アンプラット代表取締役社長兼CEOの三澤拓真氏(写真中央)と投資家。同社ではバイオインフォマティクス解析プラットフォームを開発中だ
アンプラット代表取締役社長兼CEOの三澤拓真氏(写真中央)と投資家陣。同社ではバイオインフォマティクス解析プラットフォームを開発中だ

バイオインフォマティクス領域における「GitHub」のようなサービスを作る──。2021年2月創業のアンプラットではそのようなアイデアを形にするべく、プロダクトの開発を進めている。

バイオインフォマティクスとは生命科学とデータサイエンスを掛け合わせた分野のことで、遺伝子解析などがその代表例。アンプラットが目指すのは、その専門家であるバイオインフォマティシャンを支えるプラットフォームを作ることだ。

ソフトウェア開発者にとってGitHubがソースコードを管理したり、コードを共有して他の開発者とコラボレーションしたりできる重要なインフラとなっているように、アンプラットではバイオインフォマティシャンの解析業務や協働を支援するサービスの実現を見据えている。

現在同社が開発を進めている「ANCAT」は、遺伝子解析を筆頭に研究者たちの解析業務を円滑にするためのサービスだ。

ANCATのダッシュボード
ANCATのダッシュボード

簡単な操作でユーザーが所有している解析手法を登録し、クラウド上で管理・解析できるのが特徴。解析ツール自体はすでに複数のものが存在していたが、多くは実際に動かすにあたって環境構築が必要で、エンジニアリングのスキルが不可欠だった。

その点、ANCATの場合は環境構築の負担がないため、開発のスキルがなくてもエンジニアの手を借りることなく、自分だけで解析ができる。

自身で環境構築ができるユーザーにとってもその手間がかからないことに加え、大規模になりがちなストレージやコンピューティングのランニングコストを抑えられるメリットがあるという。

解析登録画面のイメージ
解析登録画面のイメージ

アンプラット代表取締役社長兼CEOの三澤拓真氏は北里大学にて臨床検査技師免許を取得後、データサイエンスに興味を持ったことをきっかけに横浜市立大学に進学し、分析科学研究室で研究に明け暮れた。

博士課程在籍中に、学者とは別の道へ進むべく大学院を中退することを決断。2016年に遺伝子解析領域で事業を展開するアメリエフに入社し、2018年からは取締役CTOも務めた。

2020年9月に同社のM&Aが成立し、PHCホールディングスの連結子会社となったことを1つのきっかけに、新たなチャレンジをするべくいくつかの選択肢を検討したそう。最終的には前職とは異なるアプローチから、バイオインフォマティクス領域の課題解決を進めるべく、自身でスタートアップを立ち上げることを選んだ。

三澤氏がANCATを開発するにあたって重視したのが「研究者に作業をさせないこと」。研究者にとって負担の大きい業務をテクノロジーを駆使しながら巻き取ることで、少しでも研究に没頭できる環境を整える。それを通じて専門性の希薄化を防ぐためのサポートをするのが狙いだ。

また、この業界の構造として人材の流動性が非常に高く、その上、属人的な部分も多いため、組織内でノウハウが継承されていないことが多いのも大きな課題。ANCATを通じてチームのノウハウを蓄積できるようにすることで、同じような研究を何度もゼロから繰り返すようなことなく、先人の知見が継承されるような仕組みを確立したいという。

中長期的には、冒頭で触れたGitHubのような形で、組織の壁を超えてユーザー同士が自らの研究手法を共有できる機能を取り入れていく計画。言わば「バイオインフォマティクス業界のオープン化」を進めることで業界の発展を目指すとともに、優れたメソッドを考案した研究者にはインセンティブが付与され、正当な評価を得られるようにするのが目標だ。

アンプラットではプロダクト開発の資金として、4月14日にANRIとDEEPCOREを引受先とする第三者割当増資により総額4000万円の資金調達を実施したことも明かしている。当面はANCATのベータ版をユーザーに試してもらいながら検証を進めつつ、プロダクトの改良に取り組んでいくという。