Googleの新作スマートフォン「Pixel 6」シリーズ
Googleの新作スマートフォン「Pixel 6」シリーズ すべての画像提供:Google
  • Google独自設計「Tensor SoC」を初搭載
  • カメラはハードウェアも強化

米Googleは8月3日(日本時間)、スマートフォンの新製品「Pixel 6」シリーズを発表した。Google独自のチップセット(SoC)を初めて搭載する製品で、カメラを強化した「Pixel 6 Pro」と、標準モデルの「Pixel 6」の2機種を展開する。

3日時点ではPixel 6シリーズの2機種の外観とカラーバリエーションのほか、大まかな仕様が明らかにされた。発売は2021年秋で、価格や詳細な仕様は今後発表するとしている。

Google独自設計「Tensor SoC」を初搭載

Pixelシリーズでは米クアルコムが設計するSnapdragonブランドのSoCが使われていたが、今回、4年をかけてGoogleが自社開発したという「Tensor SoC」を初めて採用する。8月3日、Google CEOのSundar Pichai CEOはツイートでTensor SoCの外観を公開した。

スマホにおけるSoCとは、スマホの主要な処理を1つのチップ上に収めた半導体部品のことをいう。多くのSoCでは、CPUやGPU、5G/4G LTE通信用のモデムなどが統合されている。

Tensor SoCは一般に「AI」と呼ばれる機械学習を用いたソフトウェア処理に秀でているとされる。機械学習は、スマホ上のさまざまな機能で実装されており、例えばカメラの画質向上や音声アシスタントの音声認識などで用いられている。

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「Google Tensor」

Googleの開発者に取材した米Vergeの報道によると、Pixel 6シリーズはTensor SoCの能力を動画撮影で効果的に活用しているようだ。スマホの写真撮影における「HDR撮影」では、夕焼けのような明暗差が激しいシーンをAI処理を用いて補正しているが、Tensor SoCでは動画の1フレームごとにHDR処理を施し、動画でも自然な夕景を残せるという。

GoogleはAI関連技術の活用をリードする企業となっており、データセンター向けのプロセッサーではすでに自社設計の「TPU(Tensor Processing Unit)」を開発した実績もある。

なお、スマホのSoCでのAI処理能力の向上は、Googleに限った動きではない。ここ10年来、スマホのSoCは半導体製造プロセスの微細化によって飛躍的に性能を向上させてきたが、近年では物理的な製造技術の限界が近づいているため、AI処理の効率化を進める動きが広がっている。

AppleのiPhoneでは2010年発売のiPhone 4から独自設計のSoC「Apple シリコン」を搭載しており、2020年からはパソコンのMacシリーズにもApple シリコンの搭載を進めている。Apple シリコンはNPUと呼ばれる機械学習に特化した処理回路を搭載している。Tensor SoCはさながら「Google シリコン」といったところだろうか。

カメラはハードウェアも強化

GoogleのPixelシリーズは、Androidプラットフォームを開発するGoogleのショーケース的な側面もあわせ持っている。

Googleの強みはAI関連技術をはじめとするソフトウェアにある。これまでのPixelシリーズでは、ハードウェアの性能をあえて抑えて、AI処理で性能を強化する方針をとっていた。

分かりやすい例がカメラで、Pixelシリーズではスマホのカメラでは難しい撮影シーンにAI処理を併用する「計算写真」のアプローチで写真の画質を高めてきた。例えば長時間露光で星空を撮影できる「天体撮影モード」はその成果の代表例として挙げられる。

その一方で、カメラのイメージセンサーには2018年のPixel 3から3世代続けて同じソニー製の「IMX363」を選択するなど、ハードウェアの性能向上は明確に抑制されてきた。

Pixel 6ではTensor SoCの採用とあわせて、カメラのハードウェアも大きく刷新されるようだ。上位版のPixel 6 Proは光学4倍ズームの望遠と標準画角、超広角という構成の3眼カメラを採用。従来のイメージセンサーより大きくなり、150%の光量を取り込めるとしている。Pixel 6は望遠を除いた2眼カメラを搭載する。

デザインはPixelシリーズの遊び心のある色使いを引き継ぎつつ、より質感を重視した外装となるようだ。カメラユニットは、本体から大きく飛び出した「帯」の部分に収められている。

Pixel 6 Proのディスプレイは6.7インチと大きく、120Hz駆動もサポートしている。Pixel 6は6.4インチで90Hz駆動のディスプレイを搭載している。

Tensor SoCの他に、Googleが独自に設計したセキュリティチップ「Titan M2」も搭載。生体認証は画面内指紋センサーを装備している。

OSはAndroid 12を初期搭載する。Android 12は新デザインの「Material You」を採用するが、CPUやGPUの性能を含めて、Tensor SoCの実力は明らかにされていない。付言するとTensor SoCのどのユニットをGoogleが独自に設計し、どの部分を他社からライセンス供給を受けて実装しているのかも現時点では不明だ。その性能を確かめるには、今秋の発売を待つしかないだろう。