エール取締役 篠田真貴子氏
エール取締役 篠田真貴子氏

スタートアップが組織づくりの過程で「1on1」を取り入れることには、組織の崩壊を防ぎ、価値観やビジョンを共有するという効果も期待できる。書籍『LISTEN──知性豊かで創造力がある人になれる』の監訳者で、社外人材によるオンライン1on1サービスを展開するエール取締役の篠田真貴子氏が、スタートアップでの1on1の始め方や注意するとよい点、仕組みとしての「聴く」「聴かれる」体験づくりについて解説する。

変化のスピードが早くトップの意志浸透が難しいスタートアップ

前回記事『初めての1on1──事業・組織が確立した成熟企業で「聴く力」はこう活用する』では、事業やオペレーション、組織がすでにできあがっている企業で、初めて1on1を取り入れようとする場合の留意点などについて考察しました。

今回は、スタートアップが組織づくりの過程で初めて1on1を取り入れる際に気を付けるべき点や、スタートアップにおける「聴く力」の意味などについてお話しします。

スタートアップは成熟企業と比べると、ある意味、真逆なところがあります。ビジネスモデルがまだ完成しておらず、オペレーションもまだまだ安定していません。現場で1人1人ががんばって、試行錯誤しまくるといった状況でしょう。

スタートアップの多くでは、創業者が本当に強烈な思いを持っていて「何のためにこの事業をやるのか」といった理念を強く発信しているはずです。では、現場の人もみんな創業者の理念をよく理解しているのか、というと、実はそうでもなかったりします。大企業での経験が長かった私にとっては、「トップの発信力が強くて現場との距離も近いのに、なぜ現場の人たちはこんなに戸惑っているんだろう」と不思議になるぐらい、スタートアップの現場には混乱がつきものです。