「CHOOSEBASE SHIBUYA」エントランスの一隅
「CHOOSEBASE SHIBUYA」エントランスの一隅
  • 「触れるカタログ」「買えるショールーム」を実現したCHOOSEBASE
  • サステナビリティを意識したプロダクトが一堂に会する
  • OMOスタートアップの雄、FABRIC TOKYOとTAILORED CAFEも出店

コロナ禍の影響により、2019年まで3年連続で増加していた小売業の販売額は2020年、前年比で3.2%減となった(経済産業省 商業動態統計)。特にアパレル関連の小売業では実店舗の休業や営業時間短縮、外出自粛などが響き、販売数を大きく減らしたことが要因となったようだ。

一方で、EC市場は伸長。物販系分野の消費者向けEC市場は12兆2000億円を超え、2019年に比べて21.71%の伸びとなり、EC化率は6.76%から8.08%と規模を拡大した(経済産業省 電子商取引に関する市場調査)。

ブランドが消費者へネット経由で直販売するD2Cの台頭も著しい。ただ、SNSをうまく活用して消費者へブランドストーリーを伝えることは、そう簡単なことではない。ファッションアイテムなどでは、どうしても「手に取ってみたい」というニーズもなくならない。

そこで、限りなく接触を減らしつつ、“店頭”という場をブランドと消費者の接点にする試みは続けられている。OMO(オンラインとオフラインの融合)による購買体験のアップデートも、以前よりリアリティをもって求められている。

9月1日にECサイト、2日にリアル店舗をオープンした、そごう・西武の新事業「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」も、テクノロジーを活用したRaaS(Retail as a Service:サービスとしての流通)業態のOMOストアだ。

「触れるカタログ」「買えるショールーム」を実現したCHOOSEBASE

西武渋谷店パーキング館1階にオープンしたリアル店舗は、約700平方メートルの売り場面積に54社が出店。D2Cブランドを中心に、衣料品や雑貨、インテリア用品、化粧品などのアイテム約400点が並ぶ。販売商品のシステム登録と商品配送以外の業務はすべてそごう・西武が代行。実店舗への出店実績が少ないブランドが出店しやすい仕組みとした。

店頭では商品を手に取って確認することができ、衣料品の一部は試着も可能。購入するときは商品に付けられているQRコードをスマートフォンで読み取るか、店頭用のカタログページにアクセスして、商品をウェブ上の「買い物かご」に追加する。

会計の際はレジカウンターで決済用のQRコードを提示。支払いは各種クレジットカードまたは「PayPay」「LINE Pay」によるキャッシュレス決済で行う。購入した商品はピックアップカウンターで受け取ることができる。

購入方法を説明する店内の表示
購入方法を説明する店内の表示
カタログにアクセスするためのQRコードがプリントされたキューブ
入口にカタログにアクセスするためのQRコードがプリントされたキューブが置かれている
決済方法はキャッシュレスのみ
決済方法はキャッシュレスのみ
商品のピックアップカウンター
商品のピックアップカウンター

同店ではさらに、「店頭で見た商品を、帰宅後に改めてECサイトから購入する」あるいは「事前にECサイトで購入した商品を店頭でピックアップする(BOPIS:Buy Online Pick-up In Store)」といった買い物スタイルも実現。これは店頭とECとで、顧客や商品、在庫の情報を統一して管理するシステムがもたらしたものだ。これらの機能を含むストアの開発には、そごう・西武とともに、スタートアップのROUTE06が協業で取り組んだ。

サステナビリティを意識したプロダクトが一堂に会する

CHOOSEBASE SHIBUYAでは一定期間でテーマを変え、それに合わせて商品やブランドのラインアップもアップデートしていく。初回のテーマは「TIMELIMIT」。サステナビリティを題材に、地球環境や文化における“タイムリミット”について問題意識を持つブランドが集結。取り扱い品目にはプラスチックフリー、オーガニック、リユース、ロングライフ・プロダクトなど、何らかのかたちでサステナビリティを具体化したプロダクトが並ぶ。

D2Cブランドを中心に、こだわりの衣料品や雑貨などを集めたエリア「BASE A」
D2Cブランドを中心に、こだわりの衣料品や雑貨などを集めたエリア「BASE A」
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
コスメやフードも含め、さまざまなカテゴリーのアイテムを展示するエリア「BASE B」
コスメやフードも含め、さまざまなカテゴリーのアイテムを展示するエリア「BASE B」
BASE Bの商品。オーガニックソープやヘアケア製品、ネイルやファンデーション、化粧水などのコスメアイテム、吸水ショーツや月経カップなどのサニタリーグッズ、端材から作るガラスの器、サブスクリプション型の花のギフト、ビーガンラーメンなどの食品といった、バラエティー豊かな商材がそろう
BASE Bの商品。オーガニックソープやヘアケア製品、ネイルやファンデーション、化粧水などのコスメアイテム、吸水ショーツや月経カップなどのサニタリーグッズ、端材から作るガラスの器、サブスクリプション型の花のギフト、ビーガンラーメンなどの食品といった、バラエティー豊かな商材がそろう

CHOOSEBASEの取り扱い商品はいずれも、それぞれが出来上がるまでの背景や素材など、ストーリー性が高いものばかりだ。その詳細な説明は、QRコードからアクセスできるウェブカタログに掲載されており、店頭でちょっと気になった商品のルーツやメーカーの思いなどを深く知ることができる。同じ説明はECサイトにも記載されているので、その場では時間がなくても、後から自宅などでじっくり確認してから購入することが可能だ。

OMOスタートアップの雄、FABRIC TOKYOとTAILORED CAFEも出店

出店企業の中でも、ひときわ大きなスペースを展開するのは、オーダーメイドのビジネスウェアなどをオンライン・オフライン融合型で提供するFABRIC TOKYOの3ブランドと、元メルペイ・松本龍祐氏が率いるカンカクの完全キャッシュレスカフェ「TAILORED CAFE」だ。

「TAILORED CAFE」は渋谷ロフトから公園通りへ抜ける間坂に面したスペースに出店
「TAILORED CAFE」は渋谷ロフトから公園通りへ抜ける間坂に面したスペースに出店

TAILORED CAFEは、CHOOSEBASE SHIBUYAのラウンジエリアに出店する。カンカクが運営する他店と同様、事前注文・決済できる専用アプリ「COFFEE App」の利用が可能。全自動ハンドドリップコーヒーマシンによるスペシャルティコーヒーやカフェラテを楽しむことができる。同店はアプリ内の月額定額プラン「メンバーシップ」の対象にもなっており、月額4180円(初月無料)で毎日スペシャルティコーヒーが飲み放題となる。

TAILORED CAFEの内部
TAILORED CAFEの内部

FABRIC TOKYOは、CHOOSEBASE SHIBUYAのショールームエリアに出店。同社がこれまで展開してきたオーダーメイドのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」、クリエイティブ・ワーカー向けのカジュアルライン「STAMP」に加え、CHOOSEBASE SHIBUYAのオープンに合わせて立ち上げた同社初のレディースブランド「INCEIN(インセイン)」を展開する。

「FABRIC TOKYO」「INCEIN」が出店する「BASE C」
「FABRIC TOKYO」「INCEIN」が出店する「BASE C」

INCEINでは、ブランド最初のコレクションとして、ワーキングスタイル向けのシャツタイプや、フォーマルにも活用できるドレッシーなタイプなど、3型のワンピースを展開。今後トップス・ボトムス・アウターなども順次リリース予定だ。CHOOSEBASE SHIBUYAでは採寸が約10分で完了する3Dスキャンボックスを設置。商品サンプルとカスタマイズ可能な生地を確認しながら、オーダーメイドのワンピースを仕立てることができる。

INCEINのワンピースサンプル
INCEINのワンピースサンプル

日本では2020年8月、米国サンフランシスコ発の体験型小売店舗「b8ta(ベータ)」が進出し、先行してRaaSモデルを展開。b8taは今年11月にはCHOOSEBASE SHIBUYAにほど近い、渋谷駅から徒歩約1分の場所にカフェスペースを併設する国内3店舗目をオープンする予定にもなっている。

今後、デジタル技術を活用した小売業の進化、ニューノーマル時代における店舗の価値の最大化は日本でも進むだろうか。コロナ禍を機に、今まで以上にスマートで新しい発見のある購買体験が得られるようになることを期待したい。

「CHOOSEBASE SHIBUYA」公園通り側のエントランス
「CHOOSEBASE SHIBUYA」エントランスの一隅
D2Cブランドを中心に、こだわりの衣料品や雑貨などを集めたエリア「BASE A」
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
BASE Aにて。魚網からリサイクルしたナイロン糸やサトウキビ由来のポリエステルでつくったスポーツウェア、アクセサリーとして使われていた天然石・パールをアップサイクルして現代的にアレンジしたジュエリーなど、各ブランドや商品が持つ“物語”はウェブカタログでも詳しく確認できる
コスメやフードも含め、さまざまなカテゴリーのアイテムを展示するエリア「BASE B」
オーガニックソープやヘアケア製品、ネイルやファンデーション、化粧水などのコスメアイテム、吸水ショーツや月経カップなどのサニタリーグッズ、端材から作るガラスの器、サブスクリプション型の花のギフト、ビーガンラーメンなどの食品といった、バラエティー豊かな商材がそろう
オーガニックソープやヘアケア製品、ネイルやファンデーション、化粧水などのコスメアイテム、吸水ショーツや月経カップなどのサニタリーグッズ、端材から作るガラスの器、サブスクリプション型の花のギフト、ビーガンラーメンなどの食品といった、バラエティー豊かな商材がそろう
購入方法を説明する店内の表示
入口にカタログにアクセスするためのQRコードがプリントされたキューブが置かれている
決済方法はキャッシュレスのみ
商品のピックアップカウンター
「TAILORED CAFE」は渋谷ロフトから公園通りへ抜ける間坂に面したスペースに出店
TAILORED CAFEの内部
「FABRIC TOKYO」「INCEIN」が出店する「BASE C」
INCEINのワンピースサンプル