オススメのビジネス書Photo:PIXTA
  • ツクルバ 代表取締役CEO 村上浩輝氏
  • BASE 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏
  • マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎氏 
  • メドレー 代表取締役医師 豊田剛一郎氏
  • freee 代表取締役社長 佐々木大輔氏
  • スペースマーケット 代表取締役 重松大輔氏

成長のため、あるいは癒しとして、年末年始には読書や作品鑑賞を予定している人も多いだろう。そんな時間を共に過ごす作品がまだ決まっていない人のために、2019年に上場を果たしたテック企業の代表たちに、今年触れたオススメのビジネス書・作品を聞いた。(編集・ライター 野口直希)

 本企画では、2019年に上場を果たし、スタートアップからパブリックカンパニーとなった6社の代表たちに、今年読んだビジネス書・今年鑑賞した作品の中から特に良かったものを推薦してもらった。質問内容は以下のとおり。「今年発売の作品」に限定している訳ではないため、必ずしも新作ばかりでないことには留意いただきたい。

 質問内容は、(1)今年読んだビジネス書の中で最も良かった本を1冊教えてください、(2)特にその本を読むべきなのは、どのような人でしょうか、(3)その本の魅力を教えてください、(4)今年鑑賞したあらゆる作品で、最も良かった1作を教えてください、(5)その作品の魅力を教えてください、(6)2019年はどのような1年でしたか。上場という節目を迎えた1年と、来年以降の抱負を記述してください――の6つ。

 たったこれだけの質問でも、それぞれの情報収集に対する姿勢や、琴線に触れる箇所の違いが見えてくるはずだ。なお、回答は上場日順での掲載としている。

ツクルバ 代表取締役CEO 村上浩輝氏

ツクルバ 代表取締役CEOの村上浩輝氏 写真提供:ツクルバツクルバ 代表取締役CEOの村上浩輝氏 画像提供:ツクルバ

■今年のビジネス本

 ウィリアム・ソーンダイク『The Outsiders(邦題:『破天荒な経営者たち ──8人の型破りなCEOが実現した桁外れの成功)』(パンローリング)

■本書を読むべき人

 上場企業のCEOやCFO、上場株の投資家

■本書の魅力

「この50年間で最高のCEOは誰だろうか」という問いに答える形で執筆された1冊。本書によればCEOの仕事は資本配分であり、資本配分は投資なので、すべてのCEOは資本配分者と投資家を兼ねることになる。この観点から、在任中の株価の年間リターン率で(GE元CEOの)ジャック・ウェルチを上回る驚異的な実績を出した8人を「偉大なCEO 」として取り上げ、彼らの痛快とも言える一貫性と執拗なまでの合理性を紹介する。

「偉大なCEO」の定義によって意見は分かれそうだが、事実に基づく考察として非常に面白い。私にとって経営の基本は、ビジョンを示して良い組織をつくり、良いプロダクト・サービスを設計し、事業を通じて社会に貢献することだ。この考えは揺るがないが、本書によって新たな経営の観点を自分ごととして取り入れることができた。

■今年の1作

 冨樫義博『HUNTER×HUNTER』(集英社)

■作品の魅力

 不朽であり未完の名作。ここ数年は著者の体調不良により休載と復活を繰り返している。冨樫先生、いつまでも待っています……。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 2019年は組織・事業のスケールが一段階変わった変化の1年でした。関係各所の皆様のおかげで、上場もさせていただきました。

 とはいえ、まだまだ我々は小さなベンチャー企業、つまりはチャレンジャーです。これからも意思のある先行投資を続け、引き続き事業の拡大を通じて社会に貢献をしていきたいです。

BASE 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏

BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏 写真提供:BASEBASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏 画像提供:BASE

■今年のビジネス本

 今年は本を読んでいませんでした。周りの経営者の方や第一線で活躍されている方から直接教えていただける恵まれた環境にいたので、直接インプットすることができました。

■今年の1作

テラスハウス』(テレビ・配信番組)

■作品の魅力

 あまり考えずに楽しめるコンテンツに癒されました。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 BASEのIPOを通じて、個人やスモールなチームの力を世の中に知っていただくことができたと思えた1年でした。2020年もさらに良いプロダクトを作ることだけにフォーカスします。

マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎氏 

マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎氏 マクアケ 代表取締役社長の中山亮太郎氏 画像提供:マクアケ

■今年のビジネス本

 塩田元規『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』(幻冬舎)

■本書を読むべき人

 いまチャレンジをしているけど、ついつい肩に力が入りすぎている人。

■本書の魅力

 30代で営業利益3桁億円の会社を作ったトップ経営者だからこそ語ることができる言葉が詰まった1冊です。自分や周りの感情に向き合うことの大切さや、どのように向き合うべきかがとても上手に言語化されており、「感情を丁寧に扱うこと」の意味を教えてくれます。この本のおかげで自分の感情と向き合うことができ、肩の力が抜けて中庸な心をキープしやすくなりました。

■今年の1作

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝- 永遠と自動手記人形 -』(アニメ映画)

■作品の魅力

 アニメーションのクオリティとして最高レベルの映像美。そして、それを生み出している京都アニメーションの価値をあらためて世界に気づかせてくれた作品です。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 パブリックカンパニーになり、挑戦者の社会的インフラとしてようやくスタートに立てたと思います。引き続き、国内外や業界のボーダーにとらわれず、アタラシイものや体験が生まれる生態系の強化を愚直かつダイナミックに展開したいです。

メドレー 代表取締役医師 豊田剛一郎氏

メドレー 代表取締役医師の豊田剛一郎氏メドレー 代表取締役医師の豊田剛一郎氏 画像提供:メドレー

■今年のビジネス本

 池谷裕二『メンタルローテーション ”回転脳“をつくる』(扶桑社)

■本書を読むべき人

 問題解決力やメタ認知力を高めたい人

■本書の魅力

「物事を多角的な視点から見る」「人の立場になって想像する」「突き詰めて考える」「多様性や柔軟性を重んじる」「常に成長するための努力をする」といった言葉はさまざまな場面で使われるが、その根源にはメンタルローテーションという概念が存在する。

 本書では、メンタルローテーションは鍛えることができ、また鍛え続ける必要性があると気付かせてくれる。

■今年の1作

 小林有吾『アオアシ』(小学館)

■作品の魅力

 幼い頃からサッカーをやってきたこともあっていろいろなサッカー漫画を読みましたが、戦術についての詳細な描写やクラブチームのユースを舞台とする設定が斬新です。挫折を味わいながらも、潜在能力と努力がシンクロした主人公が加速的に成長していく様にのめり込んでいます。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 上場という大きな出来事を大過なく迎えることができた2019年は、充実しており、刺激的な年だったことは間違いありません。

 しかし、2020年以降は「上場企業である」ことを活かした成長をしなければ、上場した意味がないと考えています。プレッシャーを感じながら、会社としても個人としても成長し続けられるよう努力を継続したい。

freee 代表取締役社長 佐々木大輔氏

freee 代表取締役社長の佐々木大輔氏freee 代表取締役社長の佐々木大輔氏 画像提供:freee

■今年のビジネス本

 ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ I』(講談社)

■本書を読むべき人

 起業を目指すスタートアップ予備軍層

■本書の魅力

 これまでスティーブ・ジョブズに特別な興味はなかったが、プレゼン力向上のためにさまざまな動画を観た中で彼のプレゼンが断然面白かったため、本書を手に取った。

 ジョブズはストーリーの作り込みや特殊な言葉を多用せずに、身近で自然体に話す。トップダウンのリーダーシップスタイルで、freeeとは組織の作り方も違うが、それでも人を惹きつけてやまない。本書では、そんな彼の魅力を知ることができる。

■今年の1作

インサイド・ヘッド」(アニメ映画)

■作品の魅力

「感情と向き合うこと」がテーマの映画。freeeでは「ジブンゴーストバスター」という行動指針がある。向き合いたいジブンゴースト(なりたい自分になることを邪魔している弱いジブン)を言語化し、それに対するフィードバックを貪欲に求めて立ち向かうことなのだが、本作はそれにつながる考え方が盛り込まれている。

 仕事のパフォーマンスを保つためにも、自分の感情や思考パターンに向き合うことはとても重要だ。頭の中で起こっていることを自分でイメージしやすくなり、自分の生活に新たな次元が加わる。子ども向けの映画だと侮らず、ぜひビジネスマンにも観てほしい。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 freeeでは1月に「freeeアプリストア」、6月に「資金繰り改善ナビ」など、クラウド会計サービスに留まらない拡張性のあるサービスを開始し、プラットフォーム元年といえる年になった。大枠の理想を実現するために何が必要なのかを追求することで、細かいことに惑わされず突き進むことができ、ミッション・ビジョンの策定がなによりも大事だと実感できた。

 これまではあくまで序章であり、上場は第一章のスタートだと捉えている。「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションの実現に向け、今後第二章、三章、さらにその先と、事業を進めていく。

スペースマーケット 代表取締役 重松大輔氏

スペースマーケット 代表取締役の重松大輔氏 画像提供:スペースマーケットスペースマーケット 代表取締役の重松大輔氏 画像提供:スペースマーケット

■今年のビジネス本

 稲盛和夫『心を高める、経営を伸ばす―素晴らしい人生をおくるために』(PHP研究所)

■本書を読むべき人

 社会の公器として、高い次元の目的を持った会社創りを目指す経営者や、大きな社会課題を解決するようなビジネスに取り組んでいる事業家

■本書の魅力

 シンプルだが、稲盛哲学のエッセンスが詰まった素晴らしい1冊。テクノロジーが急速に進化し、あらゆる仕事がデジタル化しても、周りを巻き込んでビジネスをドライブするために大切な事は変わらない。私心を離れて目標を高く持ち、圧倒的な熱量で困難な課題に向かい、夢を実現する。私にとって、仕事や生き方におけるバイブルのような本。

 特に好きなメッセージは次のとおり。

・人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

・渦の中心で仕事をする

・土俵の真ん中で相撲をとる

・値決めが経営を左右する

・苦労に値する代償を受ける

・私心を離れて利益を見る

・裏づけを持ってチャレンジする

■今年の1作
 
ラグビーワールドカップ2019日本大会 日本対スコットランド戦」(スポーツ)

■作品の魅力

 TV平均視聴率39.2%、瞬間最高53.7%を記録した、まさに国民的行事と言える大一番。日本は前回大会でスコットランドに敗退してベスト8進出を阻まれており、過去に一度しか勝ったことがない。

 当日は台風の影響でギリギリまで開催が危ぶまれていたが、関係者の努力で何とか決行。前半は日本ペースで20点以上のリードを奪ったが、地力のあるスコットランドの逆襲で1トライ1ゴールの差まで詰め寄られる。

 残り25分という一番苦しい時間帯を守り切ってつかみ取った勝利の価値は、国民に大きな感動と勇気を与えたという意味でも計り知れない。私自身も心底感動した。

■2019年の振り返りと来年以降の抱負

 大のラグビーファンである私が10年来心待ちにしていた、日本開催のラグビーワールドカップ。歴史的な飛躍を果たした日本代表に大きな刺激を受けました。設立6年弱で実現した上場の準備でも「One Team」となり、公私共に充実した1年でした。

 2020年以降は、スペースシェアリングがもっともっと当たり前な世界になるよう、そして世の中に大小さまざまなチャレンジが溢れて世の中がより面白くなるよう、周辺の企業や業界とも連携を強化します。もちろん、私自身も挑戦を続けます。