「Cake.jp」はケーキに特化したECサイトだ
「Cake.jp」はケーキに特化したECサイトだ

オンライン上でさまざまなケーキを購入できるケーキ特化型ECサイト「Cake.jp(ケーキジェーピー)」が事業を拡大している。

デザイン性の高いケーキやオーダーメイドケーキなど、4000種類以上の商品を手軽にネット注文できるのが特徴。コロナ禍で自宅にいながらケーキを購入したい需要が増したこともあり、個人会員数は2020年4月の30万人から1年で70万人へと増加。加盟店舗数も4倍増の1000店舗以上に広がった。

運営元のCake.jpで代表取締役を務める高橋優貴氏によると、ケーキECに注目が集まり始めている背景には消費者側のニーズの多様化が大きく影響している。

たとえば誕生日ケーキと言えば、従来はショートケーキやチョコレートケーキなどある程度定番となる商品が決まっていた。それが近年は「せっかくなので写真ケーキにしたい」「子供のアレルギーを配慮したケーキを選びたい」「糖質を抑えたものが良い」など要望が細かくなってきているのだという。

一方で店舗側の視点では、廃棄コストなどの観点から実店舗で扱う商品はある程度ニーズが見込めるものに限定されやすい。その「需給のアンバランス」を埋める手段として、ネットでケーキを探す体験が徐々に普及し始めているわけだ。

とはいえ、従来ECに取り組んでこなかった洋菓子店にとってはECの立ち上げや運用で苦戦することもある。そういった際にCake.jpへの出店を検討する店舗が多いのだそうだ。

同社では独自開発した資材(梱包用の商品)や受発注システムの提供など、店舗向けのサポートに以前から力を入れてきた。加えて蓄積してきたデータや知見を基に「購買可能性の高い商品情報」や「写真映えする商品の作り方」、「宅配冷凍スイーツの製造方法」などに関するノウハウを伝えることで、洋菓子店のマネタイズも支援する。

Cake.jpの主な収益源は20%の販売手数料(成果報酬)と店舗への有料オプション(無料でも出店・販売は可能)。つまり洋菓子店の売上が増えるほど同社も一緒に成長する構造になっているのもポイントだ。

高橋氏の話では以前は「実店舗の売れ行きがあまりよくないため、売上を増やす目的でECに参入するケースも多かった」が、直近ではコロナの影響もあってオンラインの取り組みを強化したい店舗が急増。「食べログ 百名店」や「ミシュラン」に選出されている人気店の出店も増えてきており、直近では1カ月につき約100店舗のペースで加盟店が増加中だという。

こうした状況を受け、Cake.jpではさらなる事業成長に向けてニッセイ・キャピタル、丸井グループ、博報堂DYベンチャーズ、三菱UFJキャピタルより7.7億円の資金調達を実施した。この資金を活用して商品開発やプロダクトの改良、マーケティングへの投資を進める。

商品に関しては自社工場でのオリジナル製品作りを加速させる。4月からは「Cake.jp Program」としてトップパティシエとコラボしたスイーツD2C事業も始めた。今後は並行して洋菓子ブランドのM&Aにも取り組む方針だ。

中長期的には洋菓子店向けのSaaSとして、原材料の仕入れをサポートする機能やCRMのような仕組みなども提供していく予定。「洋菓子店の中にはケーキの製造や開発は得意でも、集客や原材料の仕入れなどを苦手にしているところは多い」(高橋氏)ため、その負担を削減することで、より多くのエネルギーをケーキ作りに使えるようにすることを目指したいという。