ヘイ取締役・CPOの塚原文奈氏
ヘイ取締役・CPOの塚原文奈氏

2020年以降、外出機会の減少により爆発的な成長をとげているEC市場。巣ごもり需要に応えるため、新たにECサイトを立ち上げる事業者が相次いだ。スタートアップのヘイが開発・運営するECプラットフォーム「STORES プラットフォーム」も、流通総額は2018年2月から2021年6月のあいだに4.9倍に増加した(実数は非公開)。

休業や営業時間短縮で売り上げが減った事業者の多くは、販路拡大を期待してECサイトを立ち上げる。だが、ヘイ取締役・CPOの塚原文奈氏いわく、新たにEC展開を開始した事業者の多くは「店舗とECサイトの在庫が合わない」といった壁にぶつかるのだという。そこで同社は6月15日、店舗とECサイトの情報を同期させ一元管理できる新サービス「STORES レジ」を提供開始した。

店舗とECサイトの情報連携を支援

ヘイが提供するSTORES プラットフォームでは、ECサイト開設・運営の「STORES」、店舗のキャッシュレス化を支援する「STORES 決済」、オンライン予約システムの「STORES 予約」という3つのサービスを提供してきた。4つ目のサービスとなるSTORES レジは、店舗とネットショップの両方に対応したPOSレジのアプリだ。現在はiPadのみに対応しているが、今後はiPhoneでも利用できるようにする。

STORES レジでは、店舗とECサイトの商品情報を一元管理できる。売り上げや在庫といった情報も、リアルタイムに連携させて管理することが可能だ。ほとんどの基本機能は無料プランで使えるが、品番表示やバーコードスキャンの機能を利用する場合月額2178円(税込)の「スタンダードプラン」を契約する必要がある。

STORES レジの利用例
STORES レジの利用例

「STORESユーザーで商売のマルチチャネル化を進めている数十もの事業者にヒアリングをしたところ、商品、在庫や売り上げの一元管理に苦しんでいるスモールチームが多く存在しました。例えば、商品が店舗で先に売れてしまうとまずいと思い、あえてECサイトの在庫を少なめに設定している事業者。また、店舗で商品が売れる都度、ECサイトの在庫に反映しているというケースもありました。『在庫は実店舗と連動されていますので、売り切れている場合があります』という注意書きをECサイトで見たことがあるという方は多いのではないでしょうか」

「こうした課題は大企業ではなく、中小企業などのスモールチームが抱えています。STORES レジはそんなスモールチームの課題を解決するためのソリューションで、店舗のレジにECサイトを備えるという提案です」(塚原氏)

競合サービスは2社の黒船──ShopifyとSquare

塚原氏はSTORES レジの競合サービスとして、カナダ発のECプラットフォームShopifyが提供する「Shopify POS」や、決済端末を販売し、昨年には日本でもECサイト構築サービス「Square オンラインビジネス」を提供開始したSquareの名を挙げた。

だが、これらのサービスはハイスペックなため、よりシンプルに使えるサービスを求めているスモールチームはSTORES レジを選ぶのではないか、と塚原氏は話す。また、スモールチーム向けのPOSレジにはリクルートの「Airレジ」やスマレジの「スマレジ」などがあるが、ネットショップと完全連動させるには追加料金や作業が発生するため、STORES レジには優位性があると説明する。

前述のとおり、ヘイではSTORES レジを基本的には無料で提供する。そのため、マネタイズのためではなく、利便性を向上させ、STORES プラットフォームという経済圏により多くのユーザーを集めるための新サービスという位置付けだ。

競合Shopifyの日本における流通総額は2019年と2020年を比較して323%増、新規ショップ開設数は228%増(2021年4月調べ)。日本発のECプラットフォーム・BASEも昨年より急成長し、昨年5月に約100万だったショップ数は今年3月末までに140万を超えた。塚原氏はSTORESのショップ数は明かさなかったが、ヘイでは今後もSTORES レジに次ぐ新サービスを開発し、プラットフォームとしての拡大を目指すとした。