左から、LEAN BODY執行役員・CXOの鞍立寛子氏、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリさんが演じる「松浦ゴリエ」、LEAN BODY代表取締役の中山善貴氏
左から、LEAN BODY執行役員・CXOの鞍立寛子氏、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリさんが演じる「松浦ゴリエ」、LEAN BODY代表取締役の中山善貴氏

コロナ禍におけるロックダウンや外出自粛によって世界的に急拡大した「オンラインフィットネス」。「フィットネス業界のNetflix」とも呼ばれる米国のPelotonは、1年(2020年第3四半期〜2021年第3四半期)で売り上げを5億2400万ドル(約595億円)から12億6200万ドル(約1432億円)規模にまで拡大させた。

このトレンドは日本にも波及した。スタートアップのLEAN BODYが提供するフィットネス動画配信サービス「LEAN BODY」の会員数は、2019年12月末からの1年間で9倍に拡大。LEAN BODYは2018年3月にローンチしたサービスだが、外出自粛、そして2020年4月に配信開始した『令和版ビリーズブートキャンプ』が引き金となり、人気を獲得した。

だが、ワクチン接種が進み、コロナの感染状況も落ち着きを見せ始めたこともあり、オンラインフィットネスの成長は鈍化してきている。Pelotonの売り上げは2021年第3四半期の12億6200万ドル(約1432億円)から、同年第4四半期には9億3700万ドル(約1063億円)まで減退。また、11月には通期売上高見通しを最大で10億ドル(約1140億円)引き下げた。LEAN BODYは売り上げやユーザー数を公開しなかったが、前年と比較すると会員数の伸びは落ち着いたという。

この状況を打開するべく、LEAN BODYでは令和版ビリーズブートキャンプに次ぐ新たなヒットコンテンツを生み出すために奮闘してきた。そして12月23日、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリさんが演じるキャラクター「松浦ゴリエ」を起用した最新作を発表した。

新作ではフィットネス初心者など幅広い層の獲得を目指す

LEAN BODYは有名インストラクターによるフィットネス動画を揃えるサブスクリプションサービスだ。ユーザーはスマートフォンやパソコンで動画コンテンツを視聴しながら、自宅でエクササイズを行える。サービス加入時にエクササイズの「目的」、「強度」や「引き締めたい部位」を設定することで、自分に合ったコンテンツをレコメンドしてくれる。

今回発表した新作のタイトルは『ゴリエのぺこりエクササイズ』。12月27日よりLEAN BODY上で配信開始する。チアダンス、キックボクササイズ、腹筋の筋トレ、二の腕・尻のリズムトレーニング、エアロビ、ヨガ、といった具合に、幅広いジャンルの動画を用意する。

12月27日に配信開始する『ゴリエのペコりエクササイズ』のイメージ
12月27日に配信開始する『ゴリエのペコりエクササイズ』のイメージ

LEAN BODY執行役員・CXOでコンテンツ制作を担当する鞍立寛子氏は「幅広く多くのユーザーを獲得できるように、初心者でもできる、ダンスのような、“楽しい”コンテンツを目指しました」と語る。

「令和版ビリーズブートキャンプの動画は30分程度でしたが、ゴリエのぺこりエクササイズでは10分ほどの動画を7本用意しました。いろんなコンテンツを“つまみ食い”して好みのエクササイズを見つけ、『ゴリエちゃんと一緒に頑張る』といった具合に、これまで運動が身近でなかったな人たちも取り込めれば」(鞍立氏)

ゴリエは2000年〜2006年に放送された、フジテレビのバラエティ番組『ワンナイR&R』に登場したキャラクターだ。今年8月27日に放送されたフジテレビのバラエティ特番『新しいカギ 15年ぶりゴリエ復活コント3時間SP』でテレビに復活。ハウスクリーニングなどの事業者検索・仲介サービス「くらしのマーケット」のテレビCMにも起用され、話題となった。鞍立氏は9月ごろ、たまたまYouTubeでゴリエの動画を視聴し、「次の作品はこれしかない」と感じたという。

「ゴリエさんはビリーさんと同じく、15年ほど前に人気を博していました。LEAN BODYでは20〜40代の女性をターゲットにしています。当時番組を見ていて『懐かしい』と感じる人には刺さるのではないでしょうか」(鞍立氏)

ターゲット層の拡大も視野に

新作の配信開始を間近に控え、LEAN BODY代表取締役の中山善貴氏は「今後は2020年ほどの急成長は見込めないかもしれません。ですが、LEAN BODYでは毎年ユーザー数の2倍成長を掲げ、有料会員の増加を目指していきます」と話す。

有料会員の獲得に必要なのはコンテンツの拡充とユーザー層の拡大だ。前述のとおり、LEAN BODYではこれまで、20〜40代の女性をターゲットとしてきた。今後はビジネスパーソンや男性といった層の獲得も視野に、コンテンツを拡充させていく。そして現在一番のネックとなっているのは「認知度の低さ」(中山氏)。

スタートアップの「SOELU(ソエル)」や「BeatFit」などだけでなく、コロナ禍を経て、大手フィットネスジムもフィットネス動画に続々参戦している。そのため、マーケティングや広報活動にも、今まで以上に注力していくという。

「日本のフィットネス人口は4パーセント、一方で米国は20パーセント。日本のフィットネス人口は海外の先進国に比べて少ないのです。原因としてはジムの少なさや、会員費の高さなどが挙げられます」(中山氏)

LEAN BODYの利用料金は月額プランだと1980円(税込)、年額プランだと月額980円(税込)で、ジムと比較してはるかに低価格だ。器具は使えず、インストラクターとの直接の交流もないが、自宅でできる手軽さをメリットと感じるユーザーも多いだろう。

今後は2020年ほどの急成長は期待できないかもしれないが、コンテンツを拡充し、認知度を高めることができれば、より多くのフィットネス初心者の獲得につながるのではないか。その点で、ゴリエのぺこりエクササイズの配信開始は、LEAN BODYにとって新しい大きな一歩となる可能性を秘めている。