Comexposium Japan 代表取締役社長 古市優子氏
Comexposium Japan 代表取締役社長 古市優子氏
  • コロナがきっかけで本格的にビジネスSNSをスタート
  • 複数のSNSアカウント運用のコツはキャラクターを統一させること
  • 履歴書を整えるような感覚でSNSアカウントを整える

スタートアップ創業者やテック企業の経営者は、SNSなどを使った情報発信をビジネスにどのように生かしているのか。

メディアプラットフォームを提供するnoteでマーケティングプロデューサーを務める徳力基彦氏が、スタートアップの代表や先鋭的な企業で活躍するビジネスパーソンにインタビュー。SNSとの出会いや、ビジネスでのSNS活用術などについて聞く。

第3回は、マーケティングカンファレンス「ad:tech tokyo(アドテック東京)」を主催するComexposium Japan(コムエクスポジアム ジャパン)代表取締役社長の古市優子氏が登場。

コロナをきっかけにビジネスで本格的にSNSを使用するようになったという古市氏に、各種SNSの使い分けや、これからSNSを始める人へのアドバイスなどを聞いた。

コロナがきっかけで本格的にビジネスSNSをスタート

──古市さんがSNSを使い始めたのはいつ頃からですか。

私は1988年生まれなので、高校生時代から例えばmixiがあって、プライベートのコミュニケーションツールとして当然のように使っていました。Facebookも学生時代から使っていましたね。当時は、まさかSNSを仕事で使うことになるとは思っていなかったので、公にはふさわしくない投稿もたくさんありました(笑)。

──最近の学生は、内定が出たらSNSのアカウントを1回消して、社会人になってからまた新たに始めるそうですけど、以前はそうじゃなかったですものね。

そうなんです。プライベートのアカウントにだんだん仕事が割り込んでくるみたいな。これはまずいと思い、2年くらい前にアカウントを整理しました。ですから、ビジネスでSNSを本格的に使い始めたのはごく最近なんです。

SNS上でまめにビジネスコミュニケーションをとるようになったのは、コロナがきっかけでした。ad:tech tokyoのイベントがコロナで延期になってしまって。当時はイベント業界がパニックになっていて、各方面からの問い合わせなどがすごく多かったんです。

このとき起こったことを備忘録として全部noteに書いてみよう、という案が社内で出て。会社アカウントにするとちょっと堅い感じになってしまうので、私個人のアカウントをつくりました。これはあくまで古市個人の見解ですということで。初めて書いたnote記事が『新型コロナウイルスの影響でイベントを延期した主催者の備忘録』でした。

noteを始めたことで日経COMEMOさんやNewsPicksさんからも声をかけていただいて。いろいろなつながりもできたし、まさによい相乗効果が生まれました。

複数のSNSアカウント運用のコツはキャラクターを統一させること

──noteを始めたのと同じぐらいのタイミングでTwitterも始められたんですか。

はい。Twitterは10年ぶりくらいに再開しました。Facebookもビジネス用に整理して、今はTwitter、Facebook、LinkedInの3本柱でやっています。

──LinkedInも入ってくるんですね。

そうです。特に外資企業の方はたいていやっているのではないでしょうか。LinkedInは社内の人ともつながりやすいので、「こんなイベントを主催しました」などの報告も、例えば海外の株主にも受け取ってもらいやすくなります。逆に、TwitterやFacebookでの発信は、海外勢には見てもらえないことが多いですね。

──Facebookは基本はプライベートSNSだから、上司にフレンド申請していいのかとか、上司からフレンド申請がきたら断りづらいとかありますけど、LinkedInはもっとカジュアルな感じで会社の人たちとつながれるんですね。

そうですね、基本つながっています。また、社外の人にアポイントをとりたいときにも活用できます。会ったことのない人でもお互いにLinkedInのプロフィールを見られるので、どのような相手か想像がつきやすくスムーズにコミュニケーションがとれるんです。

ad:tech tokyoに登壇する古市氏
ad:tech tokyoに登壇する古市氏

──複数のSNSアカウントを運用する上で、気をつけていることはありますか。

TwitterとFacebookとLinkedInで、投稿内容や文章の書き方などは変えていますが、自分のキャラクターは統一しています。私自身も仕事でお付き合いする方のSNSはチェックしますし、実名でやっている以上はやはり「見られている」ことを前提として発信することが大事だなと。見られたくない場合は、名前を伏せて完全にクローズドでやったほうがいいと思います。

──過去にプライベートで匿名でやっていたアカウントをそのままビジネス用の実名アカウントに変えてしまうのは危険ですよね。過去の投稿が自分のブランディングに役立たないなら、アカウントをつくり直したほうがいい。

そう思います。いまはコロナでリアルに人と会えなくて、オンライン上の接触時間が増えていますよね。オンラインはやっぱり便利だから、コロナが収まってもオンライン中心の感覚って消えないと思うんです。だったらむしろ今のうちにアカウントを整理しておいたほうがいいかもしれないですね。

履歴書を整えるような感覚でSNSアカウントを整える

──Twitterなどに力を入れる前にnoteを始められたというのが少し意外でした。

コロナ下での想いというものをきちんと文章に残したいと思ったんです。以前はFacebookに長文を投稿したりもしていましたが、FacebookはTLがすぐ流れてしまうし、Facebookの中でしかシェアされないので、あまり広くは読んでもらえないんですよね。noteで書いた記事はリンクを送れば読んでもらえるので、お客様にもお知らせしたりしています。SNSのプロフィールには自分の細かい主張などは載せきれないので、自分のスタンスを示す上でもnoteは役立っています。

また、noteの記事を何本か書いていると、エゴサーチをしたときに上位にnote記事がヒットするのもいいですね。自分の意思ではない内容が上位にくるよりも、自分がつくった記事が上がってきたほうがいいなと。

──ビジネスをされている方はエゴサーチも気にしたほうがいいですよね。

そうですね。ビジネスで使う場合はやはり全アカウントを実名にしたほうがいいと思います。検索でヒットするし、見つけてもらいやすくなりますから。

とはいえ、ビジネスのために新しくSNSを始めるのはハードルが高いと思うので、まずは自分がいま持っているアカウントを整えることをおすすめします。最初にそのアカウントを表に出すかどうかの選択をして、表に出さないと決めたらクローズドにしてしまう。表に出すのなら、実名や会社での肩書きもきちんと出して、アイコンもビジネスで使用しているプロフィール写真と同じものに合わせるといいでしょう。履歴書を整えるような感覚で、SNSアカウントも整えていくといいのではと思います。

──やっぱりそういうパーソナルブランディングは大事ですよね。古市さん、ありがとうございました。

古市優子氏

ゲスト:古市 優子(ふるいち ゆうこ)氏(Comexposium Japan 代表取締役社長)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、サイバーエージェントを経て2013年よりdmg::events(現Comexposium)に入社。2019年に同社代表取締役社長に就任し、欧州大手イベントオーガナイザーComexposium Groupにおける日本代表となる。国内では主にad:tech tokyoをはじめとした、マーケティング・広告・コマース・デジタル領域のカンファレンスを企画運営。2020年より米国Advance Women at Workアドバイザーも兼務する。国内外での幅広いイベント主催および参加経験を活かし、理想のイベントとコミュニティのかたちを日々模索中。
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