
- セールステックの発展で変わる顧客接点のあり方
- シェア拡大には攻めの「アウトバウンド営業」
- テレワーク時代の顧客獲得にはコンテンツマーケティングと「インバウンド営業」
- SNSで変わる人脈営業、「ソーシャルセリング」
- ターゲットを絞って成果を最大化する「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で営業ルールは変わった。既存顧客からの売上減少を補うために新規営業の重要性は増しているが、対面による商談が困難となり、アポイントメントや商談獲得の難易度は上がっている。
営業データの蓄積による顧客開拓メソッドを営業支援事業で活用するセレブリックスで執行役員マーケティング本部長を務める今井晶也氏は、「会えない時代に新規顧客を見つけるには営業力より探客力」、つまりニーズのある顧客を探し、ニーズのあるタイミングで営業することが重要と説く。
ターゲット選定を磨き込み、精度の高いターゲットリストをつくった後、セールスパーソンは具体的にどう顧客とつながればよいのか。「営業パーソンの幸福度を左右するのは実績」という今井氏が、新規営業で成果を上げるための最新の顧客とのつながり方、4スタイルを紹介する。
※本稿は今井晶也『セールス・イズ 科学的に「成果をコントロールする」営業術』(扶桑社)を一部抜粋・再編集したものです。
セールステックの発展で変わる顧客接点のあり方
精度が高いターゲットリストができたら、いよいよ新規営業のスタートです。しかし、現在はBtoBマーケティングの進化・セールステックの発展によって、お客様との接点のあり方が変化しています。
一方で変わらない事実もあります。それは、「アポを取らないと商談は始まらない」ことであり、「よいアポを取らないと、いい商談には繋がらない」ことです。
新規営業に強い会社では 「アポを取ったヤツが一番偉い」 という言葉がありますが、これはインサイドセールス従事者への、単純な〝ねぎらい〞ということではなく、むしろ営業の核心に迫る格言だと思います。
では、そもそも新規顧客と接点をもつための方法はどのような種類があるのか。整理しましょう(解説するのは利用者・購買者に直接営業する直販営業に限ります/代理店営業などは除く)。
現在、営業シーンで新規顧客との接点をもつには次の4つが主流になっています。
① アウトバウンド営業
② インバウンド営業
③ ソーシャルセリング
④ ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)
では、それぞれ接点の構築手法を簡単に解説していきます。
シェア拡大には攻めの「アウトバウンド営業」
アウトバウンド営業は、プッシュで新規顧客を開拓する攻めの営業スタイルです。買うつもりのないお客様を相手にするため、難易度が非常に高く、最も営業力が必要とされます。商品によってはインバウンド営業よりも5倍以上の労力やコスト、商談の決着までに時間がかかることもあります。
それでもアウトバウンド営業が必要な理由は、事業の戦略や成長計画に大きく影響するためです。例えば、新規事業や立ち上げ期。まずはモデルとなるシンボリックな受注や事例を集めなければ、マーケティングにお金を投資しても、商談で競合に負けてしまいます。
日本では「実績不足・事例不足」が導入意思決定の不安要素や買わない理由になってしまうため致命傷になるのです。
事業の立ち上げ期だけでなく、事業拡大を図るケースや業界でのシェアを伸ばしにいくときにもアウトバウンド営業が採用されます。マーケティング活動に反応してくれるお客様だけでは、一定サイズの事業拡大しか実現できないからです。
企業が商品を買うきっかけは、事業者のマーケティング活動に反応するばかりではありません。むしろ最も多いのは“日ごろから付き合っている企業に相談・提案を受ける”ということです。
こうした前提に立ったとき、「取引のシェアを拡大しよう」と考えたら、既存取引先から乗り換えてもらう営業活動が必要なのです。
テレワーク時代の顧客獲得にはコンテンツマーケティングと「インバウンド営業」
インバウンド営業は、企業のマーケティング活動を通して 「反響を獲得する」営業スタイルです。広告、PR、ダイレクトマーケティング、コンテンツマーケティングなど様々なコミュニケーションを通して、興味を抱いたお客様と接点を築きます。
例えばデジタルマーケティングでは、2010年より前は、「検索」という買い手のアクションに適応するため、SEOやリスティングといった検索上位に表示させるウェブマーケティング施策が流行しました。
しかし、2010年代になると、ライバルよりも早くお客様と接点を築き、購買動機が発生したタイミングで有利に商談できることを目指し、「コンテンツマーケティング」の取り組みが盛んになりました。さらにテレワークが増えた今、出勤しないお客様のリード情報を獲得するために、企業はコンテンツマーケティングをより強化しています。
一方で、世の中にはあまりに多くのありきたりなジャンク情報が増えたことから、オリジナリティや専門性のないコンテンツは差別化が図れずに苦戦している状況にあります。
SNSで変わる人脈営業、「ソーシャルセリング」
3つ目は、最近注目されている「ソーシャル(人と人の繋がり)を生かした営業スタイル」です。SNSやコミュニティ、人脈ネットワーク、関係性など、人間関係や繋がりをきっかけに商談機会の獲得を目指します。ソーシャルセリングは対象が「繋がり」ということであり、接触の仕方はアウトバウンドでプッシュ営業をすることもあれば、相手からインバウンドで相談されることもあります。
さて、こうしたいわゆる「人脈営業」ですが、これ自体は決して新しいものではありません。ただし、SNSやオンラインサロンといった現代ならではのコミュニティの属し方が、ソーシャルセリングのあり方を変化させています。
SNSの普及により、直接会ったことのない人とも簡単に繋がれますし、コミュニケーションの取り方がよりカジュアルになったのです。
ただし、人脈をお金に換えようとする下品ともとれる一方的なコミュニケーションは、営業成果を上げるどころか評判を悪くします。人脈を生かした営業においては、顧客ニーズや接触理由を明確化する意識を持ちましょう。キャンペーンのばら撒き営業や無作為にアタックするのは絶対にやめましょう。
ターゲットを絞って成果を最大化する「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」
最後に解説するのは、ABMです。ABMとは簡単に言えば、「狙いを定めた企業に絞って関係を築き、その企業から取引額や発注数を最大化させるための営業活動」のことを指します。
アウトバウンドの新規営業は、比較的広いターゲットに根気よくアタックしていくため、ターゲット属性ごとの接触率やアポイント獲得率といった、商談を獲得するためのコストや効率を気にします。一方でABMはターゲットが限定されているため、接触率や行動量よりも、結果として商談の機会が築けているかどうかが重要視されます。

ABMは前提として、新規営業に限った取り組みではありません。すでに取引のある企業に対しても実施します。
また、お客様との接点の築き方や案件の作成法も多岐にわたります。アウトバウンド営業によって電話やキーパーソンに手紙を送るケースもありますし、人脈や繋がりをたぐり寄せてソーシャルセリングによって商談機会を獲得することもあります。
今回は顧客との接点の築き方として、4つに分けて解説しました。しかし、それぞれの接点構築スタイルは、時代とともに変化し、編み出される手法なども異なり、完全にタイプ(型)として綺麗に分類できるものではありません。
大切なことは顧客接点を築く手段・分類として、それぞれのスタイルをミックスしてあなたなりの商談機会を作る方法を考えることです。より「精度」と「鮮度」が高い商談の機会を築く方法はどれか、という視点で行動していってください。
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