengerは、AIが会話の起点となる機能も備えている。たとえば子どもが学校を出たタイミングや、接触確認アプリの仕組みで「密」を検知した場合などに保護者にメッセージが送られる。

AIが子どもの行動に応じてメッセージを自動送信。会話のきっかけにできる
AIが子どもの行動に応じてメッセージを自動送信。会話のきっかけにできる
接触確認アプリの情報を蓄積し、「密」状態の通知も行う
接触確認アプリの情報を蓄積し、「密」状態の通知も行う

保護者の側から利用できる機能として「#いまどこ?」とメッセージを送ると子どもの居場所を表示する。また「#いまなに?」と送ると子どもが使用しているアプリの名前が送信される。これらを会話のきっかけとできるとしている。

「#いまどこ?」と「#いまなに?」で子どもの状態を把握できる
「#いまどこ?」と「#いまなに?」で子どもの状態を把握できる

なお、このOne Messengerはフリービットが開発したメッセージングプラットフォームを活用しており、セキュリティの担保にはブロックチェーン技術が使われている。メッセージの内容は画像を含めて暗号化される。

セキュリティの担保にはブロックチェーン技術が使われている
セキュリティの担保にはブロックチェーン技術が使われている

iPhoneとやり取りできる「AirDrop」風機能

AirDropは、iPhoneを使う中高生にとって欠かせない機能だ。画像や動画を近くの人とデータ消費なしでやり取りできる便利なものだが、iPhone同士でしか利用できないという難点がある。

「エアドロ(AirDrop)仲間はずれ」を補うアプリ
「エアドロ(AirDrop)仲間はずれ」を補うアプリ

トーンモバイルでは、Androidを使っている子どもが「エアドロ(AirDrop)仲間はずれ」になることがあると認識。それを補うためのアプリを開発した。

トーンモバイルの「One Drop」というアプリでは、TONEのスマホとiPhone・Androidとの間でワイヤレス接続し、写真や動画を送受信できる。ただし、送信先のiPhoneやAndroidスマホにあらかじめ専用アプリを導入する必要がある点は注意が必要だ。

箱を空けた時から名前を知っている新スマホ「TONE e21」

新機種の「TONE e21」は旧来と同じ税込2万1780円という価格を維持しながらも、6.53インチの大きな画面を搭載し、プロセッサーの性能強化やメモリやストレージの増強が進められている。ただし、5Gには対応していない。

新機種の「TONE e21」は税込2万1780円
新機種の「TONE e21」は税込2万1780円

新機種のみの機能として「TONE Zen」を搭載。これは初期設定時に作動する仕組みで、契約時のSIMカードの情報をもとに、初期設定時の画面でスマホを使う人(見守られる人)の情報を表示するというものだ。スマホ本体を企画開発するTONEならではの機能としている。

TONE e21の背面
TONE e21の背面
初期設定時の画面でスマホを使う人の情報を表示
初期設定時の画面でスマホを使う人の情報を表示
性能向上によって不適切な画像の検知機能も高速化している
性能向上によって不適切な画像の検知機能も高速化している
接触確認機能のデータを蓄積し、グラフ表示が可能
接触確認機能のデータを蓄積し、グラフ表示が可能

大手値下げに5G浸透で「目的型MVNO」へのシフト強める

モバイル通信市場ではここ1年、大きな地殻変動が起こっている。菅首相の重点政策として「携帯料金値下げ」が掲げられ、それに呼応するように2021年3月には大手3キャリアがオンライン専用プランを提供を開始した。

刺激を受けたMVNO各社も相次いで値下げを発表し、モバイル通信市場の値下げ競争が過熱化している。値下げ競争についていけなかったMVNOは脱落し、MVNO市場の寡占化が進むことになる。

DTI代表取締役会長兼CEOの石田宏樹氏
DTI代表取締役会長兼CEOの石田宏樹氏

だがDTI代表の石田氏は、寡占化がMVNO市場全体の縮小に繋がるとは考えていない。トーンモバイルを運営するDTIの親会社にあたるフリービットも、他のMVNO向けに回線を提供し、サービス構築を支援するMVNE事業を営んでいるが、競争が激化する中でも、MVNOへの参入を希望する事業者は増え続けているという。

「MVNOはこれまで主流だったジェネラル型から、サービスに特化した“目的型”へとニーズが変化していく。(トーンモバイルの母体の)フリービットへ回線提供を求めるMVNO事業者にも、特定型の(目的を指向した)MVNOを志向する事業者が多い。5Gになってもこの傾向は続き、ますます強まるのではないか」(石田氏)

MVNOへの参入を希望する事業者は増え続けている
MVNOへの参入を希望する事業者は増え続けている

5Gは4G LTE世代よりも高速な通信が特徴とされるが、2022年ごろまでに策定されるフル規格の5Gでは、スマホ以外の利用を想定した仕様も盛り込まれる。具体的には、シビアな用途に特化した低遅延性能や、IoT向けの多端末接続といった機能が提供できるようになる。

フリービットは5Gがフル規格に移しエリア展開も本格化する2024年度までを「プレ5G」期間とし、MVNO向けプラットフォームの機能拡張を進めていく。トーンモバイルはそのショーケース的な存在として、MVNEプラットフォームに新機能をいち早く取り入れていくという。

フリービットは5Gがフル規格に移しエリア展開も本格化する2024年度までを「プレ5G」期間としている
フリービットは5Gがフル規格に移しエリア展開も本格化する2024年度までを「プレ5G」期間としている

フリービットが描く将来の通信サービスでは、スマホは必ずしも主役にならない。「スマートフォンは経過地点。将来的には使っていることすら認識させないような“インビジブルコンピューター”へと発展させていきたい」と石田氏は展望を示した。

フリービットは「インターネット屋」としてサービスを進化させていくという
フリービットは「インターネット屋」としてサービスを進化させていくという
他社との機能面での横並びを避け、安心できる家のような存在を目指しているという
子どもが使いたいアプリを「リクエスト」する仕組みを搭載
TONEが提供するサポート体制
パッケージにスマホを置くと設定を自動で見直す機能
AIが子どもの行動に応じてメッセージを自動送信。会話のきっかけにできる
接触確認アプリの情報を蓄積し、「密」状態の通知も行う
「#いまどこ?」と「#いまなに?」で子どもの状態を把握できる
セキュリティの担保にはブロックチェーン技術が使われている
「エアドロ(AirDrop)仲間はずれ」を補うアプリ
新機種の「TONE e21」は税込2万1780円
TONE e21の背面
初期設定時の画面でスマホを使う人の情報を表示
性能向上によって不適切な画像の検知機能も高速化している
接触確認機能のデータを蓄積し、グラフ表示が可能
DTI代表取締役会長兼CEOの石田宏樹氏
MVNOへの参入を希望する事業者は増え続けている
フリービットは5Gがフル規格に移しエリア展開も本格化する2024年度までを「プレ5G」期間としている
フリービットは「インターネット屋」としてサービスを進化させていくという