(左から)デライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの南場智子氏、YOUTRUST代表取締役の岩崎由夏氏 すべての画像提供:YOUTRUST
(左から)デライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの南場智子氏、YOUTRUST代表取締役の岩崎由夏氏 すべての画像提供:YOUTRUST
  • ハッシュタグを用意し、ユーザーの投稿を促進
  • 目指すポジションは“ビジネスパーソン版mixi”

キャリアに役立つ情報や新しいつながり、自分に合った仕事と出会える──そんな“キャリア”に特化したSNSとして、成長を遂げているのが「YOUTRUST」だ。

iOSアプリをリリースした2021年4月には、実数は非公開ながら昨年同月比で累計ユーザー数は5倍以上に増えたほか、WAU(週間アクティブユーザー数)も15倍以上に増加。転職に前向きな潜在層がSNSとして利用するようになり、アクティブユーザー数が増えたことで転職・副業意欲の高い人と企業のマッチングも増え、売り上げも10倍以上になっている。

右肩上がりで成長を続ける運営元のYOUTRUSTは、その成長スピードをさらに加速させていくようだ。8月30日、YOUTRUSTはデライト・ベンチャーズをリード投資家として、STRIVE、W ventures、ANRIから総額4.5億円の資金調達を実施した。

今回、調達した資金は主にサービス改善やマーケティング活動、人材採用に充てる予定だという。YOUTRUST代表取締役の岩崎由夏氏は「YOUTRUSTを通じて、より良いキャリアの機会や気づきを得られるようにすることで、世界各国と比べて“人材の流動性が低い”と言われる日本のキャリア市場を変革していきたいと思っています」と語る。

ハッシュタグを用意し、ユーザーの投稿を促進

YOUTRUSTのリリースは2018年4月。当初は副業・転職をしたい人と企業がつながるマッチングサービスとしてスタートを切ったが、途中で方針を転換。「タイムライン(時系列で友人の投稿が見られる欄)」を導入し、自分の考えの共有やメッセージの投稿、友人や知人の副業・転職意向などが見える現在のかたちになった。

YOUTRUSTは友人・知人の副業・転職意欲が確認でき、それをもとにスカウトのメッセージが送れたり、仕事のオファーができたりする。また、従来のSNSのようにタイムライン上に自分の考えなどを投稿できるほか、メッセージのやりとりも楽しめる。

例えば、YOUTRUSTには「#脳内メモ」や「#最近の気づき」、「#今週の振り返り」といったユーザーの投稿を促すようなハッシュタグが用意されており、サービスのタイムライン上にはそのハッシュタグが使われた投稿が数多く並んでいる。

「SNSである以上、日常生活で当たり前のように使われるサービスでなければなりません。そのためにハッシュタグを用意してみたところ、タイムラインへの投稿が活性化していき、その流れでアクティブユーザー数なども増えていきました。今後も新しいハッシュタグなどを用意し、投稿のきっかけづくりには力を入れていきます」(岩崎氏)

目指すポジションは“ビジネスパーソン版mixi”

自分の頭の中にある考えや価値観を投稿する“場所”として、代表的なものにTwitterがあるが、なぜYOUTRUSTがSNSとして使われ始めているのか。

その背景にあるのが「心理的安全性」の違いだ。今もTwitterに自分の頭の中にある考えや価値観を投稿する人はいるが、Twitterは不特定多数の人に投稿が見られてしまうため、異なる考えや価値観を持つ人から、攻撃的なリプライ(返信)が来ることもある。その結果、Twitterで何かを投稿することに対して、ためらいを感じてしまう人もいる。

「誰もが(メディアプラットフォームの)noteに書くほど誰かの役に立ったり、ノウハウ化されていたりするわけではないけど、どこかに吐き出したい自分の思考の片鱗などがあると思うんです。昔は吐き出し先としてTwitterが機能していたのですが、今は(誹謗中傷が増えるなど)Twitterの治安が悪くなり、自分の考えを吐き出しにくくなっています」

「その一方で、YOUTRUSTは友人、もしくは友人の友人までの繋がりでタイムラインが形成されているためTwitterと比べて心理的安全性が高い状態にあります。投稿者側からすると、自分の頭の中にある考えを友人などしか見られない場所に投稿するのと、インターネット上で不特定多数に見られる場所に投稿するのとでは感じ方が異なります。それを踏まえ、YOUTRUSTはパーソナルスペースに脳内の思考を書き出し、そこに共感してくれる人を増やしたり、投稿をきっかけに新しい仕事や次のキャリアに繋がっていく場所にできればと思っています」(岩崎氏)

岩崎氏によれば、目指すのは“ビジネスパーソン版mixi”の立ち位置だという。mixiは2004年に誕生したSNSの草分け的な存在で、サービス内にタイムラインの概念がなく、友人・知人が投稿した“日記”を読むためには、その人のページを訪れなければならなかった。

「マイミク(友人)のページを訪れて、更新された日記を読む。この構造は非常に心理的安全性が高かったと思うんです。YOUTRUSTもタイムラインをなくし、友人のアカウントを訪れて投稿内容を見る仕組みにすることも検討しています」(岩崎氏)

また、YOUTRUSTはハッシュタグを用意するだけでなく、新たに編集部を立ち上げ、ビジネスパーソンに向けたオリジナル記事の提供も始めている。こうしたオリジナル記事の提供やユーザーの投稿を通じて、「YOUTRUSTを今まで以上に“ふとした瞬間に開く(アクセスする)場所”にしていければ、と思っています」と岩崎氏は語る。

転職・副業意欲の高い人や転職に前向きな人がアクティブに使うSNSになれば、自然と企業アカウントの数も増え、売り上げも増えていく。実際、昨年6月からの1年間でYOUTRUST上でのマッチングの数は13倍に増えている。

だからこそ、YOUTRUSTは今後、新規ユーザーを獲得を目指して屋外広告(OOH)を筆頭に認知拡大の施策を実行していくほか、既存ユーザーのエンゲージメント向上のためのマーケティング施策を強化していくという。

「今回、資金調達のピッチで(デライト・ベンチャーズ マネージングパートナーの)南場さんに『目標が小さすぎる』と怒られたんです。南場さんは日本経済団体連合会(経団連)の副会長に就任され、向こう4年はスタートアップ・エコシステムの強化と大企業人材の徹底的な流動化に力を注いでいく、と言っていて。そんな南場さんから怒られて、私自身の(経営者としての)視座が変わりました」

「優秀なビジネスパーソンが、より良いキャリアの機会や気づきを得ることができるようにする。YOUTRUSTは日本の雇用システム、キャリア市場を変革する存在として成長し、南場さんが創業されたDeNAを超えるような企業になっていければと思います」(岩崎氏)