自宅で本格的なフィットネスができるミラー型デバイス「embuddy」 画像提供:newn
自宅で本格的なフィットネスができるミラー型デバイス「embuddy」 すべての画像提供:newn
  • 従来のミラーフィットネスデバイスにはない価値
  • ミラー型フィットネスデバイスの“大本命”はまだない
  • ジムの代理店販売を軸にサービスを普及させる

自宅をフィットネスジムにする──そんなコンセプトのもと、専用のアプリと連動し、本格的なオンラインフィットネスのプログラムを提供する“ミラー(鏡)型のフィットネスデバイス”の市場を巡って、国内スタートアップの競争が激化している。

もともとは米国で「MIRROR」がその人気に火を付けたミラー型のフィットネスデバイスだが、国内ではOne Third Residenceが展開する「Fitness Mirror(フィットネスミラー)」、ミラーフィットが展開する「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」が続けてローンチ。そこにまた新たなスタートアップが“ミラー型のフィットネスデバイス”の市場に参画した。

そのスタートアップの名は、複数のD2Cブランドを立て続けにヒットさせている、中川綾太郎氏率いるnewnだ。7月20日、newnは自宅で本格的なフィットネスができるミラー型フィットネスデバイス「embuddy(エンバディ)」を今秋に開始することを発表した。

従来のミラーフィットネスデバイスにはない価値

embuddyは専用アプリと連動したミラー型フィットネスデバイスを通じて、自宅にいながら筋トレやヨガ、ピラティス、整体、キックボクシングなどのトレーニングが体験できるサービス。事前に収録された基礎的なトレーニングに加え、デバイスに搭載されているカメラを通じて、鏡に映ったインストラクターからリアルな指導も受けられる。

コンテンツを配信するインストラクターには、有名ジム所属のトレーナーや話題のインフルエンサーなど、さまざまな種類の人がおり、「本格的に鍛えたい」という上級者や「フィットネスを楽しみたい」という初心者も楽しめるようになっている。

また、embuddyは従来のミラー型フィットネスデバイスとは異なり、脚のないデザインを採用。脚がないことで、ヨガや瞑想などの座りながら行うトレーニングでも、しっかり自分の姿を見ることができ、正しい姿勢で行えているかどうかが確認できる。

embuddy事業責任者の土居明莉氏によれば、「鏡の透過率や専用アプリを使って操作する点もembuddyの大きな強みになっている」という。

「他社は鏡の反射の割合が少なくデジタルサイネージのようになっており、実際の鏡のようには使いづらいんです。また、アプリによる操作もうたっていますが、現時点でアプリ連動できておらず、それはembuddy独自の価値になっています」(土居氏)

デバイスのサイズは縦138cm、横62cm、奥行き4cm。重さは25.8kg。料金は本体価格17万6000円(初回生産の50台のみ15万9500円で販売)に加えて、月額5480円(価格はいずれも税込)のコンテンツ料がかかる。

ミラー型フィットネスデバイスの“大本命”はまだない

土居氏はもともとnewnの展開するD2Cアパレルブランド・COHINAで働いていた経験を持ち、実際にゼロからモノが生まれていく過程を見て“プロダクトづくり”に興味を持ったという。

「小さい頃からダンスを続けているのですが、物理的な距離や時間の制約もあり、なかなかスタジオやジムに通えないことがありました。従来のスタジオやジムの仕組みをオンラインに置換えれば、好きな時間にトレーニングできるようになると思ったんです」(土居氏)

過去にハードのデバイスを開発した経験は全くなかったが、社内の人たちの力を借り、中国の部品メーカーとやり取りしながら、開発までこぎつけた。

すでに海外ではミラー型フィットネスデバイスを提供するスタートアップは複数出てきているが、土居氏は「出始めてから2〜3年しか経っていないですし、“大本命”とも言えるサービスも出てきていないので、この市場は全然可能性があると思っています」と語る。

ジムの代理店販売を軸にサービスを普及させる

embuddyはまず初回生産の50台を販売し、顧客からのフィードバックをもとにサービスの品質を高めることに注力するという。そのため当初は「販売数にはこだわらない」と土居氏は語る。だが、初回販売以降はどのようにデバイスを普及させていく計画なのか。

先行するFitness Mirrorは99台を無料で配るキャンペーンを開催したり、MIRROR FIT.はand factoryと協業してマンションに入居する人にデバイスを提供したりしている。そうした点も踏まえ、embuddy Biz統括の長塚真央氏はこう語る。

「高額商品なので、まずはトレーニングコンテンツの配信などで提携している10カ所くらいのパーソナルジムを起点にして代理店販売というかたちで普及させていければと思っています。自分たちのジムを持っていないからこそ、あらゆるジムと提携できる。高額商品はまず使ってもらわなければいけないので、まずはさまざまなジムと提携し、デバイスのタッチポイントを増やしていければと思っています」

「また総合型ジムや24時間ジムに置いてあるマシンのようにembuddyも置いてもらうなどtoB向けのアプローチもできると思っています」(長塚氏)

サービス開始後はトレーニングコンテンツのカテゴリーを拡充していくほか、コンテンツを配信するインストラクターが稼げる仕組みをつくるといった取り組みも行う予定だという。

「embuddyはジムのリプレイスを目的にしたサービスではありません。ジムで習ったことを自宅で復習するといったように、ジムと自宅をつなぐようなサービスにしていきたいと思っています。だからこそ、さまざまなジムの力を借りながら、サービスを普及させることで、セルフケアを継続的に行える世界を実現したいです」(土居氏)

(左)embuddy事業責任者の土居明莉氏 (右)embuddyBiz統括の長塚真央氏
(左)embuddy事業責任者の土居明莉氏 (右)embuddyBiz統括の長塚真央氏