
- ルーティン業務を自動化、リモートワークの生産性向上を支援
- 自社利用での検証を重ね、正式版ローンチへ
この1年でさまざまな企業で“リモートワーク化”が加速したことに伴って、新しい働き方を支援するサービスが続々と誕生した。
4月7日に正式版のローンチを迎えた「Jicoo(ジクー)」もその1つだ。このサービスを一言で紹介すると「リモートワークに必要な機能が1カ所に集まったコラボレーションスペース」といったところだろう。
Jicoo上にはカレンダー、日程調整、ビデオ通話、議事録を取るためのノート、タスク管理などリモート環境で働く際に不可欠な機能が備わっている。ユーザーはその中から自分たちに必要なものを選んでいけばいい。
用途に応じたフレームワークやテンプレートも用意されている。開発元のジクーで代表取締役CEOを務める鈴⽊真⼀郎氏は、リモートワークに慣れない企業でも「(リモートワークにおける)ベストプラクティスをすぐに適用できる」という。
従来であれば社内会議はZoomやGoogle Meetを使い、Google ドキュメントなどを用いて議事録を作成し、タスク管理にはさらに別のサービスを活用するといったようにツールが分散しがちだった。Jicooではそれらを1つに集約できるというメリットもある。

ルーティン業務を自動化、リモートワークの生産性向上を支援
たとえばユニークなUIを採用しているミーティング(ビデオ通話)機能とノート機能を併用すれば、会議の事前準備から議事録の作成までがJicooで完結。参加者でドキュメントを見ながらビデオ会議を実施し、リアルタイムで共同編集した上で記録を残していくことが可能だ。
Jicooではカーソルにビデオアイコンがついているので、遠隔でのミーティング中も「誰がどの部分について話をしているのか」が簡単にわかる。

カレンダー機能はGoogleカレンダーなどと連携して使える比較的シンプルなタイプのものだが、全員のスケジュールを把握するためには欠かせない。
このカレンダーと併用することで候補日程を自動抽出し、日程調整が“相手にURLを送るだけで完了する”機能も搭載している。
また鈴木氏がポイントにあげるのが「自動化」だ。Jicooのルーティン機能やワークフロー機能を活用すると、朝会や定例ミーティング、1on1などにまつわる一連の業務をスムーズに実施できるようにもなる。

まず、あらかじめSlackなどと連携しておくことで、会議の開始前にはボットから通知が届くため、誰かが毎回リマインドをする必要がない。
定型のミーティング時に必ず確認する項目については、ワークフローを使って事前に設定しておくことが可能だ。
これは対話型で入力できる議題・アジェンダのテンプレートのようなもので、たとえば1on1で聞く項目をフォーム形式で設定したり、朝会で確認するためにその日のタスクを入力してもらう仕組みを整えたりすることができる。一度内容を登録してしまえば、次回以降はいちいち入力せずとも自動で適用される。
参加者がSlackに来た通知を開くと、会議前に回答しておくべき項目が表示されるので、それに沿って必要事項を記入しておく。すると入力結果がレポートとして集計されるため、会議時にその結果を見ながら話をすればスムーズだ。情報格差をなくす効果が期待できるほか、その回答結果を評価の材料として使うこともできるかもしれない。
実際にジクー社内でもJicooを使うことで朝会の参加率が上がり、遅刻なども減ったそう。この点に関してはプロダクトを先行利用している企業からも反応が良いという。
Jicooの利用料金はシンプルなスタートアッププランが1ユーザーあたり月額980円(税込)。ユーザー数や機能を限定した無料プランもあるほか、上位プランとなるプロプラン(月額1320円)も用意する。

自社利用での検証を重ね、正式版ローンチへ
鈴木氏はヤフーなどでの複数のサービス開発経験を経て、自身でソーシャルアプリを運営するスタートアップを創業。その後2014年1月にスペースマーケットを共同創業し、同社の取締役CPOやCTOを務めた。
ジクーを立ち上げた2020年4月7日は東京都などで緊急事態宣言が発令された日で、まさに国内でリモートワークが加速し始めたタイミングだ。
もともと前職のスペースマーケットでは数年前からオフィス勤務とリモートワークを併用していたこともあり、その際に感じていた課題感を解決するようなサービスを作りたいという思いがあったそう。そこにタイミングも重なり、今後リモートワークのニーズがさらに広がることも見据えてJicooの開発を始めたという。
実際にリモート環境でプロダクトをゼロから開発してみて感じたのは、「ゼロイチをフルリモートでやるのはものすごく大変」だということ。
調査結果などを見ていてもリモートワークで生産性の低下を感じている企業が多いことがわかった一方で、リモートワークを実施している人の8割が「できれば今後も同じような働き方を続けたい」と回答している調査なども目にした。
鈴木氏自身は、今後リモートワークとオフィスワークを組み合わせた“ハイブリッドワーク”が主流になっていくと考えているそうで、その2つをうまく併用するために必要なワークスペースを提供するのがジクーの役割だ。
同社でもJicooの開発にあたって途中からハイブリッドワークに移行。社内ツールとして開発中のプロダクトを自分たち自身が使い倒しながら、改良を進めてきた。
昨年11月には、まずは日程調整の自動化機能を切り出す形でベータ版として公開。数百社に試してもらいながらヒアリングとブラッシュアップを重ねた上で、今回大幅に機能を追加した正式版のリリースに至ったという。