本格スティルワイン(非発泡性のワイン)をボトルではなく、飲みきりサイズ(250ml)の缶スタイルで気軽に味わえる「ONE WINE」
本格スティルワイン(非発泡性のワイン)をボトルではなく、飲みきりサイズ(250ml)の缶スタイルで気軽に味わえる「ONE WINE」
  • ワイン好きが抱える潜在的な課題にフォーカス
  • すべての答えは顧客の声に
  • 目指したのは、最高の体験

自分の体質や気分、シーンに合わせて自由にお酒を楽しむ──昨今人気の“微アルコール飲料“(アルコール0.5%)をはじめとして、さまざまな種類のお酒が登場している。お酒にも多様性の追求が進む中、飲料メーカー大手のサントリーが新たなワインの楽しみ方を提案している。それが「ONE WINE(ワンワイン)」だ。

ONE WINEは本格スティルワイン(非発泡性のワイン)をボトルではなく、飲みきりサイズ(250ml)の缶スタイルで気軽に味わえるワイン。栓抜きは必要はなく、冷えた缶を冷蔵庫から出したら、“ビールを飲む”ような感覚でワインを飲むことができる。

なぜ、サントリーは新しいカタチのワインを開発することにしたのか。以下は、開発元であるサントリーコミュニケーションズの神藏ほのか氏によるコラムだ。

ワイン好きが抱える潜在的な課題にフォーカス

ONE WINEのプロジェクトを立ち上げたとき、私には商品開発の経験は全くなく、それまではデジタルマーケティング本部で、主にSNSマーケティングの仕事を担当していた。

そんな私がなぜ、ONE WINEについて語っているのか。実は、ONE WINEの開発は、SNSを眺めているときに見かけたユーザーの声がヒントとなり、商品化に至っている。

「ワインを開けたけど飲み切れなかった……」
「知識がないから、選ぶのが難しい」

私自身もワインが好きだ。ただ、自分で開栓することすらできないし、1人でボトルを飲み切ることもできない。ワインに関する知識もなく、ラベルのデザインや友人・知人のオススメで何となくワインを選んでいた自分にとって、その声はとても共感できる内容だった。

次の日、上司や同僚にこのような話をすると「わかる」という声が多く挙がった。これはもしかして顧客のワインに対する潜在的な課題なのではないか。そう思い、すぐさま顧客に対する調査を行ってみると、実は私と同じような思いを抱えている人が多数存在するということがわかった。みんな、本当はワインをもっと気軽に楽しみたいと思っている。

ただ、その気持ちとは裏腹に、ボトルに入っている量を飲み切ることや準備や片付けが大変といったことがワインを飲むハードルとなっている。

また、ラベルに記載された情報を読み解くには知識が必要で、選ぶのが難しいといったこともハードルとなる。結果的に多くの顧客にとってワインは日常の選択肢から無意識に外れ “特別なときに飲むもの”になってしまっているのが現状だった。それにより、ワインの飲用接点がなかなか上がらないという市場全体の課題にもつながっているのではないか、と考えた。

このような課題を抱えている人たちに、新しいワインのカタチである「ワインの価値を残したまま、手軽に愉しめる体験」をつくって、何でもない日常にワインと過ごす幸せを届けたい。こんな想いのもと、新しいワインの飲用スタイルをお届けする本格缶ワイン「ONE WINE」の開発が幕を開けた。

すべての答えは顧客の声に

私にとって初めての商品開発に関わる経験が「ONE WINE」だった。最初はどうやって商品をつくり上げていくべきかわからず、朝から夜まで悩んだ日もあった。

そんな私たちを救ったのが、商品開発調査に協力いただいた100人以上の顧客の声だ。このブランドのミッションは顧客に「何でもない日常に、ワインと過ごす幸せ」を届けること。つまり大事なのは、自分たちがどうつくるのかではなく、顧客が何を求めているかを追求し、その答えを実現していくことだったのだ。

そこに気づいてから、商品の形状や量、デザイン、味、香り、パッケージという商品のことだけでなく、コピーやコミュニケーションの取り方まで、1つひとつ丁寧に調査を行い、本当に求められているものを導き出すことに膨大な時間を費やした。

顧客に対する調査は、ウェブのアンケート結果を見るだけではなく、プロジェクトメンバー自らが顧客と1時間ほど話をすることにもこだわっていた。このような部分にまでこだわったのはウェブのアンケ―トや報告資料だけでは見えない顧客のちょっとした表情や、話すトーンから本当の気持ちを把握するためだ。

顧客に最新のプロトタイプを見ていただき、少し曇った表情を感じ取るたびに、必死で改善策を練ってはまたヒアリングをする。そんなことを繰り返した。今となっては懐かしいと思えるような、不採用となったプロトタイプも数多く存在する。

1年半以上の開発期間を経て、商品化前の最終調査でようやく「こういうのが欲しかったんです」「これ、すごく気分が高まると思います」「おいしいワインがちょっとだけ飲めるなんて……!」という意見をいただくことができた。

ブランドのロゴとなっている“1”は、「1人でも、1杯からでも」ということ表現したものになっている。自分へのちょっとしたご褒美にも、少し時間がとれたときにも、趣味の時間にでも──少しでも多くの人に ワインと過ごす幸せを感じてもらえるように、という願いを込めてつけたものだ。

顧客目線で開発を進めてきたからこそ、ONE WINEは「絶対に顧客のワインに対する課題を解決し、新しいワインのカタチを届けられる商品だ」と強い自信を持つことができたのだと感じる。ONE WINEは、顧客の声によって出来上がったブランドだ。だからこそ、心のどこかにあった「誰にも求められなかったらどうしよう」という不安を払拭することができ、新しいことに挑戦する決意できたのだと思う。

目指したのは、最高の体験

私たちがONE WINEをつくるうえで最も大事にしたのは、「良いモノ」を生み出すことだけでなく、認知したときから、飲み終わった後も続く継続的な顧客の体験だ。

飲んでもらっている間はもちろんのこと、どの場所で知り、どんな経路でサイトにたどり着き、何を考えて種類を選び、届いた瞬間はどんな気持ちになったのか。そして、どのような形で再会することができたら、顧客に何でもない日常に、ワインと過ごす幸せを届けられるのかを考え、それぞれの体験での価値を徹底的に追求した。

例えば、ONE WINEの特徴とも言えるミニマルなデザインも、顧客の体験を考えて採用されたものだ。「ラベルの内容が難しくて、選ぶのに疲れてしまう」といった課題を解決するために、必要な情報以外を排除し、顧客の選択負荷の軽減を目指して設計を行った。

色、品種というワインを選ぶ上で必要な情報は記載しつつも、あえて情報量を最低限に削減。ロゴデザインの配色や模様で味わいや香りを表現し、どんなときでも直感的にストレスなく選べるようにデザインを採用した。

また今回はECでの販売という特性を踏まえて、購買の瞬間を意識したデザインではなく、認知してから缶を廃棄するまでの体験全体を意識して、デザインを作成している。

画面上で見た瞬間にちょっとワクワクした気持ちを起こし、スクロールする指を止めるものでありながら、実際に届いた時には顧客の空間にフィットする。どんな場面を切り取っても自然になじむということを意識したデザインを目指した。

また自分の体験を写真に収めたり、それをSNSでシェアしたり、シェアした際のリアクションを愉しまれる顧客がいることも想定した。写真を撮られた際にも、綺麗に写りながらも顧客が表現したいものを邪魔しないように、という部分まで考えてデザインのブラッシュアップを繰り返した結果、現在の白のマットを基調としたデザインに行き着いた。

そのほか、届いた瞬間の初対面の役割を果たす「パッケージ(箱)」にも力を入れた。届いた瞬間、ただの無地の箱や緩衝材にくるまれた状態で初対面を果たすのと、ブランドの世界観をまとった箱と出会うのでは、体験に大きく差が生まれる。

もちろん味や香りも、本格的なものを追求した。数々のワインを検討し、ワイナリーと何度も打ち合わせを行い、顧客調査でつかんだ理想の味わいを表現することに尽力してきた。

だからこそ、メインコピーでは自信をもって「本格ワインを、1杯から。」をうたおうと決めることができたのだ。ここまでこだわれたのは、世界中のワイナリーと取引を行うサントリーワインインターナショナルも開発に加わっていたから実現できたことだと振り返る。

これこそが私たちの「新しいワインのカタチをお届けする」挑戦なのだ。

一般販売を開始している、ONE WINEのテイストは赤2種(ピノ・ノワール、メルロ)と白2種(ソーヴィ二ヨン・ブラン、シャルドネ)の4種類となっている。価格は各種お試し4本セットが2200円(税込)、12本組み合わせ自由セットが6600円(税込)となっている。

自社ECでは、ファンの方々との直接的接点も持ち、深いニーズを理解して、本当に求められている体験をお届けしたいと思っている。ONE WINEは、いつまでも顧客と一緒に創り続けるブランドでありたい。

これからも新しいワインのスタイルがライフスタイルとして定着することを目指し、日々顧客にとっての最高の体験を追求しながら、チーム一同尽力していきたい。

神藏 ほのか(かみくら ほのか)新卒6年目・デジタルマーケティング本部でデジタルを活用したビジネス改革・コミュニケーション進化ををミッションとして活動。サントリー公式バーチャルYoutuber「燦鳥ノム」も立ち上げ期から担当しているほか、デジタル宣伝業務にも従事しながら、本件のプロジェクトリーダーを務める。入社後、サントリーホールディングス広報部にてデジタルコミュニケーションを担当した後、現部署にてSNS・UX領域をメインに活動。SNSから得た顧客の声をきっかけに本格缶ワイン「ONE WINE」を提案し、現在に至る。