TRIDENTではノーコードでソフトウェアテストを自動化できるサービス「Magic Pod」を展開している
TRIDENTではノーコードでソフトウェアテストを自動化できるサービス「Magic Pod」を展開している すべての画像提供 : TRIDENT

ウェブサービスやアプリを世に出す上では、開発したものに不具合がないかをチェックする「ソフトウェアテスト」が欠かせない。この工程はシステム開発全体に要する時間の30%ほどがかけられているという話もあるほど重要なものであるが、手作業で行われている現場も多く効率化できる余地が残されている。

2012年設立のTRIDENTは、この“ソフトウェアテストの自動化”に取り組むスタートアップの1社だ。同社が2017年より展開している「Magic Pod」ではAIなどを活用することで、ソフトウェアテストに要する時間や工数を大幅に削減する。

現在無料プランのユーザーも含めて利用企業数は500社を突破。今後は組織体制を強化した上でさらなる機能拡充や事業拡大を見据えており、そのための資金としてSTRIVEとAngel Bridgeを引受先とした第三者割当増資により3億円の資金調達を実施した。

TRIDENT代表取締役の伊藤望氏によると、ソフトウェアテストが手動で行われている現場では毎回のように同じような作業が発生し、その時間やコストが大きな課題になっているという。

「かつては製品の新規リリースが年に1回など限られていたので、その時だけ頑張ればよかった。ただ近年はアジャイル開発が広がりソフトウェア開発のサイクルもどんどん短くなってきているため、毎月毎週のように手作業でテストをするのは難しい状況です。しょうがないからテスト項目を削って小さなバグが出ても妥協するような場合もあり、課題が大きいです」(伊藤氏)

ソフトウェアテストを自動化するツール自体は以前から存在しているものの「プログラムを作成するスキルが必要」「環境構築が面倒」「サイトを更新するたびにテストプログラムの修正が必要」といった点がボトルネックになり、今でも手作業で対応している企業が少なくないのだいう。

こうした状況を打破すべく、TRIDENTでは2017年にソフトウェアテストの自動化を支援するMagic Podをローンチした。

たとえばアプリのテストをしたい場合、アプリの画面(ファイル)をMagic Podにアップロードすると、搭載されているAIエンジンが自動で画面上の項目を検出する。ユーザーはそれを基にテストしたい項目を選び、テストのスクリプト(手順)を設計していけばいい。

アプリテストのデモイメージ。画面上の項目が自動で抽出されるため、簡単な操作でテストの手順を作ることが可能
アプリテストのデモイメージ。画面上の項目が自動で抽出されるため、簡単な操作でテストの手順を作ることが可能。
テスト実行の様子
テスト実行の様子

いわゆるノーコード型のツールのため、手順を設計するためにコードを書く必要はない。またサイト更新時にはAIが自動でスクリプトを修正してくれるので、その都度自分で設計し直す手間も不要。Magic Podはウェブサイトとモバイルアプリ双方に対応できる。

伊藤氏は前職のワークスアプリケーションズ時代から社内向けのツールを作成して自動テストを推進するなど、長年ソフトウェアテストの自動化に携わってきた人物。独立した当初は既存のソフトウェアを用いた自動テストのコンサルティングやサポートなどに力を入れていたが、顧客からは「自分でプログラムを書くのが大変」など共通の悩みを聞く機会が多かった。

「どこの現場でも同じような作業をしていて、ニーズも同じ。いくら何でも各社が同様のことをしているのは無駄が多すぎると感じていました。一方で(既存のソフトウェアを活用した)セミナーなどもやっていたのですが、いざ会社で実運用するとなると設定が大変だったり、プログラムを書く人がいなかったりと課題が多い。それまでの活動だけでは、すべての人がテストの自動化をすることは難しいと思い、自動化サービスの開発に踏み切りました」(伊藤氏)

TRIDENTのメンバー
TRIDENTのメンバー。中央が代表取締役の伊藤望氏

TRIDENTには伊藤氏を中心にテスト自動化の領域に明るいエンジニアが集まっており、それが強みにもなっている。

同社では今回調達した資金を用いて体制を強化し、Magic Podの機能拡充に力を入れていく計画。グローバルのソフトウェアテスト自動化市場は2025年には11.6兆円まで拡大するとしている調査もあり、日本でもAutifyや以前紹介したSmartQAなど複数のプレーヤーがサービスを展開している状況だ。

TRIDENTとしてはまずは国内で地盤を固めつつ、海外展開を含めて「ゆくゆくはGitHubやSlackのように、世界中の人が使えるサービスを目指していきたい」(伊藤氏)という。