左から、Playco共同創業者でSenior Vice Presidentの大塚剛司氏とプロサッカー選手であり事業家・投資家としても活躍する本田圭佑氏

昨年の9月に設立を発表すると同時に100億円の大型調達を実施して評価額1000億円を突破、いきなりユニコーン企業となったことで話題となったスタートアップのPlayco(プレイコー)。すでに海外ではFacebook上でゲームを2つリリースしている同社だが、ついに日本向けのゲームタイトルを公開した。

そのプラットフォームに選んだのは「LINE」だ。同社は4月22日、日本市場では第1作目となるゲーム『トリップロワイヤル』を提供開始した。LINE上でトリップロワイヤルの公式アカウントを検索して友達追加すればプレイできる。利用は無料だ。

「トリップロワイヤル」のイメージ
「トリップロワイヤル」のイメージ

トリップロワイヤルはLINE上でプレイできるゲームだ。プレーヤーはバーチャル上で日本各地を巡り、47都道府県の名所や名産品といったアイテムを集める。LINE上で繋がっている友達や家族と助け合ったり競い合ったりしながらプレイできるのが特徴だ。ダウンロード不要で気軽にプレイでき、各地の豆知識を学ぶことでちょっとした旅行気分を味わうことができる。

プレイヤーはスロットで得たコインでアイテムを買い、アップグレードしていく。すべてのアイテムが最大までアップグレードすると次のマップへと進むことができる
プレイヤーはルーレットで得たコインでアイテムを買い、アップグレードしていく。すべてのアイテムが最大までアップグレードすると次のマップへと進むことができる

Playcoは同日、プロサッカー選手であり事業家・投資家としても活躍する本田圭佑氏が運営するオンラインスクール「NowDo」との連携も発表した。金額は非公開だが、本田氏は同氏が運営するKSK Angel FundからPlaycoに出資している。

NowDoでは世界中の中高大学生が無料から受講できる動画や音声のコンテンツを提供している。トリップロワイヤルからNowDoのコンテンツにアクセスできる仕組みを構築するなどして連携する予定だ。

DIAMOND SIGNALでは本田氏と、ソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の開発者としても知られるPlayco共同創業者でSenior Vice Presidentの大塚剛司氏に、新作ゲームや今回の連携について話を聞いた。

──トリップロワイヤルはどのようなゲームですか。

大塚氏:Playcoのミッションは世界中の人々をゲームを通じてより近づけることです。HTML5といったウェブのテクノロジーを活かしてユーザーがゲームをダウンロードしなくてもすぐに遊ぶことができ、友達と繋がることを可能にしています。

トリップロワイヤルは日本では第1作目となるゲームです。LINE上でダウンロード不要で遊べるこのゲームは、1億人近いLINEユーザーが、友達と一緒にプレイすることができます。

(バーチャル上で)日本各地を旅行するゲームで、例えば京都を訪れれば金閣寺や八つ橋などさまざまな名所や名産品が登場し、それらを集めてコンプリートを目指します。京都の次は大阪、その後は沖縄、といった具合に友達と一緒に助け合ったり競い合いながら全国を旅するゲームになっています。

──なぜ旅行というコンセプトを選んだのでしょうか。

大塚氏:もうすぐゴールデンウィークが始まりますが、本来であれば友達と旅行したり、家族に会いに行ったり、暖かい季節なので外に出て連休を楽しめるはずでした。ですが新型コロナウイルスの感染拡大でそのようなレジャーは困難となりました。この状況はとても悲しいと思っています。

僕たちのミッションはゲームを通じて人と人とを繋げること。そこからさまざまな会話が生まれたり、新しくて楽しい遊びが広がったりすると考えているからです。人には「人と繋がりたい」、「外に出かけたい」といった想いが根本的にあります。そんな想いをゲームを通じて叶えられないかと思い、トリップロワイヤルを開発しました。

Playco共同創業者でSenior Vice Presidentの大塚剛司氏
Playco共同創業者でSenior Vice Presidentの大塚剛司氏

本田氏:コロナ禍の下でリリースされるトリップロワイヤルは、社会的な意義が大きいと思います。子供だけでなく、大人にとっても誰かとゲームで繋がれるというのは精神的な支えとなります。「たかがゲーム」とは言い切れない力を発揮するのではないでしょうか。

『あつまれ どうぶつの森』が大ヒットした理由も、(ゲームを通じてほかのユーザーの島に訪問することで)誰かと繋がることができるからです。トリップロワイヤルはダウンロードせずにLINE上でプレイできるので気軽に楽しめます。名所や名産品が豊富に紹介されるので、ゲームに登場する地域に住む人たちも喜ぶのではないでしょうか。

──本田さんは普段からゲームをプレイされるのですか。

本田氏:僕はもともとゲーマーです。世代なので。初代『ポケットモンスター』もプレイしていますし、兄の影響でファミリーコンピュータでも遊んでいました。ドラゴンクエストも全シリーズプレイしています(笑)。

僕は広く浅く色々なことをやってきた少年でした。外でサッカーだけするような子供ではなく、家の中でゲームもプレイしていました。

(日本各地の鉄道会社運営をモチーフにしたゲームの)『桃太郎電鉄』シリーズは社会勉強になりました。トリップロワイヤルではそこまでのユーザー体験は提供できないかもしれませんが、似たような側面があると思っています。

桃太郎電鉄では日本各地の物件を通じてその土地の特徴を知ることができます。トリップロワイヤルではもっと気軽に、近い学びを得ることが可能です。

プロサッカー選手であり事業家・投資家としても活躍する本田圭佑氏
プロサッカー選手であり事業家・投資家としても活躍する本田圭佑氏

──本田さんが運営するNowDoのサービス内容とミッションを教えてください。

本田氏:ミッションはシンプルに「人々が夢を追える環境を作る」ということです。世界中の人々が夢を追える世界を作りたいと考えています。

世界にはさまざまな理由で夢を追えない人がいます。一番問題視しているのは教育格差です。機会を均等にしないといけないなと思っています。僕は勝負の先に勝ち負けがあるのは好きだし、そうあるべきだと考えています。ですが勝負もさせてもらえないというのは違います。その機会を均等にするために立ち上げたのがNowDoです。

NowDoでは無料で子供たちがさまざまな分野の大人たちから話を聞き学ぶことができるプラットフォームを展開しています。また、3月には音声SNS「Clubhouse」の教育版のような機能である「Classroom」をリリースしました。

1人(独学で)で頑張れる人は頑張れば良いと思います。そういう人はNowDoを使う必要はありません。何をして良いかわからない、もしくは1人でコツコツ勉強することはできないけれども、学ぶためのお金が無い。こういった人たちに向けて、同世代の子供たちが何をやっているかを見られて、話を聞くことで興味を持ち学んでいける環境を提供しています。友達やメンターと繋がり、繋がりを通じて学びを得られるユーザー体験を目指しています。

今後はユーザーが自らClassroomを立ち上げられるようになります。自分の興味がある分野のClassroomを作り、共感してくれる友達に集まってもらうようなイメージです。

僕はそのClassroomがゼミのようになるのが理想的だと思っています。ゼミの良さは生徒主体で運営されていて教授が関わっているということ。好きな分野を学ぶClassroomを作って共感し合える仲間を集めて深堀りしていく。そこに識者に参加してもらい、方向性を決めてもらったり評価をしてもらえる場所にする。生きていく上で必要な力のベースをそこで育んで欲しいと思っています。

──トリップロワイヤルとNowDoが連携した理由を教えてください。

大塚氏:先ほど京都の話をしましたが、このゲームではさまざまな“発見”を提供しています。金閣寺や町屋が出てきた時には「この面白い建物はなんだろう」と興味を持ってもらえるのではないでしょうか。

このように、各地の名所や名産品をプレーヤーに紹介するような要素がこのゲームには散りばめられています。興味や学びにつながる良いきっかけになるということで、本田さんのNowDoのような「人が興味を持つ分野を学ぶサービス」と相性が良いため、連携することとなりました。

例えば、ゲームの中で新しい名所や名産品を見つけた時に、NowDoでさまざまな識者がその名産品についてセミナーを行う。ゲームだけではできることに限りがあるので、NowDoの専門家からの解説を受けられるようにすることで興味を学びに繋げられれば良いなと思っています。

僕たちの役割は名所・名産品やゲームそのものなどに興味を持ってもらうこと。送客した先のNowDoでは識者による解説など、プレーヤーが興味を持った分野について学べるコンテンツを提供していただければと思います。

本田氏:人と人とを繋げるというビジョンが共通しているので、例えば今回の「旅行」のように、NowDoとシナジーが生まれそうなテーマを持つPlaycoのゲームとは、積極的に連携していきたいと思います。

──ソーシャルゲームが誕生してから10年以上が経ちました。最近では「Fortnite」や「Among Us」といったゲームが人気ですが、トリップロワイヤルの勝算は。

大塚氏:最近のモバイルのゲームはかなり作り込まれた「ゲーマーのためのゲーム」です。友達が200人いたとしても、そのようなゲームは5〜10人ほどの友達としか一緒にプレイできないのではないでしょうか。誰とでも遊べるというよりは、趣味の近い人が一緒に遊ぶためのコアなゲームが増えていると思います。

僕たちが作るゲームはその真逆です。友達が200人いたら、そのうちの150人くらいと一緒にプレイすることができるものです。僕がおばあちゃんや子供とも一緒に遊ぶことができます。

「ゲーム自体が楽しい」というのも当然ですが、「プレイしていると居場所ができる」というのがこのゲームの魅力だと思っています。友達にギフトを送ったり、友達の場所にいたずらを仕掛けるなど、アクションは簡単です。気軽にプレイできて人と繋がれるというところが、今の主要なモバイルゲームとの大きな違いです。

(編集部注:2021年4月22日10時45分)記事掲載後にPlaycoのCEO・マイケル・カーター氏からもコメントが寄せられたので以下に紹介する。

「Playcoのミッションは、ゲームを通じて世界の人々をより近づけることです。LINEとNowDoとのパートナーシップにより、この度リリースする「トリップロワイヤル」はまさにこのミッションを体現するゲームになると信じています。プレイヤーは、コロナ禍で実際に旅行することが困難な中、ゲーム内で友人や家族と一緒に旅行をする体験を得ることが出来ます」(カーター氏)

左から、Playco・Senior Vice Presidentの大塚剛司氏、Presidentのジャスティン・ウォルドロン氏、CEOのマイケル・カーター氏、Senior Vice Presidentのテディ・クロス氏