ABCash Technologies代表取締役社長の児玉隆洋 すべての画像提供:ABCash Technologies
ABCash Technologies代表取締役社長の児玉隆洋 すべての画像提供:ABCash Technologies

2019年に金融庁が発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」に端を発した「老後資金2000万円問題」(編集部注:夫婦が夫65歳、妻60歳から年金生活を送る場合、30年後まで生きると想定すると老後資金が約2000万円不足するという試算)。

この問題が話題を集めて以降、資産形成のニーズが高まっている。例えば、国民年金基金連合が2021年5月に発表した業務状況によれば、3月のiDeCo(個人型確定拠出年金)の新規加入者は5万2687人を記録。累計の加入者数は193万9000人を突破した。

また、コロナ禍による“将来不安”も背景に、若年層の資産形成ニーズも増加。こうした社会変化を追い風に利用者を増やしているのが、女性向けの金融教育サービス「ABCash」を展開するABCash Technologiesだ。

ABCashは20、30代の女性向けに金融リテラシーを向上させる「お金のパーソナルトレーニング」を提供するサービス。具体的にはコンサルタントから3カ月間、週1回60分の講義を受け、その後9カ月間は定期的にチャットでアドバイスを受けられる。1年間の利用料は入会金を含めて41万5800円(税込)。オンラインのほか、都内7拠点にトレーニングスタジオを展開。2019年のリリースから約2年で累計受講者は1万人を突破している。

また、2020年8月には法人向けのサービス「Financial Care」を開始。同サービスは社員の福利厚生として金融教育を提供するというもの。年金・資産形成・家計管理・保険・住宅のカテゴリで100本以上の動画学習コンテンツから金融の知識を学ぶことができる。

そんなABCash Technologiesが事業領域を拡大すべく、新たな一手に出た。5月19日、ABCash Technologiesはセオリアが運営するお金の専門家Q&Aサイト「おかねアンサー」を事業買収したことを発表した。この買収に伴い、おかねアンサーのサービス名は「ABCare」に変更。今後はABCareとして、お金に関するあらゆる悩みを専門家にインターネットを通じて相談できるサービスを提供していくという。

今回の買収に関して、ABCash Technologies代表取締役社長の児玉隆洋氏は「おかねアンサーの事業内容が弊社が掲げる"お金の不安に終止符を打つ”というミッションに合致していたことから、事業買収に至りました」とコメント。

また児玉氏によれば、ABCareは法人向けの福利厚生サービスとして提供を検討しているとのことで、具体的には「AIレコメンド動画機能」「お金タイプ診断機能」「パーソナルオンライン面談機能」という3つの機能を提供していく予定だという。

「老後2000万円問題のニュースからもコロナ禍における資産形成のニーズは加速しており、それを企業がケアする流れになってくると思います。『ABCash』というコンシューマー向けのサービスから、今後は企業向けに金融教育の拡充を行っていく予定です」

「弊社の最大の強みは「Financial Science Data(お金の行動科学データ)」です。これまで、累計1万人以上に、お金のパーソナルトレーニングを実施してきています。そのデータをもとにサービスの品質をアップデートしていくほか、多角的に展開していけたらと思っています」(児玉氏)

若い世代をターゲットにした「金融教育」はABCash Technologiesのほかにも、女性向けキャリアスクール運営のSHEもマネースクール「SHEmoney」を立ち上げるなど、盛り上がりを見せている。SHEmoneyとの違いについて、児玉氏はこう語る。

「SHEmoneyとは新しい産業を一緒につくり、日本に金融教育広めていけたら、と思っています。一方で、弊社のオリジナリティは、1万人以上のFinancial Science Dataを持っており、それをもとにサービスの品質を高められることにあります」

「また、30人以上のファイナンシャルコンサルタントを正社員として採用しています。ファイナンシャルコンサルタントを正社員として採用し、育成することでサービスの品質を高める。これは他のサービスが真似できない点だと思っています」(児玉氏)

事業の拡大に向けて、おかねアンサーの買収に踏み切ったABCash Technologies。今後はより一層、中立的な金融教育、テクノロジーを活用したより良いユーザー体験向上、トレーニング受講生に対しての長期的なサポートに注力していく予定だという。